UFOキャッチャーの日
色々とわかる方にしかわからないネタの入ったカオスな話になりました…。
わけわからんと思ったらそっと閉じてくださいませ…
気がつけばなんとなく愉快な音楽が流れ、ガチャガチャと騒がしい中佇んでいた。
「あ、ゲームセンター…」
懐かしくも不思議な感覚に、頭が痛くなってくる。
近場の両替機は黒光りしていて映り込むはユリエルの顔。
そうだ…前世で子供がカードゲームだなんだとよく来ていた事を思い出し…ついでにここまでの騒音に頭がいたくなっていたことも思い出す。
「嫌いじゃないけど、大きなゲームセンターは疲れちゃうのよね…終わりが見えないし…」
コインゲームで300枚とか当たった時の子供の喜びと、親の絶望感は比例すると思う。
そんな事を思いながら目的もなくふらふらと歩けば、とあるUFOキャッチャーが目に入る。
「え!?ロイさん!?シルクに、レイさん、ベレト先生、それにあっちにはロットさん…埋まってるのは髪が青いし…アベイルさんね!あっ、ヒナタさんも居るわ」
色とりどりのその可愛らしいぬいぐるみの景品に笑いが漏れる。
「人気の乙女ゲームだったのね。ふふっ、可愛い」
クスクスと笑って、ふと気がついた。
「ユリエル…居ないのね」
まぁ悪役令嬢だし仕方ないのかと思い通り過ぎて他の台を見れば、等身大に近いヒナタさんの制服姿の…あれは何かしら?枕カバー?
「あらやだ可愛らしい」
裏側にも絵があるらしいけど見えないし、何故だか少し割高のようなその台には、
『ユリエル・セルリア 当店取り扱い無し』
「んん??これにはユリエルもあるの?どんな柄だったのかしら?まぁつまりヒナタさんの方が沢山作られてるのよねぇ〜」
淡い希望と当たり前の現実に苦笑いを浮かべ、ゲームセンターを出れば、青い看板のアニメのお店。
娘がよく行っていたな〜と、しかし別行動を取られて、私も本が好きだし行こうとすれば、娘にも『書店の方が数は多いから』と言われ、まぁそれもその通りと納得して殆ど入った事が無かったと思い出し、なんとなくふらりと寄ってみる。
「なるほど。あの子の趣味の本はここで買ってたのね」
見れば単行本も限定盤や、あとは個人で描いた薄い本が沢山並び、別にどんなジャンルも拒否感も無いのでそのまま横を通り過ぎていく。
「…ん??」
なんか既視感のあるものが目に入り、通り過ぎた場所へと戻ると、そこはグッズコーナー。
見れば先程のヒナタさんの枕カバーが置いてあり、此処では両面が見られるようになっていて、思わず覗けば…
「ヒ、ヒナタさん、パンツ見えちゃってるけど!?!?」
何故かうつ伏せから顔を見上げるようにパンツの見えたヒナタさん。
同級生のこんな姿は恥ずかしくて、思わず顔が熱くなる。
そして…思い出す。
『ユリエル・セルリア 取り扱い無し』
「ちょっ!?ヒナタさんのこれもゲームセンターなんて、子供の行くお店で扱うのはだめじゃぁ無いかしらぁ!?」
慌てて周りを見ると、その在庫の箱は売れた様子も有り、小さく丸められた枕カバーが残り数個。
……そしてその箱の奥に一つ隠れる様に転がった物が目に入る。
嫌〜な予感と共に、恐る恐る手を出せば…くるりと小さく巻かれた枕カバーの周りには、中身の見本に小さく印刷された紙があり、そこにはユリエルの制服姿。
そして回して角度を変えれば裏の見本の…どんな状況なのか、その制服のボタンを全部外して、スカートを何故か膝まで下ろし、額に手を当てアンニュイな顔でセクスィ〜な下着が丸見えユリエル。
「……こっ、こんなこと、わたしでもユリエルでもしやしませんわ!!」
思わず奥へとまた戻すと、動揺の余りか個人の本のコーナーへとぶつかってしまい戸棚からバラバラと撒いてしまう。
「あらやだっ!ごめんなさいね」
特に店員さんも居ないけど思わず謝り片付けようとすれば、
『ユリヒナ』『ヒナユリ』『ユリ闇』『ほのぼの』
表紙は可愛らしいものから、ユリエルとヒナタさんの顔の近〜い感じに、ちょっと存じ上げない方々や、明らかにゲームにすら出てこないであろう感じの男性とセクシーを通り過ぎたユリエルの姿まで……あ。レイロト。やっぱり。…てゆーかリカべレって何??小説らしいから、表紙絵もなくてわからないわ。
「って、Noooooooo!!しないもの!ユリエルは絶対こんな破廉恥なことしないもの!」
改めてそんなの自分姿の描かれた表紙にパニックを起こし、慌ててお店を出てゲームセンターへと戻れば、UFOキャッチャーに『入荷しました』と、先程まで無かった文字。
思わず覗けば、寄せて上げてるユリエルに、スチルみたいな壁掛けには、全身ずぶ濡れで、下着が透けたユリエルに、何故か置いてあるパソコンからはロイさんやシルクに迫るエロエロ風なイラスト……サイト名は…ピイクイ…ヴ…って読むのかしら??
兎に角ッ!至る所のわたし景品が、なんだかセクシーバキューンな状態に!!
