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第107話 メルト村襲撃 1

帝国騎士団の本隊がメルト村のすぐ近くで待機していた。


(見えたわ!ラル!イルグ!闘気を抑えて!人質らしくおとなしくするわよ!)

(うん。分かったよ!)

(難しいな・・・おとなしくか・・・)


ニーナ達が闘気を抑えると副団長ドルム達の生気が戻り皆が深々と深呼吸をして新鮮な空気を肺に取り込んでいた。


(ふぅぅぅ・・身体が軽くなった?!何故だ・・・)


ゼガルは走る馬に軽々と付いて来るニーナ達に目をやった。


(・・・こいつらからの殺気のような空気が無くなった・・・?

ま、まさか・・いや待てそうだとしてもこの無敗の帝国騎士団を村1つではどうしようもない筈だ。・・・こいつら一体何を考えている・・)


ゼガルは自分の所属する帝国騎士団第一軍の強さを誇りに思っていた。

出陣すれば負け無し。対魔物であっても対軍隊であっても蹂躙し粉砕して来たのだ。


(ふはぁぁぁぁぁ・・・どうしたんだ・・急に体が軽くなったぞ・・・そ、そうか村から離れたからか・・・多分魔法か結界だろう・・・)


ドルムは勘違いをしながら団長のレバイドを視界に捉えると足早に向かって行った。



「団長!報告します!村のガキ共を捕まえました。これで交渉がやり易くなります!」


レバイドは馬の後ろにいるニーナ達に目を向けるといやらしい笑みを浮かべた。


「ふっ・・ドルムよ!良くやったぞ!今日は楽しい宴になりそうだな・・・ふっふっふ・・・それでは宴の会場に向かうとしようか。」


帝国騎士団第一軍はレバイドを先頭にメルト村という名の人外魔境へと歩を進めるのであった・・・



「古代魔法〈マインドスピーチ〉!」


ミハエルは意志の疎通を取るべくニーナに念話を送った。


(皆んな!僕だよ!聞くまでも無いけど無事だよね?)


(えっ?あっ?ミ、ミハエル君?!そ、そんな事が出来るの?!・・・それなら・・なんでごにょごにょ・・・)


(ミハエル君?!凄いね!!こんな事が出来るんだ!)


(なあ!俺達にも出来るようにしてくれよ!!)


(うん!そうだね。これが終わったら作ってみるよ。それよりあいつらはニーナ達の好きにしたらいいよ。メルト村に喧嘩を売った代償を払わせよう。)


(分かったわ!奴らに死ぬほど後悔させてやるわ!!)


ニーナ達はミハエルの声を聞きやる気を漲らせ村へと向かって行った。




「・・・村から立ち登るオーラが一段と濃くなりましたね・・中級精霊達も森の奥へ隠れてしまいました。」


森の上級精霊エントが少し離れたところからメルト村を眺める。

するとエントが座る木の枝に風の上級精霊ジンが舞い降りる。


「仕方ないさ。上級精霊の俺達だって圧倒されてるんだからな・・・それにしても・・・あの中に悪意を持って飛び込もうとするとは・・・命知らずを通り越して自殺志願者だな・・」


「本当にその通りです・・・でもお手柔らかにお願いしたいものですね・・・」


「あぁ・・そうだな・・・」


エントとジンは立ち登るオーラを肌で感じながら森の安否を想いメルト村を不安な面持ちで見つめるのであった。



帝国騎士団長レバイド率いる騎馬隊がメルト村に近づくと異変に気付く。


「な、何だこの重い・・・いや・・纏わりつく殺気のような空気は・・・ドルム!どういう事だ?!」


レバイドは額から垂れる脂汗を手で拭いながら険しい顔をする。


「はっ!・・奴らは我らが来る事を勘付いています。恐らく防御魔法の類か結界と思われます。人質を掲げれば大人しくなる事でしょう。」


ドルムが検討違いの推測を披露していたがゼガルは内心不安に襲われていた。

今は大人しくしているが森の中でのニーナ達は凄まじい程の闘気を纏っていた。

そのニーナが自分達が足元にも及ばない者が居ると言っていたのだ。ニーナ達の闘気を間近で味わったゼガルは頑丈な背の高い柵の向こうから溢れる濃厚な圧力を受けて自分の心臓の鼓動が耳元で聞こえていたのだった。


「そ、そうか・・そういう事か。ならば早く行くぞ!!」


しかしレバイドが馬の腹を蹴るが馬が怯えたように動かなかった。


(ぶるるる・・・)

(ひひぃーーーん・・・)


「ど、どうした?!何故行かない?!おい!こら!」


(ひひぃーーーーん!!!)


「どわっ!!どうしたぁぁ!!!」


レバイドが馬の腹を執拗に蹴ると馬が止めろと言わんばかりに前足を蹴り上げて身体を揺するとレバイドを振り落とした!


ガシャァン!!


「うぐっ!!!ど、どうしてだ?!痛てて・・何故言う事を聞かない?!」


レバイドはフルプレートの鎧の為起き上がるのに部下の手を借りながらヨロヨロと立ち上がった。


この時ゼガルは確信した。歴戦練磨の馬達も野生の勘でこの村は危険だと悟ったのだと。そして気付いた時には声が出ていた。


「団長殿!!この村は危険です!この付近の山賊や盗賊が手を出さないのには他にも理由があるのです!ここは引いた方が良いかと思われます!」


しかしレバイドはゼガルの進言に眉を顰めて眼光鋭く睨み付けてゼガルに詰め寄った。


「何だと?!俺がする事に意見する気か?!この帝国騎士団がたかが村一つに負けるとでも言うのか?!あぁ?!」


「い、いえ・・そ、そう言う訳では・・し、失礼致しました・・・」


(ちっ!やはり聞き入れてはもらえないか・・・・)


ゼガルが奥歯を噛み締め、ふとニーナ達を横目で見ると目を細めて僅かに口元が綻んだ気がするのだった。


へー・・・ちゃんと冷静な判断が出来るんだね。でも・・・村の人間を襲った事実は消せないよ・・・絶対に逃がさないんだから!



「ふん!馬が使えないなら降りれば良いんだ!!よし!ゼガル!100騎を連れて村を包囲しろ!!蟻一匹逃すなよ!!」


「はっ!お任せを!」


ゼガルは部下達を連れて隊から外れると村の裏手の森へと向かって行った。


「他の者は馬の監視に30人残して残りは付いて来い!!」


「「「はつ!!」」」


そしてレバイド達は段々と増す闘気と魔力の沼の中を足取り重く進むのであった。


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