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第161話 フラベルト隊長

「隊長!!魔人がメルト村の奴等に向かっています!!」


「あぁ・・解っている。俺達より奴等の方が脅威だと思ったのだろう・・・これはこれで好都合だ。」


(だが奴等も規格外だ・・・上手く潰し合ってくれたら良いのだが・・・)


フラベルト達は警戒しつつ様子を見ていたがいつまで経っても戦闘が始まらず首を傾げていた・・・そして最悪の予感が過ぎる・・・


「た、隊長・・・何か様子が変ですよ。何故魔人が膝を付いているんですか?!まさか!奴等は魔人を助けに来たんじゃないですか?!」


「あぁ・・・俺もそう考えていた・・だが奴等のあの様子では違うような気がする。しかし・・・嫌な予感がするのは確かだ・・・」




メルベリアはドラガベルに自分が一度死んだ事、神鍛治士メギラスによってストームブリンガーに魂を宿した事を話して聞かせていた。


「・・・な、何と・・・何とおいたわしや・・・だがメギラスのお陰でこうしてメルベリア様に再び会うことが出来たのですな・・奴に会ったら礼を言わねばな・・・我の中の忠臣達も喜んでいる事でしょう・・・で、時にメルベリア様・・・メルベリア様もこのドルビナ帝国に復讐に来られたのですか?!それならばこのドラガベルが全力でお助け致します!!」


ドラガベルは顔を上げ立ち上がると背中のハルバートを抜き放ち構えた。しかしメルベリアは静かに首を横に振る。


「落ち着くのじゃ。妾はもうそんな事はどうでも良いのじゃ。今日はこのドルビナ帝国が主様達においたをしたのじゃ。それを摂関する為に来たのじゃ。」


メルベリアのまるで悪さをした子供を叱りに来た母親のような口調にドラガベルは構えを解き肩の力を抜いた。


「何と寛容なるお心・・・なれば我もメルベリア様に従います。・・・ですが・・願わくはドルビナ皇帝をメルベリア様の前に引き摺り出し謝罪をさせる事をお許しください。」


「ふむ。それは丁度良いのじゃ。のう主様ぁぁ・・」


メルベリアがガインに振り返ると流れるようにガインの腕にしな垂れる。するとそれを見たドラガベルの魔力が心無しか揺らいだ・・



「お、おい!!に、人間!!メ、メルベリア様から離れよ!!!そ、そんな・・・そんな肌が触れ合うような・・・そ、そんな・・・わ、我でも・・・くっ・・と、とにかく離れよ!!」


褐色の顔を仄かに赤らめたドラガベルが頬を引き攣らせながらハルバートをガインの鼻先に突き付ける!!


「お、おいおい・・・突然何事だ・・・」


ガインが訳が分からず目を丸くしているとガインの目の前にメルベリアが進み出た。


「これっ!ドラガベル!どうしたのじゃ?!妾の主様に何をするつもりじゃ?!」


ドラガベルは納得出来ない顔で慌ててハルバートを収める。


「うぬぬぬ・・・も、申し訳ございません・・・で、ですが・・願わくば此奴がメルベリア様を護れる実力があるのかこのドラガベルが確かめる事をお許しください。」


「ほう。お主は我が主様の力を疑っておるのか?」


メルベリアが魔力を立ち昇らせ近付くと真顔でドラガベルの顔を覗き込む。ドラガベルの視界にメルベリアの顔とふくよかな谷間が間近に迫りより一層顔を赤黒くしメルベリアを直視出来ずに視線を泳がせる・・・


(おふっ・・お顔が近い・・メルベリア様の吐息が・・それにしても怒ったお顔もお美しい・・そ、それより・・む、胸元が・・胸が・・・はっ!い、いかん!!我とした事が!)


ドラガベルは慌てて一歩下がり表情を整える。


「あ・・え・・いえ・・わ、我もメルベリア様をお護りしていた一人として・・・その男の力を・・た、確かめたいのです!!」


「ふむ・・そういうものかのう・・・ならば・・主様ぁぁ・・」


メルベリアがガインに振り向き妖艶な上目遣いでガイン胸に手を添え柔らかい二つの膨らみを押し当てる・・・


「な、なんだ・・?おっふ・・・」


「うぅん・・・聞いての通りじゃ・・・ドラガベルが主様の実力が知りたいらしいのじゃ・・・だから・・少しだけ胸を貸してやって欲しいのじゃ・・・お願いなのじゃぁん・・・」


ガインがメルベリアのおねだりに撃沈するのは数秒も掛からなかった・・・


「む・・し、仕方ないな・・・す、少しだけだぞ・・」


緩む顔を無理矢理引き締めながら目を泳がせる。不意にドラガベルと目が合うと目尻をヒクつかせながら何故か睨まれていた・・・



「あー・・・分かり易いわね・・ドラガベル君・・・なんだかんだ言ってガインと気が合うんじゃない?」


「そ、そうですね・・メルベリアさんが人間も魔族も変わらないって言ってたけど・・本当ですね・・・だけどあの2人はどうしますか?」


サリアが肩をすくめてガインとドラガベルのやり取りを眺める。


「まあ、あの2人は放っておいて良いんじゃない?私達は皇帝に話があるんだからさっさと捕まえて話をつけましょう。」


「そうですね。用事を済ませるのが先決ですね。」


アンリルがガイン達を放置し索敵を展開する。そして反応がある場所に目を向けると丁度顔を出したドルビナ皇帝と目が合った・・・


「あっ!居たわ!あそこよ!!フェニックス!!捕まえて来て!!」


「了解した!!」


フェニックスは待ってましたと言わんばかりに炎の鳥に姿を変えてドルビナ皇帝に一直線に向うのであった。




フラベルト達が静かに様子を伺っているといつの間にか特級帝国騎士団の斥候部隊の男が背後に現れた。


「フラベルト殿!!」


「はうわっ!!!!」


突然背後から声をかけられフラベルトの心臓の鼓動が跳ね上がる!!


