散歩にゴーの日
「シルク様、不躾な質問とは存じますが…セルリア家でも守るに辺り、セルリア家の敷地を地図と視覚を擦り合わせさせる為にご教示頂けますか?」
ある朝、騎士として馬車の横で立っていればシルクくんが現れて挨拶をしたついでと言っては失礼だが護る身の上聞いてみる。
勿論、騎士団として地図ではそれなりに把握はしていたものの、実際に立てば思っていた以上の広さなのだと思えて聞いたのだが、ユリエルくん同様に私の丁寧語が未だ違和感があるのか苦笑いで答えられる。
「レイさん…そうですね。塀に家が囲まれてない場所まで含めるなら…町を抜けて森に入ったあたりから…後ろはあの山辺りまでになりますね。奥には王立騎士団とはではいきませんが、うちの騎士団の練習場もありますので、良ければ今度時間のある時に見て下さっても構いませんよ」
「有難う御座います」
微笑み返したところでセルリア家の馭者が少し席を外すと離れたので、可愛い後輩にコッソリと少しだけ私語と私情を挟ませて貰う。
「…しかしそんなに広いと、ユリエルくんなら迷ってしまいそうだね」
クスクスと笑って言えば、彼の笑顔が綺麗に固まる。
「え?本当なのかい?」
「…幼い頃ですよ?今はクロモリがいるので、基本帰れるようになって我が家は一安心してます」
「その言い方…一度じゃないんだね?」
「……ご想像にお任せいたします」
少し疲れたその表情に、自由なのは昔からなのだと思わず頬が綻ぶ。
「ちなみにどうやって見つかるんだい?」
「……少し暗くなってくると屋敷の光で帰って来ますね」
「ふっふっふっ、それもシルクの知恵ですけれどもね!」
何故か胸に手を当てて堂々と現れたユリエルくんに、シルクくんは額に手を当てて呆れた顔をしている。
「姉さんは…堂々と何故言えるの?」
「幼い頃、来たばかりのシルクを連れて出たら迷いまして」
思い出話を語り始めるのを笑顔で頷けば、興が乗ったとばかりにうんうんと頷きながら話を続けてくれる。
「ウキウキと楽しくていつもより遠くまで行ったら…まぁそりゃ迷いまして。あれこれ動くわたくしに 『お姉ちゃん、こういう時はじっとして、誰かに来てもらうのを待つか、屋敷の灯りが見えるようになってから動こう?』 って…『お姉ちゃん』ですわよ!?想像するだけで想像を絶する可愛さでしょう!?」
「やめて…姉さん、やめて…しかも今の話はそこじゃない…」
恥ずかしそうに言うシルクくんに「ちなみにその頃のユリエルも想像を絶する美少女でしたわ!」と、何故か自画自賛までもしている。
「ふふふっ、それは楽しそうだね」
「えぇ、楽しかったわ。レイさんも今度一緒にお散歩致しましょう?わたくしお散歩大好きですの」
「それは嬉しいお誘いだね。是非とも…宜しくお願い致します」
馭者さんが戻って来たと深々と頭を下げて、騎士としての役割に戻る。
新しい約束に心が躍る自覚をしながら、今日も何があってもそんな無邪気な君を守ろうと気持ちを引き締めて。
3月25日は「散歩にゴーの日」です。
ユリエルさん…クロモリがいてよかったね。
本編でも度々道がわかってないユリエルの原点ですね。シルクは場所や太陽で方位を把握するの早かったと思います。
「お姉ちゃんが散歩に行く時は僕も連れて行ってね」
「勿論よ!!」(甘えられてる!!可愛い!!)←違う
まぁ屋敷が広いので仕方ないし、我が家の敷地の中から出てないし迷子ってほど大袈裟なものではない。とか思ってるユリエル。(パパリンの心労をお察し下さい)