何人もいると、一人ぐらい我慢のできない子がいるのです
イベントがなかなか進みません。
それもこれも、全部、騎士様の所為なのです。
「殿下、危ない!
殿下。以前も注意しましたが――」
「申し訳ありませんが、殿下に調理実習で作った物を渡さないようにお願いします。
いえ、御令嬢を疑うわけではありません。不心得者が材料に細工を仕掛けている可能性がありますから」
「すみません。殿下を女性と二人きりにするわけにはいきませんので」
「男爵令嬢とは、ここまで優秀なのですね。上位8人、全員が満点ですか……」
いえ。
一部は騎士様と関係ありませんが、乙女ゲームのイベントが発生しそうになると、騎士様が現れてそれを防ぐのです。
護衛の騎士と考えれば、きっとそれは正しいのでしょう。
殿下への危険を防ぐ。醜聞を回避する。
全て、殿下のための行いですし、側近の心得でしょうから。
これは私のみの話ではなく、他のヒロインも同じようです。
ですが、それによりイベントが進まず、王子様の攻略が遅々として思うように進みません。
このままでは王子様、私への認知度が足りず、攻略失敗なのですよ。
ゲーム的には2年目の中盤に固定ルートに入るのですが、それはかなり厳しそうです。
正直に申しまして、私は焦っていました。
このままイケメン王子様を諦めねばならないのか、と。
そうなると気分は天国から地獄といった有り様でして、テンション駄々下がりです。
私はそんな泣きそうな気分で学校に通っていました。
ただ、転生前の、元々の私は地味子でしかなく、多少は耐性があったのでしょう。
上げて下げられるのは初めてではなく、目の前の餌を取り上げられるような、期待を裏切られるのも耐えられないほどのストレスではありませんでした。
しかし、8人もいれば、元が色々な人がいても不思議はありません。
そうして、私と違い、「ヒロインなのに」と耐えられなくなった人が暴発しました。
ヒロインの一人が、王子様を襲ったのです。
しかも、性的に。
これ、乙女ゲームだからR18ですらないんですけどね……!