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第120話 スタンピード 終焉

冒険者達がオロチの周りに集まり改めて街を護れた事に歓喜していた。


「やったなぁぁ!!おい!!だけどよ・・あのでかいトカゲが出てきた時はどうなるかと思ったよな?!」


「あぁ!!本当に駄目かと思ったよな!だけどよぉ・・ログが居てくれて助かったぜ!」


「おう!突然身体が光って自分の身体じゃねぇーみたいに力が湧いてきたもんな!!ログが居なけりゃ・・・俺達今頃トカゲの餌だったぜ!!」


すると話を聞いていたゴルドが振り向いて近づいて来た。


「おい。今の話・・詳しく話してくれ。」


「おう・・そうかあんたは知らなかったんだな・・・いいぜ!」


男達はログが冒険者達の能力を引き上げる力がある事、ドラゴニュートに吹き飛ばされてから雰囲気が変わった事。身体に光りを纏って更に強くなった事を興奮しながらゴルドに話して聞かせたのだった。


ゴルドは頷き、目を見開き顔面を忙しく変えながら男達の話を聞いていた。


「なるほど・・ログにそんな力があったとはな・・・俺達が突然強くなって街を護れたのはログのお陰って事か・・・」


(だが俺達は白くは光らなかったな・・・)



その頃ログは感じた違和感を確認すべく倒れているオロチを調べていた。


思い返してみればオロチが出てきた時から様子がおかしい気がしていた。ブレスも吐かず、神力で護られているはずなのに魔法攻撃でグラつき剣で容易く傷が付いたのだ。ログは八岐大蛇がその程度で死ぬとは思っていなかった。


「何かあるはずだ・・・この違和感を解決する何かが・・・」


ログは不意に横倒しになったオロチの硬い皮膚と筋肉と骨格でできた背中に手を添えて違和感を覚えた・・・


(やはり硬いな・・・んんっ?!ここは・・柔らかい・・・?!)


ログはオロチの背中の硬い所と柔らかい所の境目を見付け観察していると境目が赤黒く変色し膨れていることに気付いた。


(こ、これは・・・まさか・・・)


ログは急いでバックステップで数メートル離れてオロチの背中の全体を視野に入れた。そして自分の考えが正しかったと確信するのだった・・・


「・・・一撃・・だ。神力の壁を貫き・・この強固な身体を粉砕した・・・更にその衝撃で身体の奥深くにある核を・・・破壊したんだ・・」


オロチの背中には激しく窪んだ一点を中心に巨大な円を描いて赤黒く腫れあがっていたのだ。


(人間が出来る事じゃない・・・俺の〈索敵〉にもそんな化け物は居なかった・・んっ!!〈索敵〉・・・・あっ!)


ログは何かに気付き急いで森の中へと入ると想像通りの光景が広がっていた・・・目の前にはリザードマンやドラゴニュート、ワイバーンやコカトリスの屍が数え切れない程転がっていた・・・


「・・・やっぱり・・もう一つの違和感がこれだ・・・」


ログ達が戦っている最中に〈索敵〉から魔物の反応が突然消え始めたのだ。それに魔物達が急に怯えたように逃げ出したのも何者かに恐怖を感じて逃げ出したと考えれば辻褄が合った。・・・そしてログは確信する。


「ここで俺達を護り、街を護った奴がいる・・・ふふ・・参ったな・・・」


ログは空を仰ぎ微笑みなが思いを馳せるのだった。





セルフィア王国を出て約三時間走り続けたサーシャはやっとウィランダの街まで数分の所まで来ていた。


サーシャは最初苦戦している冒険者達の前に颯爽と現れて魔物をかっこよく蹴散らす事を考えていた。しかし、死ぬ気で街を護っている冒険者達の前にしゃしゃり出て来て美味しい所を奪うのはどうかと思い出したのだ。


(そうね。ウィランダの街を護るのは冒険者達。私は手助け程度にしておけばいいわね。・・・それに、そうした方が・・・ふふふ。」


サーシャはそっとスキル〈隠密〉の付与された指輪をはめると〈索敵〉で見つけた危険な魔物に立ち向かうか弱い四つの反応に目掛けて街の外壁を飛び越えて行くのだった。



(ギギギィン!!ガギギィン!!ギィィン!!)


