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クリスマス



「メリークリスマス!!良い子の皆様にプレゼントですわ!!」


生徒会室でクラッカーを鳴らし、クッキーを配る。


「姉さん…最近料理長捕まえて何してるのかと思ったらこれ?」

「ふっふっふ。家族にもバレずに準備致しましたのよ!」

「厨房の入り口に『シルク立ち入り禁止』って貼ったらある意味バレバレなんだけど…」


そんなシルクはとりあえず無視して次々と配る。


「はい!レイさん!今年もお疲れ様でした〜」

「ありがとうユリエルくん。食べてもいいのかな?」

「勿論ですわ!わたくしの手作りで、うちの料理長御墨付きですのよ?あ、焦げてお墨付きなわけでは御座いませんわ!」

「おっ、姫さん!上手いこと言うな!」

「美味いのは味もですよ!」


わたしがドヤ顔して返事をしてる間に、レイさんが一枚取り出しパクリと食べると、

「ジンジャー味?」と、少し驚いてから「美味しいよ」そう微笑んでくれる。


「ジンジャークッキーですわ。寒いこの時期身体を温めてくれるから、是非召し上がって下さいな」


「ほんで姫さん。その赤い帽子と、口元の髭?綿?ってなんや?」

「サンタさんですわ」

「どちらさん?」

「良い子にプレゼントをくれるおじいさんですわ」

「またハロウィンに続きどっかの知識入れてきたんか?」

「そんなものです。本当なら孤児院へ行って子供達にプレゼントもしたかったのですが、用意する時間が無くて…、ホント…来年は子供達の笑顔が見たいですね。それで無くてもなかなか会いにいけなくて。でもペンニーネ商会のお陰で支援出来て、最近お手紙貰ったりするのですよ!凄く凄く可愛らしい字で。ありがとうございます、ロットさんのおかげですわ」


御礼を告げればロットさんはパタパタと手を振り

「そら姫さんの功績や。ウチは利益貰っとるだけで御礼を言われる筋合いは無いわ」

と苦笑いを返された。


「ユリエルくんは充実した一年だったみたいだね。」


「えぇ。初めての学園生活も始まりましたし、お友達も出来て、こうしてレイさんや皆さんとも知り合えて、色々な思い出を作らせて頂きましたわ。ありがとうございます」


「こちらこそありがとう。私達へもユリエルサンタは沢山の幸せを運んでくれたよ」


微笑むその顔にキョトンとすれば手を取られ、


「ハイ、私からのクリスマスプレゼント」と手の上にリボンのついた小さくて少し長い箱を置かれた。


「レイ!なんでクリスマス知っとったん?」


驚くロットさんとシルクにレイさんは笑って、


「ユリエルくんこの前『クリスマス〜』って作業しながら歌ってて、クリスマスって何か調べたら、やはり西の方のイベントが見つかってね。ユリエルくんお得意のサプライズにサプライズ返しだよ」


なんてウインクを返された。


「なんてスマートですのレイさん!?モテますわ…怖いほどモテる予感しかないです!!」

「まぁレイはそんなんせんでもモテとるけどな」

「そうでした!!!…開けても?」


どうぞと麗しく微笑まれ、リボンをとけばそれをまたスマートに受け取り持ってくれる。


「まぁ…可愛らしいペンですわ!」


見た目黒いペンだけれど、そこへ小さく猫の絵が刻まれている。


「ユリエルくん、前にアベイルくんにクロモリくんの膝掛け貰って喜んでいたし、可愛らしいもの好きな様だったからね。これなら普段使い出来そうだしどうかな?」

「お恥ずかしいですがその通りで嬉しいです!!大切にさせ頂きます!あらあら、お返しはどうしましょう!?」


箱ごと握りしめて聞けば「じゃぁまたクッキーをくれるかい?」と、欲なく微笑む。

「喜んで」と返せば、更に艶やかに微笑まれた。


「く…!眩しい!レイさんの笑顔は100万ボルトですわ…!」

「ボルトってなんや?」

「めっちゃ眩しいって事ですわ」

「ようわからんけど、わかったことにしとくわ」

「ありがとうございます」



「あ…ホントですね。凄く美味しい」



下らない掛け合いの間に思わず漏れたアベイルさんの声に振り向けば、

「あ、これ可愛いですね。この…星…?」

「…ジンジャーマン。人型ですわ…」

「え!?あっ、すみません…!こちらのえっと…ウナギ?」

「も…もみの木です…」


ぐうっと芸術的センスのなさを無垢なアベイルさんにグサグサと刺される。


「姉さん、美術センスだけは壊滅的だものね…」

「まだまだこれからが成長期ですわ…!!」

「8歳の頃、僕の似顔絵描いてくれたの見て泣いてごめんね?」

「一番のトラウマを何故今ッッッ!!」


残ったクッキーの入った袋を持って、生徒会室の扉から飛び出し、


「シルクなんて、大っキラ…大っ…大好きだけど、今だけは大嫌いですわーーーーー!!!お姉ちゃんごめんねって可愛く言うまで許して上げないのだから!!」


バターーーーンと飛び出した。





*****




「いや、シルっくん、追いかけんでええの?」


「大丈夫。姉のことです。多分廊下に出たはいいけど、走って行ったら怒られるし、その辺のんびり歩いてるうちに鞄も持ってないことに気付いて帰ってきますよ。さ、今のうちに明日の終業式の準備進めましょう」


