私が婚約者に選ばれた事情です
「ひとえに、貴女の謹み深さがお気に召したのです」
騎士様は、王子様に代わってそのように説明しました。
その言葉を聞き、私はようやく状況を理解したのです。
王子様の周りには、基本的に肉食系と言いますか、アピールの強い女性が多いのです。
クラスわけが魔力量に左右される事から分かるように、結婚で大事なのは魔力量が最初に考えられます。
そこで、同じクラスというのは、婚約者候補という意味合いがあります。同じクラスで婚約者のいない異性であれば、アピールしても許されるのですよね。
王子様へのアピールは、なかなか無くなりません。
これは積極的なのもそうですが、消極的にゲームのイベントを利用したものを含みます。
その度に騎士様がナイスセーブするのです。
私は距離を取っていたので、ナイスセーブされませんでしたが。
「ですが貴女だけは、殿下を気遣い、距離を置きました。貴女だけが、殿下を深く思い遣っていたのです」
ここで「乙女ゲームのイベントが潰される様が面白くて、そこまで深く考えてはいませんでしたよ」等とは言えません。私は空気が読める子なのです。
状況は分かりました。
元より婚約者候補たちから狙われている王子様ですもの。気の休まる相手が良かったのでしょう。
これが隣で支えてくれる人と言われれば納得できませんが、最低限の配慮だけが求められるようならば、納得はできます。
要は、私が王子様との距離を抑えていたのが評価されたのです。
「王家が相手では断りにくいと分かっていますが、この話を無理矢理進めるつもりはありません。
もしも心情的に難しいようであれば、私に相談してください。私の方から断りの連絡をいたします。その方が角が立ちませんからね」
微笑み、私を安堵させようとする騎士様。
お気遣い、ありがとうございます。
であるならば、ヒロイン復帰も考えましょう。
王子様を支えるのは、ヒロインの務め。それ以前に、貴族の子供として産まれた者の義務なのです。
ヤンデレ公爵令嬢は倒し方を知っていますし、そちらはなんとかなります。
ですが、他のヒロインの動向だけは読めません。複数ヒロインなど、イレギュラーなのですから。
私は王子様の婚約者としての立場を得て、騎士様と一緒に王子様を守る事を決意しました。