第113話 帝国騎士団の末路 2
ガインは剣を帝国騎士団団長レバイトに突き出し面倒臭そうに頭を掻く。
「さてと・・・その旗はあの悪名高い帝国騎士団だな?!俺達も暇じゃ無いんでな!地面に頭付けて謝るか、無理やり頭を地面に付けられて血反吐を吐くか3秒で決めろ!」
レバイトにそう言い放ちチラリとニーナとアンリルに目線を送ると二人ともニヤリと笑い頷く。
レバイト達は村人の闘気と魔力に当てられ、柵の外から聞こえる部下達の悲鳴を聞きながら恐怖で満身創痍であった・・・
(も、もう駄目だ・・・ここは降ふ・・)
「・・・3!!」
「うえっ?!」
ガインの突然のカウント終了にレバイトが目を見開いた。そしてその瞬間!ニーナとミナがレバイトに襲いかかった!
「「よくもやってくれたわねぇぇぇ!!」」
ニーナとミナの蹴りがレバイトの顔面を綺麗に捉えた!!
ずばきぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
「ぶべばぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
2人の蹴りを喰らい仰け反り回転しながら部下達の足元に転がった。
「今までの借りは返したわよ!でもね・・これからが本当のお仕置きよ!!!」
「そう!!お仕置きよ!!!」
ニーナとミナが胸をはりレバイトを見下ろした。
「ど、・・どうして・・・ま、まだ・・」
レバイトは這いつくばり前歯は折れ鼻が曲がった顔を上げる。すると怒りに満ちたガインが見下ろしていた。
「馬鹿共がぁぁ!!ここまでやらかしといて地面に頭擦り付けたぐらいで許されると思っているのかぁ?!このどあほ!!覚悟しろよ!アンリル!仕上げだ!!」
「ほい来た!!喧嘩売った相手が悪かったわねー!!行くわよ!重力魔法〈グラビティゾーン〉!!」
アンリルが待ってましたとばかりに魔法を発動すると突然帝国騎士団の男達が地面に激しくへ張り付く!!
「あ、あぐっ!!か、身体が・・重い・・ぐべぇ・・」
「ぐぐっ!!あぶっ!!た、たすげべっ!」
「や、やべでぇぇ・・・し、死ぬ・・・」
「ぐげぇぇぇ・・・おでがい・・だずべで・・・」
どんどん男達の周りの地面が凹み重力が増して行く。そして遂に男達の身体から絶望的な音が響いた・・・
ばきっ!!べき!ばき!べき!ばき!べきっ!!!
「ぐべぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「ぐぶぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」
「ぶべぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
遂に男達は後悔の中、胃の中の物をぶち撒けて意識を手放すのであった。
山賊の頭が我に帰り振り向く!
「よ、よし!今だ!!な、何秒だ?!」
「へ、へい・・・28秒です!」
「よっしゃぁぁぁ!!流石!メルト村だぁぁぁ!!!」
「お、おい!お前は何秒だ?」
盗賊の頭が振り向く!
「同じく28秒です!!」
「くっ!くそぉぉぉぉ!!帝国騎士団約300人をたった28秒で制圧?!あいつ等おかしいだろ?!」
山賊の頭は両手を突きあげて喜び、盗賊の頭は膝を付いて頭を抱えていた。
すると山賊の頭が急に真顔になりメルト村の方角を遠い目で見ていた。
「だけどよ・・・お前の言う通りメルト村の奴らはおかしいんだよ・・・この辺にも村が大小合わせて7つあるがここだけがヤバイんだ。」
「あ、あぁ・・そうだな。・・んっ?ま、待てよ?!も、もしもメルト村の奴が他の村に引っ越しでもして住む事になったら・・・」
「くっ!そ、それは・・最悪の事態だな・・・」
山賊と盗賊の頭が顔を見合わせると顔を歪めて冷たい汗が頬を流れた。そしてメルト村の恐ろしさを改めて知るのであった。
「ふう。アンリル、もういいだろう。」
「りょーかい!」
ガインが目線を送るとアンリルは軽く頷いて魔法を解除する。
重力から解放された帝国騎士団の男達は息はしているものの自分の意思で動かせる所が一つも無く気絶したままであった。
「アンリルさん!重力魔法も慣れて来たみたいだね!凄いよ!」
「本当に・・・いつ見てもエグイ魔法ね・・・」
「そうだよね・・・じわじわと押し潰されて・・・」
カリンとライナードは呟き顔を見合わせて肩をすくめるのであった。
「ふふ!そうね!それにレベルが上がって魔力に余裕が出てきたからね!これもミハエル君のおかげよ!」
ミハエルが笑い掛けるとアンリルも口元を緩めてニッと笑い返すのだった。
ガインは倒れている帝国騎士団を眉間に皺を寄せ拳を握り締めながら見下ろしていた。
こいつ等は今まで何人もの罪の無い弱い者達から奪って傷つけて来たんだ・・・話に聞けば証拠隠滅の為に村人を皆殺しにして村を焼き払って来たと言う・・・こ、こんな奴等・・・絶対に許せねぇ・・
ガインは若かりし時の記憶を思い出し怒りを滲ませながらその場に立ち尽くしていた。
「村長。・・大丈夫ですか?」
「ん、・・あぁ、大丈夫だ・・・」
村長の様子に気付いた村の男が声を掛けるとガインは我に返りぎこちない笑顔を見せた。
「んっ?」
ガインが大きな気配に気付いて見るとミハエルの前に四人の精霊が跪いていた。そして代表でエントが口を開いた。
「ミハエル様。メルト村の周囲いた敵の排除が完了致しました。」
「うん!皆んなありがとう!助かったよ!」
「お褒めの言葉ありがとうございます。何かあれば何なりとお申し付けください。」
「分かったよ!じゃあ・・・」
「ミハエル!ちょっと待ってくれ!!」
ミハエルが精霊達を帰そうとすると突然ガインが駆け寄って来た。
「村長さん。どうしたんですか?」
「あぁ、少し頼みがあってな・・・その・・
念話で話せるか?」
「は、はい。良いですよ。」
(・・・・・・・)
(それと、これは他言無用だ。頼むぞ。)
(・・・はい。良いですよ。)
(ミハエル・・・恩に着る・・・)
アンリルを始めサリア達が首を傾げる中ガインは声を上げる!!
