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バニーの日




「ユーリちゃぁ〜ん♡似合うと思ってぇ〜この服なんだけどぉ〜着てくれる?」

「え!プレゼントですか?嬉しい…開けても宜しいですか?」


リランさんに頷かれたので、ワクワクとしながら渡された紙袋からわたしがソレを出せば、まるでハイレグ水着のような服に網タイツ。極め付けはウサギさんのお耳のカチューシャ。



「着せるわけないだろうこんな物!!!」



ロイさんが赤い顔をして取り上げてリランさんへと叩き返す横でわたしも真面目な顔で頷く。


「リランさん…残念ながらウサギ担当はわたくしではなく、ミラですわ」

「巻き込こみゃないにぇろ!!!」

「にぇろ…」


動揺し過ぎてそのカミカミなミラも可愛い。カミカミラ…もしかしてつまりはそれって神カミラ!!?神の如く可愛いカミをかますミラね!!!!



「……どう言う心理で、そんな真顔でアタシのこと見てるのかわからないけど、巻き込まないで頂戴!着るわけないでしょう!そんな破廉恥な…」

「そうよね…ユーリちゃん用に作ったから、このままではミラちゃんではパカパカでスカスカで丸見えだものね。確かに破廉恥になってしまうわね」

「カパカパでスカスカ…」


思わず繰り返しリランさんと2人で申し訳ない気持ちでミラを見れば、魔力で髪を逆立てながら、

「喧嘩を売られてるのでしょうけど、2人とも身分が高過ぎて買うことさえ出来ないジレンマね…!!」

そう言いながら赤い目を更に赤くしてキレてる。これは話題を変えた方が良さそうだわ!!



「ミラは…もっとほら、可愛い方が似合いますもの。同じウサギちゃんでも、部屋着みたいなふわふわした素材の服に耳を付けたウサギちゃんにしたらどうかしら!?」

「あら、そーゆーのも可愛いわねぇ〜」



「売れる気配を感じたでーーーー!!!」



バーーーンッッッ!と突然扉が開けば、ロットさんが現れてもうメモとペンを持っている。



「どんなんや?その部屋着風のって」

「ロット…アナタどこから聞いてたのよ」

「今たまたま通りかかって姫さんのアイデアの気配がしてな!商売レーダーがピピンっとな!」

「髪の毛にでもビビッと来て立ち上がりましたか?」


どこかの妖怪的なレーダー的な物かと聞けば、とりあえず「せやで!」と乗ってくれた。空気読む力は商売人には欠かせない素晴らしい能力だわ!!



「ロット、いきなり入って行ったと思ったら…みんなごめんね。お邪魔させて頂くよ」

「レイさんこんにちは、お茶をお出ししますのでお待ち下さいね」



微笑み言えばレイさんは首を振り「気にしないで」と麗しく笑った。


「それにロット。君の髪は直毛で元々ツンツンと立っているじゃないか。それとももしかしてユリエルくんの声で他の場所が…」



ロットさんは至近距離で躊躇わずにメモ帳を投げ付けるが、レイさんは爽やかな笑顔のままそれをキャッチするとロットさんが吊り目を更に釣り上げながら胸ぐらを掴み「お前はだぁっとれ!!」と、ガチギレしてるのに対して言われたレイさんはニコニコとしてる。年頃の親友さんのコミュニケーションはなんだか激しいわねぇ〜



「しかしミラちゃんの服のイメージはわかったわ!ちょっとそれのデザイン詰めていきましょうか!」

「はい!!」

「あ、それはオレも混ぜたって」

「ちょっとアタクシは何も了承してないのですが!!?」


「お前ら喧しいな…生徒会の仕事もまだあるんだがな」


リランさんとわたし、そしてロットさんで話を進めようとすれば、ミラに止められ、それを見て居たロイさんが呆れた様に呟いた。



「あらごめんねロイ。なら…コッソリこのバニーちゃんあげるから、機会があればユーリちゃんに着てもらったらどうかしら」

「………………いらん」

「アンタ…何気に葛藤の間がわかりやすいわね。とにかくウチが着せて怒るならロイが着せたらいいじゃない?それともユーリちゃんにピッタリサイズのコレ、ウチが持ってていいのかしらぁ〜」

