パーフェクトの日
「このユリエル・セルリアに不可能は無いですわ!!」
「そうだね、ユーリ。君はいつだって可愛くて美人さんで頑張り屋さんで努力家さんだから、なんとかなるよね!」
東家で胸を張ってなんだか知らないけど自信満々に告げる彼女に、義父はうんうんと頷き拍手を贈りながら肯定をしている
「それだと顔と努力するところしか褒めてないと思うんですが……」
近付きながら思わず呟いてしまった言葉は、耳が良いのは遺伝なのか2人でこちらを向いて微笑んで、
「シルク。顔が良いのは生まれつきを褒められて、努力は才能以上に大切なものを褒められてるから、つまりパーペキな褒められ方よ?」
「そうだよシルク。ユーリは可愛く生まれて美人に育って、しかも家族では堪らない愛嬌までも持ち合わせて、しかもその上あまり手先が器用でないにも関わらず、ピアノも刺繍もなんとかポブコフ夫人の合格ラインを貰うほどの腕前になったんだ。誇れる事だろう?」
「ですわ!!」
そんな自信満々な2人に「そうですね」と笑みを返せば、両側に回って腕を掴まれる。
「そんなユーリと共に素晴らしいのが」
「シルク・ファン・セルリアですわ!!」
「……いや、そういうの僕は大丈夫なので」
両腕を引き抜こうとするがガッチリと掴まれて、そのまま半分引きづられるように東家へと運ばれて……、
「まず努力家ですわね」
「うんうん。君は来た頃から幼いにも関わらず、嫌がる事なく勉学に勤しんでいたね」
「顔は学園のお嬢様方がキャーキャー言うほどに整っていますわ」
「そうだねぇ。誰がなんと言おうとうちの子が一番だ」
「それに悔しいほど足が長いわ」
「そうだねぇ…、身長も抜かれる前から腰骨の位置が抜かれたあたりは、悔しいくらいではあったねぇ」
「それに優しい」
「それはシルクの素敵な要素だね」
「温厚だわ」
「うん。僕ももう少し怒っても良いと思うよ」
「でもわたくしには少し厳しすぎない?」
「ユーリは天使だけど、ちょっとドジなところもあるしね。シルクくらいが丁度良いと思うよ」
「あとしっかり者だわ」
「確かに間違いないね」
2人が互いに頷きながら語るその言葉に、僕は少しずつ顔を下げて両手で顔を抑えながら、「勘弁して下さい」と、何度懇願しても2人の褒め言葉は、流石親子と止まらぬ掛け合いが続いていく。
「それに照れ屋で恥ずかしがり屋さんだわ」
「僕らは本当のことしか言ってないのにね」
「そういうのは、親バカ姉バカと言うんです……」
必死で言い返した僕の言葉に、公爵家の当主と御令嬢とは思えない笑みを浮かべて、
「そういうバカなら大歓迎だわ」
「そういうバカなら大歓迎さ」
楽しそうなその声にクスクスとまた2人で笑うと、
「学園でのノートも綺麗にまとまってますわ」
「僕との実務の引き継ぎノートもとても綺麗だよ」
「ありがとうございます……もういいです……」
僕の言葉は2人を止められそうも無く、ただ熱い頬のまま、早く終わることを願った。
8月21日は「パーフェクトの日」です。
前にも触れてますがセルリア家は、ユリエルが幼い頃から誉めて回るもので、褒めに対する抵抗とかハードルがありません。
幼いユリエルに、
「お父様が頑張って丁寧なお仕事をされてるから、皆さんに信用されてこのような立派なお屋敷に住めるのですわね。ふふふっ、お父様ですね!」
とかなんとか父も褒められて育てられてますし、ユリエルの褒めにより使用人達まで自己肯定感と仕事にプライドを持つセルリア家一同です。
シルクだけ未だ照れる。
賢いからこそ6歳までに人格形成がある程度できちゃってた子なんだと思います。
ユリエル1人からなら「はいはい」で躱せるけど、仕事を教わる義父からの褒めには弱い。
そしてこの後は黒豹姿のクロモリも出て来て、お座りしながら『どやさ、褒めろ』くらいな顔をするので、パパとユリエルに褒められまくって御満悦したとか……。
定期的に書きたくなる、ほのぼのセルリア家