「な、何だ?!ラベルか!こんな時に突然声を掛けるな!!」


しかしラベルはフラベルトの物言いをさらりと受け流し話を続ける。


「フラベルト殿!!アグノス団長からの至急の伝言です!!”メルト村の者達に手を出すな!大変な事になる”との事です!これは最重要事項です!!私もメルト村の力の片鱗を体験したのです!!絶対に奴等に敵意を向けてはいけません!!」


ラベルの必死の言葉にフラベルトを始め魔法隊や騎士団の面々、王宮から焼け出された重臣達が目を伏せて項垂れる・・・


「・・えっ・・あれ?・・フラベルト殿!!聞いていますか?!絶対に・・・」


「・・・お・・遅せぇんだよ・・・も・・もう・・・知ってんだよ・・・」


ラベルの説教じみた言葉をフラベルトの震える声が遮る。


「えっ・・・フ、フラベルト殿・・・?」


フラベルトは肩を震わせ爆発寸前の感情をぶつける相手を見つけたとばかりにラベルに詰め寄り両手で胸ぐらを掴む。


「お前らぁぁぁ!!!うぉ遅ぇぇんだよぉ!!!お前等がちんたらしてる時に俺たちゃ絶望的な戦いをしてんだよぉぉぉぉ!!!騎士団は近づけねぇ!!魔法は全く届かねぇぇ!!さらに五重詠唱の極大魔法で王宮は蒸発!!そして魔人ドラガベルの復活!!!俺たちゃどうしたら良いんだよぉぉぉぉぉぉ!!!!」


「あ、あぅぅぅ・・・ちょつ・・待って・・」


ラベルは訳も分からずフラベルトに両手で胸ぐらを掴まれカックンカックン揺れていた・・・


「フ、フラベルト殿!!お、落ち着いて!ど、どういう事ですか!そ、そう言えば何故皆さんは王宮の外にいるのですか?!」


「あ゛?!お前は俺の言った事を聞いていたのか?!その目かっぽじってアレを見ろぉぉぉぉ!!!」


フラベルトはラベルを揺らすのをやめて王宮があった場所を指差した・・・ラベルは咄嗟にフラベルトの指差す方に目をやる。そして見晴らしが良くなったその場所を眺め段々と事の重大さに気付く・・・


「お、王宮が・・・王宮は・・・何処へ・・?」


ラベルはフラベルトの言葉を思い返す・・”王宮は蒸発”・・・


「う、嘘だろ・・・お、王宮が・・丸ごと消えただと?!な、何で・・・ど、どうしてこうなったぁぁぁぁぁぁぁ!!!はっ!!陛下は!?陛下はどこにおられるのだ?!」


今度はラベルがフラベルト詰め寄った。


「分からん・・・探そうにもあの状態では無理だ・・・無事を祈るしか・・・・」


「そ、そんな・・」


すると魔法隊副隊長の声が響く。


「隊長ぉぉ!!!奴等が動きました!!」


「何っ!!」


フラベルトが振り向くと同時に大きな炎の鳥が目の前を羽ばたいて行った・・・


「なっ・・・何だアレは・・・何をするつもりだ・・・」


すると炎の鳥の行き先を見ていたラベルが指を差し声を上げる。


「陛下だ!!あそこだ!!あの炎の鳥は陛下を狙っているぞ!!」


ラベルの声に皆が一斉に指差す方へ振り抜くと地面からひょっこりと顔を出したドルビナ皇帝陛下を見つけた。


「へ、陛下!!陛下は御無事だ!!」

「フラベルト!早く何とかしろ!!」


「駄目です・・・今攻撃すれば陛下を巻き込んでしまいます。ここは様子を見るしかありません・・・」


「何だと?!このまま黙って見ていろと言うのか?!」


「はい。殺すなら王宮ごと皆んな消えていた筈です。奴等はまず自分達の力を見せたのです。その上で交渉すると思われます。ですのでこれ以上手を出せば・・・どうなるか分かりません・・・」


「くっ・・なんて無茶苦茶な・・・それにこれだけ雁首揃えて何も出来ぬとは・・・一体メルト村とは何なのだ!!」


重臣達が焦りながら声を上げるがフラベルトは首を横に振る。フラベルトはメルト村の人間は無茶苦茶だが無下に人の命を奪う事は無いと信じていた。そして目の前を炎の鳥に襟首を咥えられジタバタしながら運ばれるドルビナ皇帝陛下を皆が無事を祈りながら見送るのであった・・・

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