表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
160/200

第160話 再会

「や、やはり・・・魔人ドラガベルが復活したか・・・な、何という事だ・・・」


ドルビナ皇帝陛下がそっと扉を閉めて深刻な顔で項垂れる。


「へ、陛下・・・い、今何と言われましたか?・・・私には魔人ドラガベルが復活したと聞こえましたが・・・」


「・・・ふん・・言葉の通りだ・・かつてドルビナ帝国を壊滅の危機まで追い込んだ魔人ドラガベルが復活したのだ・・・このドルビナ帝国に封印され約600年・・・ドルビナ帝国に積年の恨みを孕んだ魔人ドラガベルが解き放たれたのだ・・・もう誰にも止められん・・・もう・・・終わりだ・・・」


ドルビナ皇帝が絶望を胸に空を見上げると闇のオーラを立ち昇らせ虚空に雄々しく翼を広げて佇む魔人ドラガベルの姿が映るのであった・・・




〈戒めの間〉の天井が赤黒く染まり膨らんでいく。今にも弾けそうな膨らみは明るいオレンジ色に変わり真っ二つに裂け部屋の中央にあるドラガベルを避けて部屋の隅に流れて行く。裂けた天井からは陽の光が差し込みドラガベルを青空の下に曝け出した。部屋に流れ込んだ高熱の土砂が魔高炉を飲み込み破壊すると部屋を満たしていた聖属性の魔力が天井の裂け目から霧散した。


(・・・遂にこの日が来た・・・)

(・・・長かったぞ・・・)

(・・・今こそメルベリア様の仇を・・・)

(・・・ドルビナ帝国に鉄槌を・・・)

(・・・我らの魔力をドラガベル様へ!)


ドラガベルを囲んでいる五つの意志が籠った大きな魔石が青紫の眩い輝きを放ちドラガベルの胸の前に集まり十文字を形どった。


(今こそ我らの使命を果たす!!)


五つの魔石は青紫の光を放ちながら吸い込まれるようにドラガベルの褐色の胸へと消えて行く・・・


・・ドクンッ・・・ドクンッ・・・


ドラガベルの胸が鼓動で跳ね上がる!五人の魔力が迸り身体中に生気が甦るとゆっくりと拳が握られる。そしてドラガベルの瞳に光が灯った・・・


「ぐうおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!!」


ドラガベルが立ち上がり湧き上がる魔力を全身から立ち昇らせ空を仰ぎ雄叫びを上げた。


「・・・お前達の覚悟と決意・・・確かに受け取った・・見ていろ・・・今こそメルベリア様の無念を晴らす!!」


ドラガベルは大きな翼を広げ天井の裂け目から覗く青空に目掛けて飛び立った。そして約

600年ぶりの青空の下で眩い太陽に手を翳した。


「むう・・・どれ程時が経ったのだ・・・しかし時が経っても我が不甲斐ないばかりに失ったものは大きいのは変わりない・・・」


ドラガベルが空を仰ぎ想いを馳せるとゆっくりと目を開け下界を見下ろした・・・するとドラガベルの眉間に深々と皺が寄る。


「・・・な、何だ・・この焼け跡は・・ドラゴンブレスでもこうはならんぞ・・・むっ?!城は・・・?!帝国の城はどこにある?!」


ドラガベルは辺りを見回し城を探すが見当たらず再び目線を巨大な焼け跡に戻した。


「ま、まさか・・・ここに城があったのか・・・そうか・・だから我らが復活出来たのか・・・それにしてもこれは魔法か・・・一体何者が・・・」


ドラガベルが下界を見渡すように目線を走らせると感じた事のない魔力と闘気を纏った五人の集団が目に止まった・・・


「・・・むう・・あ奴らか・・・あの魔力と闘気・・・まさか人間ごときが・・・んっ?な、何故だ・・何故あの男から・・・ま、まさかっ?!」


ドラガベルは目を見開き慌てて五人の集団へと急降下するのであった・・・




「ムーラ侯爵様!!魔人ドラガベルとは何者なのですか?!」


ドルビナ帝国魔法隊のフラベルトが必死の形相で詰め寄るとムーラ侯爵は圧倒され仰反る・・・


「・・・う、うむ。あれはドルビナ帝国でも限られた者しか知らない”戒めの間”の住人だ・・600年前にドルビナ帝国を壊滅の危機に追い込んだ魔人・・・ドラガベル・・も、もう人間ではどうしようもない・・・」


ムーラ侯爵が力無く立ち尽くす。しかしフラベルト隊長は諦める事なく迎撃体制を整える!


