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ハッピーサンシャインデー



「ユリエルさまって、温かい笑顔を向けて下さるわよね」


「あのキツイ目で口元だけで微笑まれた時は、私は息が止まったわよ」


「わたくし、誤ってぶつかってしまったのに、ユリエルさまの方が『ごめんなさい』なんてわたくしより先に謝ってくれたわ」


「ワタシは勇気を出して声掛けたけど、真顔で短い返事しかされなくて、思わず謝って逃げちゃったわ」



女の子達が集まって井戸端会議をすれば、今まで何度も出た話題になる。




そして結局出るのは…






「ユリエルサマの本当の顔はどちらなのかしら?」







*******






「あはーーー!!!シルクゥ〜、見て頂戴見て頂戴!!クロモリ小さくなって抱っこさせてくれてるのよ〜〜!!いいでしょ!!いいでしょ!?」



満面の笑みからフンスと鼻息荒くドヤ顔をする姉に、思わずこめかみに手を当て悩む。



「姉さん、もう少し顔に締まりを持って?」

「シルクの前ぐらいはいいじゃなぁ〜い」

「姫さん…ここ生徒会室やし、オレらもおるからね」

「うふふ〜っ、ロットさんも抱っこしたいですか?」

「いや…猫みたいやけど中身はクロモリはんやろ?遠慮しとくわ」

「クロモリくん、なんだか面倒くさそうな顔して無いかい?」

「レイさんの気のせいですわ!」



抱っこしたままクルクルと回る姉がグラリと揺らげば、ロイ様がそっとその身を支える。



「ユーリ、気をつけろ。そして落ち着け」

「そうですわ!わたくし一人の身体ではないのに…!!」

「ユーリ!!?」

「こんなに可愛いクロモリが腕の中におりますのよぉ〜!」



楽しそうに脇を持ち高い高いをすれば、クロモリはその腕をするりと抜け出し、彼女の頭を蹴ってミラさんの頭を蹴って、アベイルさんの頭へと乗る。



「クロモリ!どうしたの!?」



驚いた顔を彼女が向ければクロモリは人型へと変わり「エリュー しつこい」そう一言呟くと、彼女はショックを受けた様にその場へとへたり込む。

 


「アベイル大丈夫か〜?生きとるか〜?」

「は…はい、なんとか…」



頭の上で猫から突然人型になられたアベイルさんはグシャリと潰れたところで、クロモリが魔力となって消えた。



「ユーリちゃん、男は追わせて振りまわしてこそよ?クロモリちゃんもそんな追ってばかりでは逃げられちゃうわよぉ〜」

「うぅ…リランさんの言葉が身に染みますわ…いい女はリランさんみたいなことを言うのですわね…」

「まぁ無意識にかなり振り回してるけど、その辺が鈍いのがユーリちゃんの可愛いとこよね」


ちょん、とリランさんが彼女の鼻の上を突つけば、何を言われてるのかわからないけど、笑っとこう。みたいな顔で笑ってる。



「それでリランさん、追われる女になるにはどうしたら?」

「そうねぇ〜、そういうのを醸し出すのは、見えないところからのお洒落よね」

「見えないところ?」

「ユーリちゃんの下着の色は何色?」

「ちょっと待ってください?今日は…」


「ちょっと待って下さい!!!関係ないですよねぇ!!」



ブラウスの隙間から確認しようとする姉の行動に声を上げれば「確かに!!」と、姉も気がついたらしい。いや、どう考えてもおかしいから! そしてそっとレイさんがその隙間でも覗けそうな位置に移動したのは見間違いだと思いたい。



「もうリランさんてば、おちゃっぴいですわ」

「うふふふ、ユーリちゃんてば良い女が分かってないわねぇ。色気ある下着を付けてるだけで男は寄ってくるわよ」

「…? でもクロモリですよ?」

「クロモリちゃんも気に入らない下着もあるかもでしょう?」

「…たしかに。前に硬いから嫌だと言われましたわ」

「……本当にあったのね」


「姉さんは真面目な顔で何言ってるのかな…」



真剣に話し合う2人に、どこからどう言ったら良いのか悩んでいれば、僕の心配など他所に、姉は真面目な顔をして、



「でもユリエル17歳だし、まだくまさん柄とかでいいと思いますのよ?」

「…キャロット…」


ポツリと呟かれた言葉と共に、フラリとしてそのまま眠る姉を慌てて支えて「ミラさん…ありがとうございます」と礼を伝えれば、顔こそ呆れた様子で何も言わずに首を振られた。



「黒猫のクロモリにテンション上がりすぎていたね…」

「…いっぱい人いるから 平気と思った」


また魔力が集まりクロモリが現れれてちょっと不満げに告げられる。



「本当にユーリは…、ここだと楽しい時は楽しいと、まるで太陽の様に笑うな」

「ふふっロイ、アンタくっさい事言ってる自覚はある?」


楽しそうに笑うリランさんの声に、赤くなる顔をなかったフリをして「ふんっ」と息を吐いて手元の資料へと視線を移すロイ様にクスクスと気にした様子もなくリランさんが笑う。



年頃である女の子を例えこの場所だけとはいえ、人前で寝かすのに抵抗すら無くなってきてしまったと、少し眉尻を下げながら毛布をかければ、幸せそうに笑う顔が見える。



「姫さん寝てても楽しそうやなぁ」

「そうですね…まったく、姉はホントここに居ると令嬢とは思えないですね」

「でも私は笑ってるユリエルくんが好きだよ。ロイくんの言うように彼女の笑みで周りまで照らされて幸せになるね」

「えっと…そうですね。ボクも、ユリエルさんが楽しそうだとボクも楽しいです」


「…お言葉ですが、女性の寝顔をあまり見るものではございませんわ。…アタクシが眠らせてしまって言うのも申し訳ないのですが…」


背筋を伸ばしたミラさんに言われ、みんな頷き各自やることに戻っていく。



そう言ったミラさんの姉さんの毛布を掛け直すその口元は柔らかい。



それを見て本当にその生まれ持った髪色と違い、みんなが言うように太陽みたいな人だなと、僕の口元も綻んだ。






ユリエルの誕生日8月30日は

「ハッピーサンシャインデー」だそうです。


「太陽のような明るい笑顔の人のための日。この日に生まれた人は笑顔の素敵な人が多いことから生まれた記念日。また、明るい笑顔で過ごせばハッピーな気分になれる日」


検索を掛けたら、そんな素敵な事が書いてありました。



ちなみにユリエルのイメージを4番目に話してる「真顔で短い返事〜」の子は121話で、ダンスレッスン前に話し掛けて来た子かもしれません。


久々のJKとの会話にガチガチ緊張ユリエルさん。

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― 新着の感想 ―
[一言] >ユリエルサマの本当の顔はどちらなのかしら どっちも仮面であるな ドヤ顔とかそっちの方が素顔に近い
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