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クリスマス



「メリィィクリスマス!!良い子の皆様へプレゼントですわ!!」


「成る程。私たちまでわざわざ呼び出された理由がわかったよ」



レイさんが麗しく微笑んで頷き納得してくれたのは、ここは生徒会室で生徒会のみんなや三年生で引退されたレイさんロットさんリランさん、そしてお友達だからとカフィに卒業したグラヴァルドさんまで呼び、ついでにベレト先生を呼んで、揃ったところでクラッカーを鳴らして言ったわたしの言葉。



「いや、すまんのぉ…誰かワシにもめりぃくりすます?を説明をしてくれんかぁ?」


困った様に頭に手を当てるグラヴァルドさんに大きく頷き、


「今日は一年間良い子にしていたこの所へサンタのオジ様がプレゼントをくださる日なんですわ。今日は来れないのでユリエルサンタですわ!」

「おぉそうかぁ!?そりゃめでたいのぉ!!」

「はい!愛でたいのですわ!」



あっという間に理解してくれるグラヴァルドさんに笑顔を返して、大きな紙袋からプレゼントを出していく。



「えぇっと…今年は前の時と違ってちゃんと趣向を凝らし増して…、アベイルさんはコレ、レイさんは…コレです。ロットさんは…えぇっと、コレで…、グラヴァルドさんは…あ、重いからシルクに運んで貰ったんだった。今向かってると思うので後でお渡ししますね!リランさんはコレ。カフィはコレで…、えぇっと先生にはこれ…、ミラは…コレとコレとコレとコレで、ロイさんはコレですわ!!」


「…いや…ユリエル。アタシだけ数多くない?」



それぞれにプレゼントを出して次から次に渡せば、ミラだけ両手いっぱいのプレゼント。



「女の子の物は兎に角可愛いの沢山で。悩みに悩んで絞ってそれよ。もうこれ以上絞れなくって…甘んじて受け取って頂戴…!」

「…まったく優柔不断なのかしら?仕方ないから受け取ってあげるわよ!……アリガト」



袋からはみ出したぬいぐるみを持ってるテレミラ可愛いっ♡などとキュンキュンしてるうちに「開けてもいいのかな?」と、レイさんに聞かれて頷けば、みんなその場で開け出した。



「ペン…だね。有難うユリエルくん」

「わたくしも昨年レイさんに頂いてとても嬉しかったので。ふふ、クロモリ柄のペン、いつも胸に忍ばせてますのよ」



ブレザーの内ポケットを見せれば、嬉しそうに微笑んでくれた。大切に扱ってるのわかってもらえたかしら。



「やだぁ〜可愛い〜♡」


リランさんの可愛らしい声に反応すれば、そこには小さなハート形のネックレスを首に当てたリランさんがニコニコと「似合う?似合う?」と聞いてくる。



「はいとても。このハート見た時にリランさんにお似合いになるだろうなぁって思いまして。沢山お待ちだとは思ったのですが、隅っこにでも置いて下さいな」

「つまりアレね、ユーリちゃんはウチに首ったけって事ね♡いいわよ、お嫁にいらっしゃぁい♡」

「ふふ、お気持ちだけありがとうございます」



ギュッと抱きしめられて頬にキッスをされて、同性だと思いつつもちょっと照れ臭いと思っていればロイさんに引き剥がされた。



「えっと…僕はハンカチ…ですか?なんだか感触が繊細な様な…?」

「メガネ拭きですわ。普通の生地より繊維が繊細ですから、綺麗に拭けると思いますわ」


ニコリと笑って言えば、ロットさんも後ろで頷く。



「せやでアベイル。それはカフィトルはんにも協力して貰ってウチで作った金も時間も掛かっとる最新鋭のメガネ拭きや…!姫さんの了承がなかなか出んと、滅茶苦茶苦労して作ったもんやから、使い勝手良ければ国に帰っても宣伝したってな!!!」

「という訳ですわ。ん・もう、ロットさんそれは内緒ですわよ?」

「はっはい!大切にします!ユリエルさん、ロットさん、それにカフィトルさん有難うございました」



アベイルさんも最初は慌てた様だったけど、最後は嬉しそうに笑ってくれたのでヨシとしました。



「えへへ〜、ゆりえるせんぱぁ〜い。僕は帽子とマフラーだぁ〜。もしかしてゆりえるせんぱいが作ってくれたのぉ?」


ロップイヤーを意識した大きな垂れ耳ウサギのついたピンクの帽子とマフラーのセットを早速つけて、可愛らしく笑ってくれるカフィにニッコリと笑みと返事を返す。



「いえ、作ったのはロットさんですわ」


「なんで!!?」

「カフィトルはん…店への依頼や。ついでに宣伝しとって」

「さっきからそればっかりぃ〜!」



ぷうっと頬を膨らませるカフィにロットさんは「これが姫さんからの依頼書や」とわたしの描いた絵を出せば、流石天才。画伯なわたくしのイラストから色々察したらしくて、「ゆりえるせんぱい♡わざわざ買ってくれてありがと〜♡ぼく、これ大切にするね♡」っと必要以上に可愛く言ってくれた。


