エイプリルフール。 〜序章〜あとレイ編〜
「今年はわたくし、シルクを騙したりしませんわ」
「っていう嘘なのかな?」
苦笑いのシルクにキツイと自覚しているその瞳をキリリと向ける。
「あなた、人気は不動のものだからと侮ってはおりません?」
「いや、突然何言ってるの?」
そこまで言うとシルクの返しはほおっておいて、手作りマイクを手に持って、特にどこかわからないけどカメラ目線でお送りする!
「てなわけでして、第二回!!!チキチキ!!今年は昨年騙さなかった人の中から感想とかTwitterとかに好きだとか気になるとか言って貰えた回数をとても適当にわたくし本意のザックリな数値が上位な方をエイプリルフールしていこう企画!!」
「うん…ナルホド?それはどういう意味…?」
「ナルホドといえば、ザ・ワールド!!では行って来ますわ!!」
そして出来もしないトランプマジック代わりにカードを撒き散らかしてわたくしは出掛けました。
*****
「……既に詰みましたわ…」
「どうしたんだい?ユリエルくん」
プランが浮かばずこの際ノープランでその人を見ればなんとなく騙すネタが出るかと来てみたものの、麗しく微笑みながらも隙の見えないその顔に対しての騙し討ちが思いつかないと早々に諦める。
「かくかくしかじかで、レイさんが騙せる気がしませんの…」
「うん?カクカクしてシカジカなのかい?」
「カクシカですわ」
手元にカクカクしたポリゴン調の鹿を出してみるが「面白い芸術だね」と微笑まれて、ツッコミはない。
「いえ、少しは考えたのですわよ?でもコレだっていうものが見つかりませんで…」
「それは残念。例えばなんだい?」
「ベタですけどフェリス家にメイドとして侵入するとか考えましたが」
「うん、それはいいね」
返事とともに何故か麗しさが増したのか、キラキラと輝く効果が増えた気もするけど気のせいだと言葉を続ける。
「でもわたくしはもうレイさんのお兄様にお父様にも、なんならフェリス家はメイドの皆様全員に顔を知られてしまっているでしょう?レイさんを驚かせるなら紛れ込んで、ある時突然『わたくしがレイ様の専属メイドですわ〜』くらいのインパクトが欲しかったのに、残念ですわ。…だってレイさんは騙せそうにないからそんな突然現れて驚かせるくらいしか出来なさそうですし…プランが少なくて申し訳ありません…」
「ん?ユリエルくん諦めるにはちょっと早くないかい?」
そう言われてももうここまでネタバレした今、騙すなんて出来るわけないと苦笑いをして頭を下げる。
「では、わたくし次の方を騙さねばなりませんので…またの機会に」
そう言って立ち去った後に、レイさんが珍しくもショックを受けた顔で、
「嘘だろう…?いや…嘘でも……やってほしかった…」
そうやって呟いていた事は知らない事でございました。
「過去にシルクにもレイさんのお屋敷は止められておりましたし、やはりメイドネタは二番煎じのありきたりだものねぇ…」
ユリエルとレイのエイプリルフール
共に敗北。
今日のどこかの時間に更新はつづく!