風呂敷の日
「ねぇアナ。風呂敷を作って欲しいの。」
「フロシキ…ですか?」
部屋で問い掛けをすれば、アナの不思議そうな顔に一つ頷く。
「うん。大きめの布でね。タオルや着替えを纏めてね。こうして手で持ってお風呂行って…ほら出た時に足元濡れるじゃない?そこに周りの布を敷いて、あとは中のタオルで身体を拭いて、服を着るの」
「それはバッグでは?」
「足元で広がらないからね」
「なるほど…」
手で大きさや説明をすればわかって貰えたようで、それでも少し考え込むようなアナに、この効率的で不可思議な文化は分かりにくいかと苦笑いをする。
「お風呂だけではなくてね、バッグに忍ばせておけば、買い物した時に包んで帰る事も出来るでしょう?」
「確かに旅行などの時にお嬢様がお使いになられるには便利かもしれませんね」
同意を得られて嬉しくて笑顔で頷き両手を広げて、
「ならこのくらいの布で、周りをほつれない様に作ってくれる?」
「畏まりました。…しかし、そうして美しく包まれるとタオルや服でもなんだか大切なものの様に思えますね」
「そう?」
なんてことのない事だと首を傾げれば、アナは珍しいくらい優しく笑って、
「そうして貰えたらきっと暖かくて、大事にして貰えてると物も感じるでしょう」
「ふふふ、そうだと嬉し…………」
話しながらガチリと固まると、アナの瞳が心配そうに揺れる。
「んあーーーーー!?!!そういう!?そういう感じに受け取っちゃう!!?」
「どうかされましたか?」
思わず両手を頭につけて叫ぶその脳裏には、
『ユリエル様、ユリエル様』と嬉しそうにする一人の人物。
「なんかアレかしら!?荒い麻の布で折ったくらい雑な風呂敷にした方が、自分で布を作る気になるかしら!?」
「なんのお話ですか?」
「………いいえなんでも」
スッと王妃教育スマイルを浮かべれば『全く誤魔化せてませんよ』と、アナの目が言ってる。
でも言いたくないし認めたくもないし、それでもなんとなーく魔力を自分で纏めて独り立ちする気配のない…そんな風呂敷包みをしてしまった人物を思い出し、改めて頭を抱えてしまう。
「すりこみってやつかしら?」
「さぁ解りかねます」
いや、風呂敷で包むとは自分のイメージであって、実際に包んだ訳ではないと悩むが、こればっかりは仕方がない。あのなんとも言えない辛い闇を抑えるためには風呂敷のイメージで包み込むが自分とってもベターなのだと改めて思うが……、
「そんな大層に思わなくていいのよ風呂敷…」
足に引いちゃうくらい万能性のあるもので、大層なものではないと説明したいが、なんとなく伝わる気がしない。したところでなんか変に取られても困るし、なんと言ったらいいものかと眉間に皺がよれば、アナが無言で頭皮マッサージを始めてくれる。うぅ悩んでた頭がきもちいい。
「まぁ、そのうち気が付いてくれるわよね」
ただ自分の持ってる魔力を使っただけで、それはシルクが風魔法でベッドを動かしてくれたり、アベイルさんが水魔法でお魚取ってくれたりしたのと変わらないことなのだと。
「そのうちそのうち…」
マッサージは充分効果的で、悩みもあっという間に楽観的にさせてくれるのでありました。
2月23日は「風呂敷の日」
名前こそ出てませんが、ある意味ユリエルの頭痛の種ですww
こぼれ話にもブクマ、評価ありがとうございます!!(*^_^*)嬉♡
いいねもやる気元気猪木です!!ありがとうございます!