「よし!!皆んな聞いてくれ!!あそこに倒れている馬鹿共は生かして村から帰す事にする!皆も気付いて居るだろうが西の森にまだ30人隠れている!恐らく馬の監視役だ!そいつ等にこの馬鹿共の回収をやらせる!!いいな?」
「村長の決定なら異論はないぜ!!」
「そうだな!子供達もいる事だしな!」
「また来やがったらぶっ飛ばしてやるさ!」
村の者達も反対する者は1人も居なかった。
「よし!決まりだ!ミハエル頼む!奴等をここへ連れて来てくれ!!
「うん!分かったよ!!」
ミハエルは精霊達に振り向きニッコリ笑うとエントが微笑みながら顔を上げる。
「ミハエル様。お話は理解致しました。隠れている者達をここへ連れて来ればよろしいのですね?」
「うん!話が早くて助かるよ!」
「ふふ。それでは早速行って参ります!」
エント達はその場から一瞬で消えるとあっと言う間に意識が無い状態の男達がミハエルの前に並べられた。
「早っ!!」
「ミハエル様。只今戻りました。この者達が少々煩く騒ぎ立てましたので大人しくして頂きました。」
並べられた男達を見ると髪はボサボサで鎧はあちこち凹み擦り傷だらけで水浸しになっていた・・・
「あぁ・・・うん。ありがとう・・・」
(ま、まあ・・仕方ないか・・・取り敢えず起きてもらおうかな・・・)
「〈ヒール〉!」
ミハエルが男達に手をかざすと蒼白い光に包まれた。そして男達が目を開けるとそこにはガインと村の男達が見下ろしていた。
「うっ・・こ、ここは・・.ひっ!!!」
「あ、あう・・・こ、殺さないで!」
「・・た、助けて!!助けて!!」
ガインは男達に苛つきながら剣を抜いて突き付ける!
「騒ぐな!クズ共!!お前等ごとき殺すつもりならさっき殺している!!お前等にはやってもらう事がある!!一度しか言わんぞ?」
男達はガインを見上げ自分達がこれからどうなるか不安と恐怖で震えながらコクコクと首を縦に振った。
「よし・・・お前等はあそこに転がっている馬鹿共を連れてとっとと帰れ!!・・・以上だ!」
「・・・えっ・・・帰っていい・・・?」
男達はポカンとして思わず声が漏れた。ガインの言葉を何度も頭の中で反復しながらお互いの顔を見合わせる。そして恐る恐る男がガインの顔を見ながらそっと手を挙げた。
「あの・・・」
「何だ?!」
「か、確認なんだが・・た、倒れている者を含めて・・帰っていい・・この認識で良いのか?」
「あぁ!さっきからそう言っている!!ただし!村を包囲していた奴等は探しても無駄だ!・・・何故かは分かるな?」
ガインはニヤリと笑いながら男から視線を外して四人の精霊達を見た。男達もそれに釣られて精霊達に視線を送ると精霊達は視線を感じて男達を殺気の籠った目で見下ろした。
「あ、あう・・・」
男達は背筋に何かが這いずり回る感覚に襲われた。そしてガインの言わん事を察してコクコクと首を縦に振るのであった。
「分かったらさっさとしろ!!のろま共!」
「はいぃぃぃぃぃ!!!!」
ガインの怒号に男達は慌てふためき足をもつれさせながら倒れている者達に駆け寄り村の外に連れ出していた。
「よし!皆んな!お疲れさん!!これで解決だ!後は俺が見ておくから家に帰ってゆっくりしてくれ!!」
ガインは村の皆に笑顔で振り返り声を上げる。
「村長!お疲れ様でした!」
「はーい!!村長さんありがとー!」
皆がガインに手を振るとガインも笑顔で応え小さく手を振っていた。そして皆を見送るとガインは踵を返して笑顔を消すのであった。
さてと・・・
アンリルは何気なく違和感を感じて振り返った。ガインの背中を見ながら何がおかしいのかは分からないが何かが胸に引っ掛かった。しかし答えが出ずに頭を掻きながらミハエル達と歩き出すのであった。
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