第1話 これでダメだったら諦めよう
誰も居ない放課後の教室。
燃えるような淡い夕陽が俺たち二人の間を割くように差し込む。
これでダメだったらもう。
-諦めよう。
「好きです!付き合ってくださ…」
「無理です。諦めてください」
彼女は淡々と、俺が言い終わる前に、冷たく吐き捨てるように答える。
「ほら、アホな事やってないで帰るよ〜
日が暮れてきちゃったじゃん。もうこれ何回目よ」
あぁ、俺の片思いもやっと終わりか。
彼女、日坂葵は俺の幼なじみ。
俺は保育園で彼女に出会い、一目惚れした。
それからことある事に
「好き」
「無理」
「好き」
「無理」
こんなやり取りを繰り返してきた。
今日で1000回目の失敗だ。
俺は今日を持って彼女に告白するのを辞める。
俺も無駄と分かっているものにこれ以上青春の貴重な時間を割けない。
「何回?今日で1000回目だよ。あ〜あまた振られちまった」
「なんで数えてるの?キモイんですけど」
お前が回数教えろって言ったんじゃん。
「ほら、帰るわよ」
彼女は満面の笑みを浮かべ、俺の手を引く。
ヤバい、気を抜いたらまた惚れてしまいそうだ。
「分かったよ」
俺は自分の気持ちを押し潰し、彼女の手を取る。
俺は彼女に手を引かれ、教室を後にしようとした、その時だった。
「神谷くん!」
廊下から誰かが何かを叫んでいる。
俺の名前?聞き間違いか?