「………そう言うなら仕方ない預かろう」

「あらロイってば…」



「なんの話をしてるのですか?」


ロイさんのところへ行ってなかなか戻ってこないリランさんに声を掛ければ、ニッコリと笑って、

「ロイがバニーちゃん欲しいって♡」と爆弾発言を言われて驚けば、ミラが無意識に少し嫌そうな顔でロイさんを見た。



「俺は言ってない!!!!」

「いいじゃない。ペンニーネで作らせた一点物よ?」

「何や知らんがまたウチの店巻き込んどるんかい!!!」



ロイさんが赤い顔をしてべチンと紙袋をリランさんにまたも投げつければ、巻き込まれ発言にロットさんも堪らずツッコむ。



ギャアギャアと騒ぐ3人の横で、その落ちた紙袋を拾ってパタパタと埃を払い一度中身を軽く確認した様子のレイさんがわたしへと渡してくれる。



「よくわからないけれど、折角の衣装の様だしユリエルくんが貰っておけばいいんじゃないかな?」

「いえ、でも流石にわたくしがコレを着るわけには…」


困ってそう言葉を返せば、レイさんは少しだけ切なそうな顔をして、



「共に働いたペンニーネの従業員の方々の仕事を着もせずに破棄するのは心が痛むね…」

「確かに…そうですわね」



そう言われて、ペンニーネで共に店の中を駆け回ったイェンさんを始め、皆さんの顔が頭を過ぎる。



「着たら…とは言えないけれど、せめて今、身体に当てて見たらどうかな?」

「たしかに…せめてそれくらい、ペンニーネの皆様の努力をわたくしが無下にする訳には…!」


優しく微笑むレイさんへと頷いて、袋からバニーちゃんを出して身体に当てた瞬間、凄い勢いでわたしの手からバニーちゃんが消えた。



「うちの姉に何を着せようとしてるんですか!?主導者は誰ですか!!?」



いつの間にか職員室へのお使いから帰宅したシルクがわたしから衣装を奪い取り、それをソファに捨てながらわたしの前に立ち問いただせば、レイさんがロイさんを指差し、ロイさんはリランさんを指差し、リランさんはロットさんを指差していた。



「なんでやねん!!!!」



「そうですか…やはりリランさんですか…」

「シルっくん…!!オレを信じてくれるんはシルっくんだけや〜」


リランさんに冷たい目を向けて言うシルクに、指を組み涙を浮かべて感謝するロットさん。そして紙袋からそっとバニーちゃんの耳を出してわたしに付けるレイさん。



「な・に・を!してるんですか!!」


シルクはそのレイさんの手を払い、可愛い耳もソファへと投げる。


「いや、可愛い髪飾りだったから、つい」

「つい…じゃないですよっ!」

「いやぁ〜…なんとなくユリエルくんがコレを持って帰宅して、確かに着ないまま捨てるのは勿体無いと着て、あまりに似合うから弟であるシルクくんには『ちょっと見て頂戴!』とかいう美味しい展開により、結果的にシルクくんだけが可愛いユリエルくん独り占め…なんて事にならないかと」


爽やかに微笑みながら言うその言葉に、


「……なんだか…たしかに…」

「なんだかわたくし確かにやりそうですわね!!」


シルクも難しい顔で考えてる横で、わたしもうんうんと思わず同意をすれば、一拍置いてからシルクに色んなものがみんなから投げられた。



「ちょ…!待って下さい!!なんでこの流れで僕が責められるんですか!!?」



「喧しい!」

「シルクちゃん、これは甘んじて受けるべきだわ!」

「なんや悪いけど腹立つわ」

「シルクくんこれは仕方ないことだね」



慌てるシルクに、みんな口々に文句を言ってるっぽい。一気に言い過ぎてギャーギャーとしか聞こえないけど。

しかしみんな新しい衣装に興味津々…やはりこの国にはない文化的な服だからね…。



「ハッ!! わたくし、ナイスなアイデアを思いつきましたわ!!クジで決めましょう!!これを着る人!!」


「………待って。ユーリちゃん、今、()()()って言った?」

「あ、いや勿論男性なら衣装はアレンジしますわ!」

「…姫さんが怖い事言い出しおったで…」



青い顔でそっと下がろうとする協力者のロットさんの後ろに人型のクロモリが現れてバックハグする。



「だって皆さまお顔が美しいのですし、誰が着てもお似合いになると思いますの!」



うんうんと満面の笑みで頷き、ロットさんに「ね?」と同意を求めれば「せやな!」と同意をしてくれた。小さな声で「捕まってもうたし、死ならもろともや!!」とか悪い顔で言ってるけど、気にしない事にする。



そっと扉を開けて出て行こうとするロイさんとシルクに、丁度入ってきたアベイルさんとベレト先生がぶつかった。


「えっと、すみません…」

「そこを退け!!」


「逃しませんわ」



アベイルさんを退けて消えようとするロイさんをシュルリとジュリが巻きつき動きを止める。


そして一人で消えようとするシルクは「お前だけ逃すか」と、ロイさんの拘束魔法によってシルクも部屋から逃げ出せなくなる。


「えっと…?」


状況に理解が追いつかず疑問系のアベイルさんに、なんだかわたしの闇のオーラでも感じたのか、既にハァハァと荒い息遣いで身悶える先生。




「ジャーーーン!!アミダクジ出来ましたわ!!」



どやさっ!と胸を張り言えば、ミラが真っ青な顔して「数的にアタシの名前も入ってる…!!?」とか嘆いてる。むしろ何故入って居ないと思ったのかしら?