(ここね・・・へー!あの子やるわね・・・だけど後ろの子達は・・・)


サーシャは暫く四人の女の子達のやり取りを興味津々で見ていた。


(うふふふ・・・いいわ!いいわよ!!立ち直った仲間たち!!再び手を取り合う仲間たち!!ゾクゾクしちゃうわ!!・・・それじゃあ私からの援護射撃よ・・・天界神聖魔法〈オーバーオール〉(小)!)


サーシャは四人の女の子達が白いオーラに包まれ見事にドラゴニュートを切り倒し泣きながらリーダーらしき女の子にしがみ付き泣きじゃくる三人の女の子を見てニヤついていた。


(いい!!いいわ!!仲間達との和解!!これからより一層深まる絆!!・・うふふふ・・・おっと・・・街の外が苦戦してるわね・・・)


サーシャは〈索敵〉で冒険者達が押されているのを見るとニヤけながら街の外で戦う冒険者達の元へ向かうのだった。



「ごはぁぁぁ!!!」


ログが吹き飛ばされて転がっているのが見えた。


(あちゃ!!遅かったか・・・あの人が冒険者達の要なのに・・・仕方な・・・って・・あれ?立ち上がった・・・?それに雰囲気が・・この魔力は・・弱いけど・・神力だわ!・・一体何者?!)


サーシャは少しだけ興味が湧くが本来の目的を優先させる。


(今はいいわ・・それにしても・・うふふふ・・面白くなって来たじゃない・・・窮地から奇跡の力で立ち上がる英雄!!更なる力で冒険者達を率いて敵を討つ!!いいわ!!いいわよ!!・・・でもまだ力不足ね・・・ほら!頑張ってらっしゃい!天界神聖魔法〈オーバーオール〉(小)!)


ログと冒険者達が白いオーラを纏ってやる気満々で魔物達に走って行くのをサーシャは小さく手を振りながら見送るのであった。



「さてと・・・まだまだ残ってるわねー!少しだけ間引きしようかなぁ!」


サーシャは冒険者達の前にいる魔物に睨みを効かせながら森の中へ消えて行くのだった。


サーシャが森へ入った瞬間、サーシャの姿を見てリザードマンは逃げ出しドラゴニュートは震えながら後退っていた。


「駄目よ!逃がさないから!!初級魔法で十分よね!天界神聖魔法〈ホーリーインパルス〉!!!」


ズドドドドドドドドドドドドドドドォォォォ!!!!


サーシャが手をかざすと逃げ惑う魔物達に無数の蒼白い衝撃が弾丸のように襲い掛かる!リザードマンとドラゴニュートはなす術もなく次々と撃ち抜かれて絶命して行く!!そしてその手をを空に向ければワイバーンとコカトリスが殺虫剤で落ちてくる虫のように降って来るのだった。そして気付けば数えるのが面倒なくらいの魔物の屍が転がっていた・・


「ふう!!こんなもんかなぁ?それじゃあ・・・んっ?!まずいわ!!死んじゃう!!急がないと!!」


サーシャは〈索敵〉から消えそうな反応を目掛けて全力で駆け出した!街の外壁を飛び越えギルドの近くまで来ると見た事のある女の子がギルドの扉を開け放って入って行った。


「あの子は・・確かさっきの路地にいた子ね・・・」


サーシャはそっと中を覗くとちょうど女の子が中級魔法〈ハイヒール〉を放つ為に詠唱中であった。


「グットタイミング!!天界神聖魔法〈パーフェクトヒール〉!!!」


サーシャは女の子が魔法を放つタイミングに合わせて最上級回復魔法〈パーフェクトヒール〉を放った。全ての状態異常と体力を全回復するチート級の魔法である。サーシャが放った魔法はギルドを中心に街全体を余裕で包み込むほどの魔法陣が展開され魔法陣の中にいる者の傷はもちろんの事、毒や持病、古傷まで綺麗に治癒されたのであった。



