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第131話 愚策

何?!アンリル・・・


ガインが咄嗟に振り向くと既にアンリルは男達の前に立ちはだかっていた・・・


男達は身長も高く顔立ちもよく身体も鍛えているのが服の上からでも分かった。


「あんたら今私は機嫌が悪いの・・・これ以上私達に関わったら死なない程度に殺すわよ?!」


(なっ?!い、いつの間に・・・)


アンリルが魔力を滲ませ男達を睨み付ける。

しかし男達は額に汗を滲ませながらも強気に出てしまう・・・


「ふ、ふん!お前ごときの機嫌など知るか!ここは高貴な貴族が集う場所だ!お前らのような汚ない下民が来て良い場所じゃないんだよ!!」


「まあ、しかしだ・・兄上。あの小娘なら奴隷としては使えそうじゃ無いですか?くくっ・・・」


もう1人の男がサリアを品定めをするようにニヤけた顔で見ていた。


ピキッ・・


その瞬間サリアの目の前からガインの姿が消えた・・・気付けばこめかみを震わせながら男の顔面を鷲掴みにして持ち上げているガインの姿があった・・・


「あがっ!あがっ!は、離せ・・この・・」


ビキビキッ・・・


ガインは更に力を込める!


「あがぁぁぁ!!!」


「なっ?!ランバー!!き、貴様離せぇぇ・・・ぐがっ!!は、離せ!!くそっ!!」


ガインは飛び掛かって来た男の顔面も左手で鷲掴みにするとジタバタする男を同じように持ち上げた。


「おい・・クソガキ共・・俺の仲間を奴隷だと?!このメルト村村長・・豪剣ガインに喧嘩を売ってんのか?おおぅ?!」


ビキビキビキッ!!!


「ぐげぇぇぇぇ!!!!」

「あがぁぁぁぁ!!!!」


力を込めたガインの極太の腕に血管が浮き出る!


ペチンッ!!


突然アンリルの平手打ちガインの後頭部に炸裂する。


「おうっ!!な、何するんだ?!」


「はあ。あんたが先にキレてどうするのよ?!それにそれ以上やったら馬鹿共の頭破裂するわよ?!食事時にそんなもの見せないでよね!!」


「あ、あぁ・・そ、そうだな・・つい・・ふんっ!」


ガインは我に返り掴んでいた男達を放り投げた。


どさっ・・どさっ!!


「あぐっ!!ぐはっ!!」



(ふふ・・あの2人・・案外似たもの同士なのね・・・)


サリアがガイン達を微笑ましく見ていると背後に怒りを滲ませたジンが現れ男達に手をかざした。


(主様を奴隷扱いなど許せん・・せめて彼奴等の片腕だけでも切り落としましょう・・)


サリアは咄嗟にジンの腕に手を置く。


(ジン!駄目よ。ここはガインさん達に任せましょう。貴方にはまたお願いするわ。)


(は、はい。主様がそう言われるのであれば是非もありません。それでは失礼致します。)


跪いたジンは残念そうな顔で風に溶けるように消えて行った。



「き、貴様ぁぁぁ!!俺達はドルビナ帝国のクレイラル伯爵家だぞ?!俺達にこんな真似してただで済むと思うなよぉぉぉぉ!!!」


「お前らは不敬罪だぁぁぁ!!死刑だぁぁぁぁ!!!」


男達はよろよろと立ち上がり喚き立てていた。

周りの貴族達もゆっくり首を振りながらガイン達の末路を嘲笑っていた。


しかしアンリルとガインは顔を見合わせると余裕の表情で喚く男達を見ていた。


すると男達のいたテーブルから様子を見ていた初老の男が立ち上り男達の背後に近付くと拳を振り上げた。


どごぉ!どかっ!


「あぐっ!」

「ぐえっ!」


「この馬鹿息子共が!!こんな冒険者崩れに遅れを取るとは!!クレイラル伯爵家に恥をかかせおって!!下がれ!馬鹿者!!」


「う、うぅ・・・父上・・申し訳ありません・・・」


「う、うぅ・・・」


兄弟は父親の拳骨と叱責で縮こまり頭をさすりながら父親の後ろに下がった。


「おい!貴様等!このクレイラル伯爵家に不敬を働いた事は明白だ!!警備兵!!こいつらを捕らえよ!!」


クレイラル伯爵は息子達の恥を注ぐように毅然とした態度で声を上げた。すると四方から警備兵が集まりガイン達を取り囲んだ。


「ふん!貴様らはこれで終わりだ!早く捕らえよ!!」


クレイラル伯爵はまるで自分に酔っているかのように口元を緩ませていた。


しかし警備兵が一斉に近付いた瞬間、遂にお腹を空かせて苛々していたアンリルの我慢の限界を迎えた・・・


「あ゛ーーっ!!!煩いわぁぁぁぁぁ!!!」


苛ついたアンリルが軽く魔力を解放する!!


とばぁぁぁぁぁぁん!!!


「ぐわぁぁぁっ!!!」

「げえぇぇぇぇっ!!!」

「あがぁぁぁぁぁ!!!」


どがががががががーーーん!!!


アンリルの軽く放った魔力衝撃を喰らいテーブルや椅子、捕らえようと近付いた警備兵もろともクレイラル伯爵親子も一緒に吹き飛んだ!!

周りで見ていた貴族達もにやけ顔が一瞬で青ざめアンリル達から目を逸らすのであった。


「ふんっ!ごちゃごちゃ勝手な事ばかり言ってんじゃないわよ!!こっちとらお腹空いて苛々してんのよ!!」


アンリルはずかずかと転がっているクレイラル伯爵の元へ行くと、まだ意識朦朧としている伯爵の髪をむんずと掴む!