「ロットさん!勿論衣装代はお支払いしますのでご協力お願いいたしますわ!」

「ほんなら、オレの名前消してくれる?」

「丁重にお断りいたしますわ。では、アミダスターートォ♡」



クロモリに捕まったままシクシクと嘆くロットさんの横で、某有名アミダクジなお婆様の音楽を口ずさみながら、ノートに書いたアミダクジをグングンと進めて、ゴールに辿り着く。



「さぁ…あの衣装を着るのは誰かしら??」



その指先はみんなの注目を浴び、誰かのゴクリと唾を飲み込む音まで聞こえてくる。



「ドゥルルルルルルルルルル…ジャン!!!!」



セルフドラムロールの音と共に折り曲げてあったノートの端を開けば、




「「「………ベレト・カルージュ…」」」


その何人かの被った声に、安堵や緊張や、疑問や色んなものが混じるのを感じ…




「と、ゆー訳で、ベレト先生以外の方全員に着て頂きますわ!!!」



「「「「「なんでだよ!!!!!」」」」」


満面の笑みで効かせた機転なのに、ほぼ全員に突っ込まれた。



「だってわたくし嫌な予感しかしないんだものっ!」

「なら姉さんなんで最初から名前を書いちゃったのさ!?」

「11分の1よ!?当たるなんて思わないじゃない!!?ハブとか虐め、駄目、絶対!」

「…ユリエルくんちょっと見せてくれるかい?」



レイさんに言われて不正は無かったと涙ながらに見せれば、そこには『ロイ・リラン・シルク・アベイル・カフィ・ロット・クロモリ・ミラ・ベレト・レイ・ユリエル』と、ちゃんと書かれている。


「この場に居ないカフィくんは?」

「あの可愛いふわふわのピンク頭に似合いそうでつい無意識の犯行ですわ…」

「ふむ…ベレト先生以外という事は…、ユリエルくんとミラくんも?」

「そうなりますわね」

「そうか…なら、私はいいよ。それでこそゲームだからね」

「本当ですの!!?」



「ちょっとロット先輩!?止めないのですの!?」

ツッコミ担当のロットさん待ちだったのか、ミラさんがロットさんを見れば、クロモリの大きな手で変顔をさせられて聞いていなかった様子だった。クロモリはロットさんも大好きなのよね。楽しそうだわ!



「オイ、俺までも…」

「みんなもまさかあの衣装をベレト先生に着せて、ユリエルくんの前に出そうと思わないはずだよ。まさかこのゲームのルールをひっくり返せばつまりはそういう事になるんでしょう?」

「レイさんが神様に見えますわ!」


「うぐぅ…」と否定しようとしたロイさんの声がくぐもり消える。



「あの…ワタクシめはまだ話が見えないのですが?」

「先生はクジで当たり引いたので免除ですの!」

「当たりですか?」

「そう!当たりですわ」


そこは当たりにして置こうと真顔で言えば、胸を押さえてなんだか喜んでくれて居るようなので、それ以上は触れない事にする。



「ではロットさん詳しくはまた後日!」


なんか死んだ目で頷かれたけど気にしない。




そしてシルクが呟くように、

「誰得なんだ…コレ…」と言えば、

「リランはんと、レイやな…アイツら何着ても別段気にせんし、レイはアレやし、リランはんはシルっくん含めて大勝ちやで」


その脱力した声に、


「……嫌なこと言わないで下さい…」


その泣きそうなシルクの声は、お姉ちゃんは聞こえなかった事にするのでした!






8月23日はバニーの日。


8(バ)2(ニー)3(さん)だから、バニーの日。



結果誰も着てないのですがね!!


軽い気持ちでノンプロットで書き始め、登場人物が増えて増えて、結果普段の文字数の2.5倍⭐︎みたいな!!でも誰もバニってないよ!!!




バニったその姿は、今アナタの心の中に…。







そして今更ながらに、もしや世間的には8月21日が(8バ 2ニ 1イ)の日らしいとか知ったけど、バニーの日はあればあるだけ幸せだからそれでいいんじゃないかしら??


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― 新着の感想 ―
[良い点] あははっ、ドタバタで最高! [気になる点] 使われなかったバニー…。見たかった…。 [一言] シリアスな展開も良いですが、皆がワイワイしているのはとても楽しいです!
[一言] グラヴァルトハブってるじゃないか >ハブとか虐め、駄目、絶対! と言ってるのに 肉体美自慢のバニーさんのチャンスだったのに 地球ですら1960年代生まれなのにこの世界は進んでるね
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