何かおかしくありませんか?
この後の展開は、ベタです。ベタベタです。
例えば、廊下でぶつかるのです。テストの順位争いなどもします。あとは調理実習でお裾分けもするのです。
そうやって存在を認識され、徐々に距離を詰めていきます。
奇をてらった展開は少なく、王道なのですが……。あるゑー?
それは、私が廊下を歩いている時でした。
曲がり角。
ここで角の近くを通っていると、王子様とぶつかるのですが。
「殿下、危ない!」
あとちょっとで王子様とぶつかる寸前に、王子様の御友人にして攻略キャラの一人、護衛候補の騎士様が、王子様の腕を引っ張り。私にぶつからないようにしました。
え?
ここはぶつかって認知度を上げるイベントではないのですか?
「殿下。角からは人が飛び出す恐れがあります。十分に注意して下さい」
「すまないね。助かったよ」
騎士様がイケメンスマイルで私に軽い礼をしました。
「御令嬢。お怪我はありませんか?」
「いえ……。声に驚きはしましたが、それだけでしたので……」
「おお、それは驚かせて申し訳ありません」
騎士様もイケメンなのです。ふつくしい……。
でも王子様だけが私の攻略対象で、騎士様はパスなのです。二股とか、逆ハールートは存在しませんし、する気もありません。
ヒロインは一途なのです。
ビッチは死ねばいいのです。
申し訳ありませんが、騎士様は他のヒロインにお任せなのですよ!!
私は王子様と騎士様に淑女の礼をすると、ちょっとした違和感を感じつつも、その場をあとにするのでした。