「ぐあっ!!な、何をする!!痛っ!!や、やめろ!!不敬だぞ!!」


「煩い!!ほら!立ちなさい!!いい物を見せてあげるわ!!」


アンリルは伯爵の話など聞かぬとばかりに髪を掴んだまま持ち上げて立たせると懐からドルビナ帝国皇帝陛下直筆の書状を目の前に突き付けた。


「ほら!!読んでみなさい!!ドルビナ皇帝陛下直筆の書状よ!!さあ!どっちが不敬罪かしらね?」


クレイラル伯爵は髪を掴まれたまま突き付けられた書状に目を走らせると一気に顔が青ざめ全身に冷たい汗が流れる・・・


(こ、これは・・・ま、まさか・・た、確かに皇帝陛下直筆の書状・・・そ、それも・・謝罪だと・・・と、となれば・・皇帝陛下の計らいで此奴らがここにいる事になる・・・そ、それを・・害した者は・・・こ、皇帝陛下のご意向に・・・逆らった事に・・・ま、まずいぞ・・・)


クレイラル伯爵の思考が固まり立ち直る前にアンリルは掴んでいた髪を離して書状を丸めて懐にしまった。


「あんたの名前と顔は覚えたわ!ドルビナ皇帝陛下にはきっちり報告してあげるから覚悟しておきなさい!!

ちなみに私はクラインド王国の国王から勅命を受ける立場なのよ!今回の事をクラインド国王からも抗議の書状を出してもらうから更なる覚悟をしておく事ね!!」


アンリルは目の前で口をパクパクさせながらカタカタと震えるクレイラル伯爵を一瞥して踵を返すと元いたテーブルへと戻って行った。


「おう!アンリル!手加減出来るようになったんだな!!成長したな!!」


「うるさいわよ!さっきの受け付けの子が丁寧で悪い気がしなかったからよ!!あの子を困らせたく無かっただけよ!!でなきゃ今頃ここは更地よ!!」


「お、おう・・そうか・・そうだな!いい子だったもんな・・・ふふ・・」


ペチンッ!!


「あうっ!!」


「何を想像してるの?!いやらしい顔をしない!!!」


「な、何も俺は・・・」


図星を突かれたガインが頭を摩りながら苦笑いをするのだった。


(へー!!アンリルさんもそんな事考えるんだ・・・この2人・・良いコンビね・・・)


サリアは微笑みながら黙って2人を眺めるのであった。



「あ、あの・・・」


「ん?」


力無のない声にガインが振り向くとおどおどとした態度のクレイラル兄弟が立っていた。


「さ、先程は失礼した。・・・どうか皇帝陛下には内密にして欲しい・・・」


兄の男が頭を下げた。しかしガイン達は気付いていた。2人の悪意が消えていない事を・・


そしてそんな事も知らずに弟のランバーが座っているサリアの背後を取り剣を突き付ける。


「ふん!掛かったな!こいつは人質だ!こいつに奴隷紋を刻んで俺のものにする!貴様らが余計な事をチクったらこいつは殺す!!分かったな?!」


ランバーはこれでもかとドヤ顔でアンリルとガインを見下ろしていた。


「よし!さすが我が弟だ!さあ!これで形勢逆転だ!!大人しくする事だな!!はっはっはぁぁぁ!!!」


兄弟揃ってはしゃぐ姿を哀れに思いアンリルとガインは盛大な溜息を吐く・・・

サリアもキョトンとしていたが背後に高まる魔力を感じ首をゆっくり横に振る。


「はぁぁぁぁ・・・お前ら・・・もう救えねぇぞ・・・」


「はぁぁぁぁ・・・せっかく手加減してあげたのに・・・」


「本当に馬鹿な人達ね・・・ジン・・死なない程度に好きにして良いわ!ただし外でお願いね。」


クレイラル兄弟は3人の態度に違和感を覚えた。何がおかしい・・・自分達はもしかしてとんでもない事をしているのではないかと疑心暗鬼に囚われた・・・だがしかし”時既に遅し”・・・であった・・・


「お、お前ら!!な、何を言っている!!こ、この女がどうなってもいいのか?!な、何だその余裕な態度は・・・」


するとクレイラル兄は動揺するランバーの背後に突然現れた大きな白い影を見た・・・


「なっ・・・ラ、ランバー・・う、後ろ・・」


サリアの背後に立つランバーの後ろに怒りの魔力を滲ませた最上級精霊ジンがランバーを見下ろしていた・・・そしてジンは剣を持つランバー手を掴み軽く握り潰した。


ベキベキベキッ!!!


「ぐぎゃぁ・・・もごもごもご・・・」


「うるさいぞ・・・耳障りだ・・・」


ジンは悲鳴をあげるデンバーを風の中に閉じ込めて締め上げる!!


デンバーは声も出せずに苦悶の表情だけを晒していた。


「主様・・・その御命令を心待ちにしておりました!!

この人という名のゴミ共・・・主様を奴隷扱いしたどころか剣を向けるとは・・断じて許さんぞ・・・ゆっくりたっぷり貴様等の罪を身体に刻んでやる・・・」


ジンのかざした手から濃密な魔力を纏った風が噴き出し呆然と立ち尽くす兄に絡みつくとそのまま締め上げた。


「うっ!ぐがっ!な、何を・・・や、やめてくれ・・・がふっ!」


「それでは主様・・・行って参ります。」


「えぇ。よろしくね!」


「「た、助け・・・」」


ジンはサリアにニヤリと笑い一礼するとその場からクレイラル兄弟と共に消えるのであった・・・


周りの貴族達はガイン達の事情と力を知り、明日は我が身と放心状態で膝を付いたままのクレイラル伯爵を憐れむのであった・・・

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