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父の日



「お父様、いつもありがとうございます」



小さな宝石のついた万年筆を贈ればお父様に驚いた様な顔を向けられた。



「ありがとうユーリ、でも僕のお誕生日は今日じゃないよ?」



困った様に、むしろ少し淋しそうに言うその顔に誤解されたのだと慌てて首を振る。



「わかっておりますわ!ただ以前素敵な万年筆をみつけたのが届いたので、感謝の気持ちを込めて贈りたかっただけですの。…コホン、では改めまして…お父様いつもありがとうございます。あとこれ…」


万年筆の後に封筒を渡せば涙でも出そうな程嬉しそうに「開けてもいいかい?」そう聞かれて頷くと、特にノリで閉じていなかった封を開ければそこには…



「肩叩き券?」

「お父様も机仕事も多いですし、これを渡してくれればいつだってマッサージをしてあげますわ!」

「誰がだい?」

「わたくしですわ」



胸に手を当てドヤ顔で告げれば、やっぱり蕩けそうなほど嬉しそうにへにゃりと笑った。


「沢山入ってるね、今使っても?」

「勿論ですわ!!」



一枚渡され、ソファに座るお父様の後ろに回る。



「では!始めますわ!!」

「うん」



返事をされて自信はあるので、軽く拳を振り上げ肩に当てる。




ゴッ…



……ん?肩?あれ?これ、肩??


叩いた音が鈍すぎて響いてこないのだけど?



ゴッ…ゴッ…ゴッ…



これ肩叩きの擬音であってる??



ゴッ…ゴッ…ゴッ…ゴッ…



「ちょ…揉んでみますね?」



グギリッ…!!



親指が親にやられるなんて…!!



「えっと、ユリエルやっぱり叩きまーす」



ゴッ…ゴッ…ゴッ…ゴッ…ゴッ…ゴッ…



「…………お父様、これ、気持ち、いいの、です、か?」

「うん嬉しいなぁ」



……これは、気持ちいいとかわからないレベルの強敵!!娘がやってるから、うれしいなぁの程度!!むしろわたしの拳が痛い!!


しかしうちにはもう一人…!!



「お父様ちょっとだけ待ってて下さいね?」







*****




「お、お義父様、これは……」


連れてきたのはわたくしのゴッドハンドこと、可愛い愛息子にも揉ませれば、父はやっぱり嬉しそうだが、当のシルクは困惑している。



(姉さん、これ何?)

(肩よ…!!)

(岩でも揉まされてるみたいだけど!?)

(わたしでは太刀打ちできなかったの!お願いシルク!!)



父の後ろでアイコンタクトとジェスチャーで会話をすれば、シルクも一度深呼吸をしてから「少し強く揉んでもいいですか?」そう確認を取れば、うんうんと頷かれたので、指が赤く…いや青くなるほど押してるが、肩に入っていく様子がない。



(無理…!)

(シルク頑張って)



ふるふると左右に顔を振るシルクを小さくガッツポーズして応援をする。





******





「うわ!肩が前より上がる様になったみたいだ。ありがとう二人とも」


暫くしてニッコリと微笑むお父様に、わたし達も笑顔で頷き出て行こうとすれば、


「嬉しいなぁ。この2人からのプレゼント。肩叩き券なんて初めて聞いたよ。沢山作ってくれたし、また今度お願いね」



嬉しそうに封筒を見る父に「はいっ」と2人で笑顔で頷いて廊下に出ると、シルクの腕が、いや全身から疲れが出た。



「なんてものを渡したの!?」

「だってあんな改造人間なのかな?って思うほど硬いと思わなかったんだもの!!」



お父様の執務室から一番近くで休めるのはシルクの執務室だと、慌てて疲れたシルクの手を引いて飛び込みお父様に聞かれまいと扉を閉めれば、涙目のシルクの抗議が入った。



「もう僕今日…書き仕事が出来る気がしないよ」

「宿題はわたしが代わりにやるわ!バレない様にするから!」

「提出するのベレト先生だよ?バレないわけないじゃないか。似せて書いてくれても、あの人なら匂いとかで察しそうなのが怖い」

「やめてシルク!何故だかありそうで怖いわ!!」



プルプルと震える手を取りソファに座らせ、肩を触るがやっぱり凝りのある様子は無い。


「うん、こればっかりは遺伝かしら?」

「さぁねぇ」


シルクの横に座って、せめてもと手のひらをマッサージする。


「お疲れ様でした」

「あれ、あと何枚あるの?」

「……ジュウキュウマイ…」

「姉さんが作ったよね?」

「…お父様への感謝は2人からのものでしょう?」


えへっと笑えば、うわぁ〜と露骨に嫌そうな顔をされる。



「まぁまぁ、終わったらわたしがシルクの手をマッサージするわ」

「姉さん、あの岩みたいな肩を僕に丸投げする気満々じゃない?」

「バレテーラ」

「? まぁお義父様には僕もお世話になってるしね。また券を出された時は頑張るよ」

「宜しくお願いします」



恭しく頭を下げれば笑って「はいはい」と言ってくれたので、わたしも笑顔を返す。



こっそり送った父の日のプレゼントは、こっそりと姉弟からのプレゼントということになり、これもこれでまぁいいかと、少しだけ幸せな気分になりましたとさ。



「姉さん、なんか自分に都合の良い感じで纏めてない?」

「なんのことかしら??」




6月の第3日曜は父の日です。


お父さんありがとう。


普段からささやかでも身近な人に感謝の気持ちを口にして伝えたいものですね。



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― 新着の感想 ―
[一言] 母の日より盛り上がらない父の日に光が当たった ベレトは気配とかで察しそうだけどな
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