…地味に腑に落ちない感は有りながらも、ノックの音に振り向けば、



「姉さん…これ…」


そう言って頼んでいた荷物を運ぶのに苦労と時間の掛かったシルクに御礼を言って、取りに向かったものの当然運べないのでグラヴァルドさんに来て貰えば、


「おお!トレーニング用品かぁ!!…んん?」


包みを開けて喜んで貰った後に疑問系な声が聞こえて、ニッコリと笑って


「可愛いでしょう」


わたしの声を合図に残りの包みを開ければ『鉄のダンベル』…の、横に小さな宝石をデコってみました!!!



「そのままではつまらないかなぁ〜って。あ、高くはないんですよ!?割れた宝石とかをお安〜く売ってもらって、それを私がデコりました!!」

「デコ…?」



グラヴァルドさんは不思議そうにオデコに手を当てるのを違う違うと首を振り、


「デコレーションですわ。ちょっと飾るだけのつもりが、なんだか…止められなくなりまして…」



改めて見れば、前世の若い子の携帯以上のデコりになっていて、『あれって重くないのかしら?むしろ程々にしないと持ちにくいのではないかしら?』とか考えてたけど、やり出すと止まらなかったのだと人生を跨いで知る事実。



「……改めて見るとやりすぎてますわね…。あの、後日普通のを!」

「いやぁ気にせんでくれぇ!ここの色の違う石はワシの名前…なんじゃろぉ?多分じゃがのぉ?」

「はい…」



あまり器用でない為に、デコなのに文字化けを起こしている事実にションボリして頷けば、



「おぉ!キラキラしててえぇ重りになっとるわぁ!!ワシもコレで更に鍛えられると言う物じゃぁ!!」

「えっと…使って下さいますか?」



申し訳なくて上目遣いで聞けば、大きく頷いてくれた!いい人!!!夕陽が窓から差し込んでダンベルがキラキラどころかギラギラしちゃってる!!やりすぎました!!反射が眩しいッ!


ついでに周りからの「グラヴァルドに似合わない」とか「どのツラ下げて使うのか…」とかコソコソしたその声はお耳を餃子なのですわ!!



「ユリエル様、ワタクシめのこちらは…」

「あ、下町の商店の割引券ですわ。ほら、教師に金品や物を差し上げて問題になっても困りますし、これくらいなら許されるかなぁって」

「一生の宝にします!!!」

「使って下さい」



ふとロイさんを見れば、まだ封を開けずに包みのまま眺めている。



「ロイさん?開けてくださらないの?」

「あ、そうだな。ユーリからのプレゼントはいつも予想外のものだからな。何が入って居るのか考えてたんだ」

「ふふ、そんなに楽しみにして下さってるなんて嬉しいですわ」


柔らかなその笑みに嬉しくなって言えば、丁寧に指先で封を開けていく。



「どうかな?とは思ったのですが…ロイさんに必要だと思ったので」

「ユーリが俺に必要だと思ったならそうなんだろう」



そうしてその袋に手を入れて出てきた物は、




『育 毛 剤』




ロイさんは固まった後に、わたしを見てから周りを勢いよく見れば、わたし以外が目線を逸らした。


「おいロット!俺は不味いのか!!?」

「オレな気しとった!!」


ロットさんの胸ぐらを掴んでロイさんが聞くので、わたしは慌てて両手と頭を振る。



「ハゲてませんわよ!?大丈夫です!フッサフッサですわ!」

「では何故!?」


その疑問にはキチンと答えて上げねばと、真面目な顔をして答える。



「将来が心配だからですわ。まだお若いのにお仕事も忙しく、睡眠不足の様ですし、しかも色素の薄い髪は薄くなれば誤魔化し辛い気もしますし、素敵な金の御髪は危険で御座いましょう?」


前世でも失礼ながら欧米の方がその…薄い方が多かった様なイメージもあって、これは優しさであり、ある意味では愛なのだと胸に秘めて頷き語る。



「グラヴァルドさんやロットさんのように立ち上がるほど太くて立派な髪質ならまだ安心感はありますが…」

「オレも巻き込むのやめたってぇ〜!」

「ガハハ!ワシは大丈夫ならえぇわぁ!!ロイサマよぉ!お嬢ぉの優しさじゃぁ!受け取れぇ!!」



風の魔力を使ったのか、この部屋で一番分厚い本がグラヴァルドさんに直撃したのは見なかったことにする。



「ユーリ、将来まで見て貰えるのは…そうか、うん。そうか、まぁ、うん」


何かを言い聞かせる様に育毛剤を見つめて呟くロイさんの肩にシルクがポンと肩を叩き…同じ育毛剤を見せつけた。



「仲間です」

「お前もか!!!!」

「だってシルクもサラサラで銀髪なんて色素薄いから心配で」



子供の頃から輝く髪色のこの子達に大きくなったら渡して上げようと思っていた事が、思ったより早くあげることになったが悔いは無い。頑張り屋さんは心配です!!



