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世界犬の日




「シルク」

「お断りです」

「シルク」

「お断りです!」

「シルク」

「お断りだって言ってるよね!!?」

「シーールクッ?」

「何その言い方…なんでそんな変なポーズで…」

「発音的に『まーーきのっ』…みたいな。可愛くない?」

「マキノって誰、とか、その可愛い…とかそうじゃなくて…っ」

「しぃーーるくっ」

「繰り返さなくていいからっっ」

「ならコレ…」

「モジモジしても改めて渡されてもお断りはお断りです!!!」



詰まらない攻防の理由は、姉の持っている犬耳。

ロットさんとふざけて姉を騙すためにエイプリルフールに使ったやつだが、こんなにも引っ張られると思わなかった。



「姉さんがつければ良いでしょう!!」

「似合わないから嫌よ!!」

「僕だって似合わないよ!!」

「似合うから!!やって!!欲しいのよ!!!!!!!!!」

「姉さんそんな全力で言わないで!嬉しくないから!」



熱に押されて少しずつ下がれば壁まで迫られ、その黒い眦の意思の強そうな瞳で見上げながら両サイドを腕で挟まれた。なんなのこの熱さは!?



「く…クロモリとかに頼めば…」

「クロモリは猫耳だけ出す特技があるのに、わざわざこんな髪色に合わない耳をつけてどうするのよ!これは銀色のシルク専用で作ったものよ!」

「あれ、特技なの?」

「モエモエキューンさせる必殺技よ!!」

「意味がわからないのだけど、誰を殺すの??」

「わたくしよ!これが有ればシルクも使えるわ!」

「だったらその必殺技だとかはすぐさま封印した方がいいね!!」


そんな話をしている間に、そっと僕の頭へとカチューシャが近付くのを必死に阻止する。



「嫌だって言ってるよね!?」

「ちょっとだけだから…!!痛くしないし!優しくするから」

「ちょっと何言ってるかわからないなぁっ!」

「わたくしも力尽くでシルクに言うこと聞かせる姉にはなりたくないのよ?」

「相当既に力技で来てるよね!?」



そこまで言えば諦めたのか、悲しそうに眉を下げる姉には…騙されない。



「そんな顔すれば僕が言うこと聞くと思ってるのでしょう?」

「オホホホホホ…シルクに振られたからって、余裕のよっちゃんだもの!」

「……滅茶苦茶凹んでない?」



腰に手を当て高笑いをする姉だが、僕が問えば口を尖らして拗ねている。



「わたくし、ロイさんとリランさんにロットさんはどちらかと言えば猫だと思うのよ」

「うん?今度は何を言い出したの?」


宙を見て言い出した姉の前に手を振るが、独り言なのか何かに悩み出した様で返事はない。


「アベイルさんは…ミーアキャットかしら?」

「…意味がわからないのだけど、姉さん?」

「あとは…」

「姉さん…聞いてないやつだね」


世界に入ってしまった彼女を傍観する事にして、距離を取りブツブツと呟く様子を暫く見ていれば突然と、



「グラヴァルドさんはマスティフね!!世界最大のワンコ!!!よし!ちょっとグラヴァルドさんの所へ行ってくるわ!!」

「何も『よし!』じゃない!!!どうしてそういう結論になったの!!?」

「わたくしのなかのワンコ王決定戦がおこなわれてね」

「『おこなわれてね』っじゃなくて!」



僕の声に手元の例のものを見てから悩まし気に軽く握った拳を手に当て、


「だから…でもやっぱりこれじゃ色合いが合わないから、先にロットさんにお願いすべきね。ちょっとペンニーネ商会へ…!」

「わかった!!!わかったから!!僕がこれを付ければいいんでしょう!!?」

「わかってくれたのね!!!絵師さん呼んでいい!?」

「姉さんは何もわかってないね!!」


浮かびそうになる涙を必死に堪えて言えば「やっぱりだめか〜」なんて呟いてる。この歳でこんな事させられてるなんて外部の人間に知られたら、僕は生きていけないと思う。



「はいっ、ドーーーゾッ!」

「はぁぁいっ!」


自棄になって頭を下げればニッコニコでまた例のものを頭に付けられた。


「…僕は情けない」

「わたくしは情けのあるシルクに感謝しかないわ!!君カワゥイイねぇ〜!」

「…やめて…」


多分堪えられてない涙を目に浮かべながら姉に手を引かれてソファまで行けば、ニコニコと楽しそうに「はい、あーーん」とオヤツを出されたのを、もうここまで来ればプライドも何も無いと食べれば頭を撫でられた。…これは、完全にクロモリと同じ扱いだ…。



「姉さん…この変な耳、なんで好きなの?」


呆れて聞けば少し悩んだ素振りの後に楽しそうに笑って、


「なんとなく、シルクをめいいっぱい甘やかしていい気がするからね!」


なんて困るほどに可愛く笑われた。



「大丈夫、『お手』とか『おかわり』なんて言わないから」


クスクスと笑う彼女に悪戯心か反逆心なのかが沸き、その手を取って『ワン』と言ってみる。



「………」

「………なんか言ってよ…」



ふざけてみたものの、返事もなく呆然とこちらを見る彼女から目線を逸らしていても、やはり無言。



「コレ、もう外すからね!!?」

「………」

「姉さん?」



呆れて見れば、身体どころか焦点も固まっている。



「姉さん!!?」


慌てて大声を上げてその細い肩を揺すれば、「ハッッ」と大きく息を吸った事で、正に息を吹き返した様で。



「なんなの姉さん!?発作!?」

「シルクの必殺技を喰らってからの記憶が…!!」

「ふざけてるなら僕もう部屋に帰るからね!!」

「ふざけてないわ!!ワンダフル可愛いわ!ワンコだけに!」

「完全にふざけてるね!!」



僕の頭のソレを外してその頭につけ返せば「あはっ!わたくしでは似合わないでしょ?」なんて楽しそうに笑った。



「よく似合うよ」

「ふふっ、お世辞が上手ね!」



カチューシャじゃなくて『姉さんに似合うのは笑顔だよ』なんて言葉は流石にちょっと恥ずかしくて、もう一度「よく似合うよ」と言えば「ありがとう」と返された。




8月26日は「世界犬の日」です。


2日遅れました!!

27日に世界犬の日を知ったので…すみません…

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― 新着の感想 ―
[一言] シルクでは首輪とリード持ってきて散歩を強請るプレイはまだ早い
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