「そんなものやってみなければ分からん!!このドルビナ帝国を護るのが我らの使命!!お前ら!!隊列を組め!標的は魔人ドラガベル!!指示があるまで準備をしておけ!!」


フラベルト隊長は部下に指示を飛ばし身構える。しかし自分達が勝てる姿は見えていなかった。何故なら上空に浮かぶ魔人ドラガベルの魔力と闘気が離れていても肌にチリチリと感じていたのだ。只々隊長としての意地だけがフラベルトを動かしていたのだった・・・


(くっ・・・なんて日だ・・・)




「ねぇ・・アレって魔族よねぇ・・・それにかなり強いわよ・・・本気のガインといい勝負するんじゃない?」


アンリルが空を仰ぎドラガベルを鑑定する。


ドラガベル

Lv 1780

【称号】魔将軍


攻撃力 47878542

防御力 25754297

素早さ 18637964

魔力  3575424

魔法力 7853796


【加護】〈魔闘神の加護〉


【スキル】〈魔剣技・極〉

     〈斬撃・大〉

     〈攻撃力・大〉

     〈魔石化〉


「まさか帝国が魔族と繋がりがあったって事ですか?!」


「あぁ。それもあり得るかもな・・・という事はアレが帝国の奥の手って事か・・・って・・・こっちに来るぞ!!」



ガインがサリアの疑問の答えを探しながら見上げていると突然ドラガベルが大きな羽根を広げガイン達目掛けて急降下して来る!咄嗟にガインは指輪を全て外し構えた。


「くっ!速い!!」


ずずぅぅん・・・



ドラガベルは地面に近づくとその巨体からは考えられない程の軽やかさで反転しガインの目の前に着地した。


「ガイン!!気を付けて!!」


アンリルが指輪を外し空に手をかざして魔法を発動する!


「アンリルさん!ちょっと待ってください!!あの魔族さんから悪意が感じられません!!」


「えっ?!」


アンリルはサリアの声に驚き打ち出そうとしていた巨大な氷の槍を空に浮かせたまま魔人ドラガベルを見据えた。するとサリアの言う通りドラガベルの表情からは敵意は無くただ自分に向けられた巨大な氷の槍を目を丸くして見上げていた・・・


「・・・む、無詠唱か・・・そ、それにこの発動速度・・・その上込められたこの膨大な魔力・・お前だな・・・城を吹き飛ばし我らを解放したのは・・・」


「え、えぇ・・・確かに王宮を消したのは私達よ・・・ふぅん・・とりあえずサリアの言う通りこれは要らないみたいね・・よっと!」


アンリルはドラガベルに敵意が無いのを感じると魔法を解除しガインの隣に歩み出る。


「ふう。今の話からするとあんたはドルビナ帝国の王宮に囚われていたって事で良いのかしら?」


「・・・そうだ・・どれ程時が経ったかは知らぬが・・・メルベリア様の仇を討つべく乗り込んだのだが不甲斐なく我と我の忠臣等と共に城の地下に囚われたのだ・・・」


(あれ?メルベリアって・・・)

(えぇ・・私もそう聞こえたわ・・・)


サリアとアンリルが顔を見合わせるとドラガベルは視線をガインに移す。


(こ、こいつ・・メルベリアの知り合いか?)


「・・・人間よ。教えるのだ・・何故お前からメルベリア様の気配を感じるのだ?!お前は一体・・・むっ?!そ、その剣は・・・まさか・・魔王様の愛剣ストームブリンガーか?!何故だ!!何故人間がその剣を!!」


ドラガベルがオーラを立ち昇らせてガインに詰め寄ると頭の中に美しく懐かしい声が響いた。


(久しいのう・・・ドラガベルよ・・・まさかお主と会えるとはのう・・・)


「はっ!!こ、この声は!!メルベリア様!!い、一体何処に?!」


ドラガベルが勢いよく辺りを見渡すがメルベリアの姿は見当たらなかった。


(妾はお主の目の前じゃ・・・)


「何ですと?!」


ドラガベルがガインを食い入るように睨むとガインの手からストームブリンガーが離れドラガベルの前で蒼紫のオーラを立ち昇らせて人形に変わっていく。


「な、な、何と・・・ま、まさか・・・あぁ・・・メルベリア様・・・」


目の前に現れたメルベリアにドラガベルは肩を震わせ両膝を付いた・・・


「よ、よくぞご無事で・・・こ、こうして会えるとは思いもしなかったですぞ・・・うぅ・・・」


「ふむ。お主にも苦労をかけたのう・・・」


「うぅ・・くぅぅ・・・」


メルベリアはまるで母親が子供に語りかけるように優しくドラガベルの肩に手を置いた。ドラガベルの頬には熱いものが流れ思わず俯くのであった・・・

皆様の評価感想をお待ちしております。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