ユリエルは縛ったロイさんに扇子で顎クイなんて絶対しないもの!不敬罪よ?!断罪どころの騒ぎじゃ無いわ! てゆーかこっちのフィギュアのユリエルは逆になんで縛られてるの!?確かに悪役令嬢だけどそんなシーンは多分なかったのでは無くて!?
気が付けば何故だか先程まで無かった枕カバーまでも現れて、更に増えた自分の姿の物たちに囲まれ、それがわたしを囲み少しづつ近づいてくる。数もいっぱいに…わたくしもいっぱいいっぱい……はっ、はっ、はっ、
「破廉恥ですわ!!!!」
「おはようございますお嬢様」
大汗かいて飛び起きれば、アナにシレッと挨拶をされた。
「おはようアナ。なんだか嫌な夢を見たわ…」
「破廉恥な夢ですか?」
「いや、わたしじゃないけど、なんなのかしら…あれは…夢?」
「夢でしょう」
当たり前の言葉と濡れタオルを渡されて思わず顔を拭く。
「わたくし美人だけれども、そちらの需要は無いと願いたいわ」
「今日も自己肯定感が高いようでなによりですお嬢様」
気分を切り替え起き上がり、今日は珍しくすぐ横にアナが制服を準備してくれていたものを、気分転換とさっさと目を覚まそうなんて思いを込めて早々と身につける。
しかしスカートを上げてる途中で、窓の外を大きな鳥が飛んだのが目に入り、思わず目を向けると脚が絡まってそのままベットへと倒れ込み、妙に朝から疲れたとオデコに手を当てれば…
その光景が夢で見たあの枕カバーを思い出して慌てて起き上がる。
「だ、誰もわたくしにこんなセクスィーなんて求めてませんわよね!!ねっ!アナ!」
「えぇ…求めてるかどうかは知りませんが、お嬢様。その大きなお臍まである下着は、私から見てもセクシーさのかけらもありませんよ」
「いいのっ!あったかいし、ユリエルはこれでいいのっ!スパッツも履くし!もうスパッツ履き忘れないから!!わたくし美人だけど、セクシーな中身がありませんので、お気遣いなく!」
「…かしこまりました」
多分アナも朝からちょっとめんどくさくなったのだろう。返事が雑になってきた。
「姉さん、一緒に朝ご飯を食べに行かない?」
着替え終わったところで、ノックの音の後にシルクの声が聞こえて返事を返し、今日の授業の確認をしたくて入ってもらう。
そしてふと見上げたその義弟ながらに整った顔立ちを見ていると、アナは「先に行って準備をしてまいります」と部屋を出た。
「な、何?姉さん、朝から僕の顔そんなに見て…?」
夢の中のぬいぐるみは確かに良い出来だったと、あとこの子のフィギュアなら欲しいわと、既に造形の整ったシルクを見つめて思いつく。
「ちょっと、シルクこちらに来て頂戴!!?」
手を引き奥のベット…は流石にまずいかと、近場のソファの横まで連れてくると、シルクのタイを緩めて胸のボタンを三つ外し、妙に慌てた様子のシルクを躊躇いなくドンと押す。
「ウワッ」と、ソファの肘掛けに膝カックンの要領で後ろに倒れた。足が長いのも考えものね!
「ちょ!?姉さん!?」
慌てて立ち上がろうとするシルクに待ったを掛けて、両手の親指と人差し指で四角を作り、カメラでシルクを撮る様に視界に収めて…納得っ!と大きく頷き、
「……うん!!やっぱりこっちの方が需要があると思うわ!!!乙女向けだもの。わたくしな訳がありませんでしたわ!」
なんだか妙にスッキリして、確かにロイさんにレイさんとかも絵になりそうだとうんうんと頷く。
「あ、もうシルクいいわよ。ご飯食べに行きましょう」
ニッコリと笑えばシルクはもそもそと起き上がり、大きな溜め息を吐かれた。
「あらあら、いつの世も姉の理不尽さに弟は振り回されるものね」
「ここまでじゃないと思うよ…」
そんなことないのよと、前世の娘と息子に想いを馳せる…。
「わたくしなんてまだマシな方かもしれないわよ?」
「姉さんはトップクラスで酷いと思う…」
ボタンを留めてタイを直してシルクは眉間に皺を寄せて文句を言う。
「弟が大好きないい姉じゃないかしら?」
「…そーゆーとこだね」
呆れたようなその声に首を傾げて「さ、ご飯食べに行きましょう」そう声をかければ、また大きな溜め息を吐いてから「ハイハイ」と疲れたように返事をされた。
うん!やはり需要はこの子達よね!
そう思って一安心した朝だった。
6月24日はUFOキャッチャーの日だそうです!
更新日が2日遅れてますがアップします!!
伝わらない内容だったらすみません。
薄い本の表紙の描写はボカシたので…。ご想像にお任せいたしま「ご想像しないで下さいませ!!byユリエル」
乙女ゲーで人気があったなら、グッズとか出てたのかな?なんて考えると、グッズとして悪役令嬢の需要はあったのか。
むしろあるなら……薄い……的な発想で申し訳ありません!!
リカべレは…このちょい若を読んでる友人から「薄い本を出すならリカべレ」と言われて爆笑したので差し込みました。
リカルド学園長とベレト先生らしいですよ。
発想力!!!www