「う…っひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!あかん!耐えられへんかった!!ロイはん、シルっくんすんまへん!!!」



吹き出してしまったロットさんを二人は見下ろし、我に帰ったロットさんの血の気が引いたところで、



「そうだわ〜、ウチらの見といてロットのプレゼントはなんなのよ?」


リランさんに言われてロットさんも手元の封書を見る。



「いや〜オレのは封書で紙っぽいしな。ベレトセンセと一緒なんやと思っとったけど?」



ペリペリと封を開けるのを、最後だからかみんなで覗き込めば、出てきたものと同時にみんなが読み呟くのとわたしも胸に手を当てて堂々と言う。




「「「「ユリエル・セルリアがご希望の衣装をなんでも着る券」」」ですわ!!」




「ちょっと待って姉さん!?何コレ!?」

「おいユーリ!こんな物やってどうするんだ!?」

「ユ、ユリエルさん!?」

「ちょっとユーリちゃん!?ウチもこれ欲しいわ!」

「ユリエルくん…、私も切実に欲しい」

「お嬢ぉの服を選ぶんかぁ??そりゃ難しいのぉ?」

「ユリエルせんぱぁ〜い。ぼくとお揃い着よぅよぉ〜」

「ユリエル!アアアアンタ、ちゃんと考えてるのかしら!?」

「ユリエル様!ワタクシめはユリエル様からご希望の服なら紐だけでも何でも身につけますよ!!」



最後の人はクロモリでグシャリと潰して何故か怒濤の如く言われた言葉に首を傾げる。



「ペンニーネ商会から宣伝の必要があれば遠慮なく頼める為ですが?ロットさんにとっては一番それがいいのかなぁって。あ・そうね。ユリエル・セルリアがだと不味いのね…?かつらを被って身分は隠しますわ」



お店で試着して売ったら売上が倍増した事を考えて作ったのだけど、みんな「あ…そういう?」みたいな顔をしてる。



「何よりのプレゼントやね」


何故か複雑そうな顔のロットさんの手からピッとチケットが取られると、みんな次々に何かを書き込んでいく。



そしてロットさんの手元に戻った時には、



〝「身体の8…せめて7割程度は隠してあるデザイン方がいいと思います」「変なデザインはだめだよぉ」「ユーリちゃんの綺麗なボディーラインを余す事なく美しく見せる事」「同じく」「←駄目だ」「事前に衣装はセルリア家に確認」「お嬢ぉが着飾るんならワシも呼んでくれぇ」「ユリエルもちゃんと事前確認」〟



などなどとロットさんの手元に戻る頃には色々と書かれたチケットになっていて思わず笑ってしまった。



「おぉ…誓約のめっちゃついたチケットになったわ」

「ふふふっ、みんなからのプレゼントみたいだわ。ロットさん、改めてまた書いて来ますから、このチケットわたくしに下さらない?」



誰が書いたのか、何度か回って居たのかわからないけれど、なんだか可笑しな雰囲気が嬉しくて、ロットさんが呆れて頷いてくれたのでそのチケットはわたしの物にさせて貰った。



良い子たちにプレゼントを持ってきたけど、やっぱり良い子達なのだと改めて思えて…、素敵なプレゼントを貰えたと心が温まったクリスマスになりました。










★オマケ★

 


「はい、そうだわレイさんも」(育毛剤)

「………私もかい?」

「お父様がふさふさですから大丈夫とかは思いますが…髪質が違う気もしますし…、念の為なので小さな瓶で。気に入ったら紹介いたしますので遠慮なさらずに」

「…………有難う」

「うひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ!!!!!」





⭐︎セルリア家にて



クロモリのクリスマスプレゼントは2段ケーキで尻尾ピーーーン!!




「それで姉さん…。今日は朝からジュリはなんで僕に巻き付いてるの?」

「ジュリのクリスマスプレゼントですわ。おはようからおやすみまでのシルクにくっつきたいらしいので」

「僕の意志は!?」


「♪♪♪」




Merry Christmas!


ちょい若からのクリスマスプレゼント代わりのこぼれ話です。

普段よりボリューム増し増しでお届けいたしました!!


素敵なクリスマス、そして良い年末年始をお過ごし下さい!


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― 新着の感想 ―
[良い点] ユーリ、またぶっ込んできましたね! 育毛剤は予想だにしませんでした! 商店街割引券はそれなりの理由があれど、他の先生には選ばないような。ベレト先生への扱い!? ベレトのベルトならぬ紐にも…
[一言] メリークリスマス!!です!! あーー笑いました、素敵なプレゼント、私にも ありがとうございます! ロットが一番おいしいとこ持ってきましたね最後w ベレト先生とレイ様にもこのチケットあげてほし…
[一言] 将来の危険が予想される人達には「無くてもカッコいい」コーディネート等の資料を渡してあげた方が
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