エイプリルフール? 〜リラン・アベイルのオマケ編〜
「ウチのところにユーリちゃんが来ないんだけれども!?」
「ええっと…そうですね…?」
気に食わないとアベイルに言えば、困惑した表情でウチの部屋を見渡す。
「王太子の部屋を謁見するには態度がなってないんじゃぁないかしらぁ?」
「あ、リラン様すみません…!!で、でもこの部屋は…?」
「逆エイプリルフールよ?」
「………逆?」
ウチの部屋には色鮮やかな…セクシーなのもキュートなのもどっちも好きな為に用意された色とりどりの衣装の山々。
「お…怒られますよ?」
「誰によ?ロイ?やぁねぇあのムッツリは。人前では見せずに一人で楽しみたいタイプよぉ〜。あんな可愛い美女を着せ替えして楽しみたいのは人間の本能じゃないかしら?」
「あああのっ!!聞かれたら大変なことに…!!」
「聞かれてないから言ってるんじゃないの」なんて言ったところで、無駄にオロオロとしてそしてそっと衣装を片付け始めるアベイル。
「まったくもぉ、シルクちゃんも来るかと思ってそっちの準備したのに……とりあえずさほど体型も変わんないんだから、アベイルそれ着なさいな」
片付けていた手を止めて、そのまま回れ右して出て行こうとするアベイルの前に素早く周り…………
*****
「すみません!!そのっ…やはり、にっ似合いません!!シルクさんならともかく、ボ、ボクではっ、その…!」
なんやかんやで着せられた白のかっちりとした騎士団の制服…に見せかけて、胸元が無駄にひし形に抜けてズボンもサイドが開けた衣装はシルクちゃんに着せたかったもの。
「ん〜…アンタもちゃんと鍛えてるだけあって、似合わない!!とは言い切れないあたりで50点!」
「どういう審査基準ですか!?」
「今年は仕方ないからこれで妥協にしとくわ」
「あ、ありがとうございます…???」
そそくさと衣装を脱ぐその肉体は、確かに筋肉がついていて日々鍛えているのだとわかってじっと見るが、取り上げた眼鏡のせいでこちらの視線にはあまり気がついていないらしい。
「…よくやってるわよ」
「すみません…えっと、何か言いましたか?」
人見知りで姉の後ろに隠れていた男の子が一人で隣国に行けばどうなるものかと思っていたが、ウチが用事で少し離れている間に、ちゃんと居場所を見つけて、そうして自分を磨こうと努力した結果なのだろう。
「ホンット良い子らに恵まれたものよねぇ、アベイル」
必要以上に丁寧に服を畳んでいるその背に声を掛ければ、照れ臭そうに笑ってから、
「はいっ」
彼から聞いたことのない元気な返事が耳に届いた。
「ってこれで終わらせないからね!!来年は絶対ウチに来なさいよぉぉぉユーリちゃぁぁぁぁんっ!!!」
「エイプリルフールってそういうのではないと思うのですが……?」
「ならユーリちゃん用に準備した衣装着なさいよ!!」
「むっ、無理です、その…えっと…ウエストとか…その…ユリエルさんはこんな細いじゃないですかぁ〜…」
「…あんたその手のサイズ感……しっかりユーリちゃんのサイズわかってそうね。ロイより酷いムッツリね」
「………!!!」
よくわからないけど、リラン・アベイル、ユリエルのいないところでの敗北(?)
以上にてエイプリルフールこぼれ話幕引きです。
ありがとうございました!!