透明美肌の日
「いはいよ…。まったく…何するのさ」
休日の隙間時間の恒例と化してお邪魔しているシルクの執務室で、横に居るシルクのホッペを引っ張ればそっとその手をよけられて不満気にこちらを見るシルクに、こちらこそ不満だと頬を膨らませる。
「なんで突然頬を抓られた上にその顔を向けられてるのか知りたい」
「腹立つわ〜っ」
「え?僕……本当に何かした?姉さん…ごめん。理由を教えてくれる?」
「この美白!!!」
「うん。理不尽にも程がある」
改めてそのホッペをぷにぷにと突くが、不満は口にしながらもされるがままのシルク。なんなの?良い子なの?
「姉さんだって綺麗な肌してるじゃないか」
理不尽にも程があるとか言いながらも、怒ることもなく柔らかく笑うシルクにダメージを受ける。良い子すぎませんかウチのシルクさん!!
「そうよユリエルはちゃんと美白の美貌の美人さんよ!」
「凄い自信だね」
「だけど、わたくしの肌はアナとメイド達の努力の賜物でわたくしだけの美貌では無いのよ。美人は生まれつきだけれども」
「凄い自信だね」
「だって美人でしょう?」
胸を張り言えば苦笑いと共に「そうだね」と返してくれる。このユリエルの美人美少女っぷりの前では下手な謙遜など要らないのです。
「そんな訳でわたしが美人なのはいいけど、シルクはそこまで手入れしていないでしょう?寝る前にマッサージやオイルしたり、あれやこれやとしてないのに……この綺麗な銀髪にも負けない程の美白!!しかもプリプリよ!?なんてお若い!!」
「同じ歳だよ」
そう言って興奮して近づき過ぎた為か、そっとプリプリの肌を触っていたその手を退けられ、一人分くらい距離を取られた。
「シルクはいいわねぇ。銀髪も素敵だし…知ってる?日差しの強い日は少しだけ虹色に輝くこともあったのよ?」
「そんなことはないでしょう?」
「ふふっ、幼い頃のまだ髪が柔らかかった頃だけなの」
「…本当に?それならなぜ教えてくれなかったの?」
そう言われたら確かにそうだと、少し考えてから思い当たることがあり、微笑が溢れる。
「わたくしだけの虹にしたかったのね。きっと誰も気が付いてないもの」
小さかったシルクがしゃがんで木漏れ日の隙間から日が当たる時にだけ見えた虹は宝物の様で。思わずその場にいたダラスに振り向き言おうと思ったが、「なんでもないわ」なんて笑って誤魔化したことを思い出して顔が綻ぶ。
「……そういえばこの前珍しいお菓子を頂いたんだ。部屋から…取ってくるね」
「あらまぁ、嬉しい。クロモリと待ってるわね」
思い返してる間に席を立ち扉に向かうシルクの嬉しい言葉にワクワクとして、準備されたティーポットへと向かうとクロモリもジュリも出てきた。
「シルクがお菓子をくれるのですって。楽しみね」
シュルリと巻きつくジュリに頬をスリスリされて、結局シルクの美白の秘密を聞き忘れたと、でも結局は天然の美白なのだろうと思えばまたも無意識に口を尖らせてお茶を入れたのでした。
「ホンット…あの人はずるい…っ」
美白どころか真っ赤な顔で廊下を歩くシルクは、室内でクロモリとジュリと話すわたしは知るすべはなかった。
10月28日は「透明美白」の日です。
銀髪で透き通る様な肌のシルクです。
多分幼い頃からお姉ちゃんの日傘に無理矢理しっかり入れられてたのも理由の一つです。
そしてお嬢様お坊っちゃまにセルフでお茶を淹れさせるメイド達。
呼ばれたら勿論即座に行くけど、ユリエルが自分でやれると胸を張ってるので、そう言った時はお嬢様の自主性に任せてます。(旦那様の許可済み)