第5話 メッセージの送信を取り消しました
布団に潜り、俺は目を瞑る。
目に涙を浮かべた葵の姿が頭から離れない。
自分でも最低だと思うけど、彼女が出来た喜びよりも、葵への心配の方が大きく上回っていた。
俺はいつものようにLINEを開き、唯一お気に入り登録されているアカウントにメールを送る。
『大丈夫?』
一時間待っても、二時間待っても返信は来なかった。
俺は布団にくるまって動けなかった、
こんなんじゃ、桜に対してあまりに失礼だ。
-ブー
机の上で俺のスマホが唸る。
俺は一目散に飛び起きて、スマホへと向かう。
『そう言えば廉のLINE貰ってなかったんで、友達から勝手に聞いちゃいました。迷惑だったらごめんね』
俺は落胆する事はなけれど、ささやかな期待は砕かれた。
それでも、初彼女からのLINEだ。
嬉しくないのかと聞かれたら、そりゃ嬉しいに決まってる。
『いいよ。俺も聞くの忘れてたから』
『良かったです』
暫く間を空けて
『今からお電話出来ますか』
今から?俺は時計に視線を送る。
時計の短針はもうそろそろ11時を刺そうとしていた。
『ごめん。話したいのは山々なんだけど、ちょっと遅いからもう寝るね』
『ごめんなさい無理言っちゃって』
『いやいやこちらこそ。また出来る時間を教えるよ、じゃあおやすみ』
『おやすみなさい。また明日です』
俺はそのまま死んだ様に寝た。
*****
-ピピピ
スマホでセットしたアラームだ。
俺は朦朧とする意識の中、手探りでそれを探す。
何とか掴み、LINEを開く。
『葵がメッセージの送信を取り消しました』
『葵がメッセージの送信を取り消しました』
今日
4:10『気にしないで、そもそも私は超元気よ』
4時に起きてる奴が元気な訳あるかよ。
俺は朝ご飯も食べずにカバンだけ持って、急いで葵の家へと向かう。
玄関から出たその時だった。
「おはようございます!」
「あぁ、おはよう、新芽」
「昨日一緒に帰ってから家覚えちゃいました!それに、桜ですよ!下の名前!」
「ごめん桜、俺行かなきゃ」
俺は桜を置いて葵の所へ向かおうとした。
-パシッ
無言で桜は俺の手を掴む。
彼女は目を細め、とても寂しそうな顔をした。
「私じゃダメなんですか」
俺はその手を振り解く事は出来なかった。