「ふふ・・・生死を彷徨う彼女を嘆き悲しむ彼の前に現れた救世主!!動かぬ彼女の前で絶望の中、救世主が放った奇跡の魔法で彼女が息を吹き返す!・・・いいわ・・・うん、うん・・」


サーシャは何かをイメージするように何度も頷いていると、遂に〈索敵〉に巨大な影が映る。


「あっ!来たわね・・でもあの神力の壁は今の冒険者さんでは無理よね・・・。それじゃあ少しだけお手伝いしようかな!ふふ・・」


サーシャは森の中に入りアイテムボックスを展開する。


「ミハエル君からもらったコレの出番ね!」


サーシャが取り出したのは流線形で赤と銀でデザインされた美しい手甲であった。手甲には真っ赤な魔石が嵌め込まれ光りを放っている。ミハエルがサーシャの為に作った武器であった。


【魔剛拳】


〈攻撃力〉 ー (魔力に比例)

〈効果〉 魔力吸収・極大


ミハエルの【魔剛剣】の手甲版である。サーシャが〈天界神の加護〉のリナに影響されて作ってもらったのだ。


サーシャは手甲を両手に装備すると【魔剛拳】がサーシャの魔力を吸収して輝き出す!!そしてサーシャの視界に巨大な魔物が姿を現した。


それは巨大な身体に八本の首と八本の尾を持った巨大な魔物であった。


「わおぉぉ・・・大っきい!!えっと・・ヤマタノオロチ・・か・・んん?!ヤマタ?・・・頭が八本なら又は七つよね・・・じゃあナナマタノオロチじゃないの?・・・変なの!」


サーシャはオロチを〈鑑定〉して頭を傾げていた。するとオロチがサーシャに気付き脅威と思ったのかいきなり八本の尾で次々とサーシャを襲った!!


「あら?いきなりご挨拶ね!・・・でも遅いわね・・・うりぁぁぁ!!!」


サーシャは迫り来る極太の尾に次々と拳をめり込ませて行く!!!


ズドドドドドドドドンッ!!!


サーシャの魔力を纏った拳がめり込んだ瞬間、尾があらぬ方向に曲がりながら弾き返される!!そして八本の尾はだらしなく地面に転がるのであった。


「ふん!!そんなものなの?ただの大きい仲良し蛇の集まりなのかしら?


グロロロロロ・・・・


そしてオロチは本能で理解した・・・神獣と謳われ神の使いと恐れられた自分はこの小さな生き物に殺されると・・オロチは無意識に街の方へ逃げ始めた。


しかしそれをサーシャが許す訳もなく軽いフットワークでオロチの身体を登って行くと背中に仁王立ちになりオロチの神力が溢れる一点を見つめる。そして逃げるオロチの背中で拳を構えて口角を上げた。


「逃がさないわよ!!街のため!冒険者達のため!そして私の物語のために!その命捧げなさいぃぃ!!どぉぉりやぁぁぁ!!」


サーシャは魔力を吸収し周りの景色を歪める程の魔力を漂わせた右腕を勢いよく振り上げてただ一点目掛けて打ち下ろした!!


ずどぼぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!


バキン・・・


「グギャブェェェェェェ!!!!」

「グゲェェェェェェェェ!!!!」


断末魔と共にオロチの背中は一瞬巨大なすり鉢状に潰れて背中と腹がくっ付く程の衝撃であった。そしてその衝撃で神力の核が粉砕され虫の息で冒険者の前に現れる事になったのであった。


「ふう!これで冒険者さん達が頑張ってナナマタノオロチを倒してくれれば一件落着ね!あとは・・・ギルドで事の経緯を聞きに行こうかな。」


サーシャは外した指輪をはめ直してギルドへと向かうのであった。


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