「流石やなぁシルっくん。ほんでアベイルは、オロオロするなら追ってええで。その辺におるらしいから」





******



「あの…ユリエルさん」


「生徒会室に鞄忘れましたわ…」

近くの空き教室で椅子に座ってクッキーを食べていると、アベイルさんが来て遠慮がちに前の椅子にこちらを向いて座った。


「えっと…鞄を取ってきますか?」

「もう少しで明日の準備も終わるのでしょう?アベイルさんは大丈夫?」

「あ、ボクの仕事は終わってますから…」

「やはり優秀ですのね。お疲れ様でした。わたくし邪魔してばかりな気がしてきたわ」


しょんぼりとクッキーを齧っていると、「そ、そんな事ないですっ」と、珍しく少し大きな声で否定してくれた。


「ユリエルさんのお陰で生徒会は円滑に回ってますし、何よりみんな楽しく出来てます」

「でも仕事増やしてるのは事実でしょう?ほら、掃除の会とか」

「その増えた分の仕事はユリエルさんやシルクさん、ロイさんが負って十分お釣りがきます!」


なんだか必死なその声に可笑しくなって思わず笑ってしまう。


「ありがとう、アベイルさん。それよりアベイルさんが生徒会で働くことになった原因もわたしなんですよ?」


「あっ、そうでしたっ」


「あはっ、一番増やされた人にフォローされたなら大丈夫かしら?」


クスクスと笑えば、眉を下げながらも笑って、


「ユリエルさんに言われて生徒会に手伝いで入りましたけど…、えっと大変だけど、楽しいです。一年で…ボクはその…人見知りで…あんな機会でもなければ、きっと皆さんと、こうやってお話しすることもなかったですから…あの、ありがとうございます」


「頑張り屋さんのアベイルさんに、クッキープレゼントですわ」


ぺこりと下げられた目の前に余っていたクッキーの袋を差し出す。


「こちらこそありがとうアベイルさん。アベイルさんと入学式でお会い出来て、こうしてお友達になれて嬉しいわ。来年も宜しくね」


微笑めば、「こちらこそ…お願いします」と、頬を染めた。


「さて、そろそろ生徒会に行きますか!シルクは反省したかしら?」

「…えっと。そうですね」

「ふふっ、シルクは全然気にしてなかったでしょ?すぐに声もかけずに追ってこなかった時は、あの子気にしてない時だもの。どうせ帰ってくるって思われてるのも癪だけど、まぁわたくしが大人になって許してあげるのですわ!お姉ちゃんだもの」


そう言って「内緒よ」と人差し指を口に当てて笑って生徒会室に入る。


「さぁ!シルク反省したかしら!?」

「ハイハイ僕が悪かったよオネーチャン」

「思った以上の反省ゼロ!!キーってなるわっ!」

「じゃ、終わったから帰ろうか。馬車待たせてるし。レイさん、ロットさん、アベイルさん。ではまた明日。お疲れ様でした」

「あぁっもうっ!ではわたくしも帰らせて頂きますわ。レイさんありがとうございました。皆様また明日お会いいたしましょう。お疲れ様でした」







そう微笑み出て行った扉が閉まる前に、

「可愛くなかったからもう一度リベンジよ!?許されないわ?」と弟に詰め寄る声が聞こえた。


「アベイル?何難しい顔しとるん?」

「…大人の定義について考えてます…」

「また姫さんがなんか言ったんか。あれやな、姫さんはばーちゃんみたいな事言う時もあるけど、なんや物凄い子供っぽかったり振り幅が凄いな」


うひゃひゃと笑うロットに、2人は頷き

「さぁ、私達も帰ろうか。とりあえず明日の終業式、無事に終わらせて、楽しい冬休みを送ろう。2人とも体調に気を付けて」


「へいへい」と軽い返事と共に、みんな荷物を持って部屋は閉じられた。



そんなクリスマス。



翌々日にはユリエルが高熱だして、冬休みを過ごす事になるのは、また別のお話。

第106話 『早く誰かアレとかアレとか…うん、とにかくまずは掃除機と洗濯機と食洗機開発して欲しい』

と、第107話 『冬休みですよ。冬休みって寒いね。冬だからね』


の間の話です。本編の間に番外編として入れるつもりが、本編パーティ中で入れ難いのもあって、こちらへ。


便利なこぼれ話!!



メリーーークリスマスですっっ!!!

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