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兄の日



「兄の日ですわ!」

「そうか」



生徒会室で言われたユーリの言葉に、ついにこの日が来たのかと内心胸が高鳴れば、彼女はニッコリと笑って「そうなんです」と言葉を続けた。



「ね!ロットさん!」

「振るなや!オレは弟や!!」



思わず机に立てた肘が滑って情けない声が出そうになる。



「ロイさん、なにしてますの?」

「ロットは弟だと言っているだろう。何故ロットなんだ」

「みんなのお兄さんみたいだからですわ」



さも当然と言う様な顔で告げられ「待て」と声をかけるが、とりあえず隣で腹を抱えて明らかに笑いを堪えている…いや堪えないシルクが腹立たしい。ユーリの義弟でさえ無ければ、不敬罪でどうにかしてやりたいと常々思う。



「ユーリ、俺こそ兄だぞ」

「まぁそうなんですが、ロイさんはやはり幼い頃のイメージが抜けなくて…」


「くそ…」と呟きロットを睨めば、微妙に腰の引けた感じで「姫さん勘弁して」と情けない声を上げた。



「ほら、レイはどないや!?まぁレイも弟なんやけど…」

「だってロットさんはそのレイさんにもツッコミにフォローもしてるじゃないですか。あとアベイルさんにも。ね!?」

「あ、はい、えっと、わかります。ボクにとっても…その頼りになる…はい…」


ギロリと睨めば、アベイルがオドオドと視線を逸らして、ロットの影に隠れる。いや隠れられてないからな。お前の方が一回りも二回りもでかいからな!そしてそのロットは、笑ってるシルクの影に隠れる。なんだその絵は!



「そうだね、ロットは頼りになるからね。でもユリエルくん、私ではダメかな?」

「いえ、レイさんは十分素敵な男性ですわ。ただわたくしが兄っぽいな〜と思う一番がロットさんだっただけですの」

「そうか。とりあえず一回『レイお兄様』と呼んでくれないかな?」

「いいですわよ。 レイお兄様」

「うん。ありがとう」


「いや、待て。なんだ今の流れは」


思わずレイに言えば、ユーリ曰く『麗しい笑顔』で、「ただの思い出作りだよ」などと抜かす。

こいつは最近どうなのかと思うが、言うほどの事なのかどうなのかと悩まされたまま思わず眉間に力が入る。



「ユリエルくんみたいな可愛い妹が…いや、シルクくんも羨ましいね。君みたいなお姉さんが居て」

「あらやだレイさんてばお口がお上手ですこと!」


オホホと照れ臭そうに笑うユーリにレイは楽しそうに微笑むのがまた気に入らず、


「で?他に兄っぽいのは?」


なんとか作り笑顔で聞けば、ユーリは顎に指を一本当てて「う〜ん」と悩み、思いついたと笑顔になると



「リランさんですわね!」


そう言ってポンと手の平に手をついた。



「何故だ!?」

「なんかあの人を上手いこと動かす感じが、なんかホラ、なんか上の子っぽくないですか?」


なんとなくみんなわかる様な空気で視線を逸らせば、「ね!」とドヤ顔でユーリが胸を張る。



「他には?」

「素直にレイさんですわね。お年も上ですし?…そういえばロイさんは初めて出会った時にわたくしよりも背が小さかったんですよね。大きくなって」


うんうんと懐かしそうに頷く姿が、俺をこれっぽっちも上だと思っていない、むしろ子供の成長を喜ぶ親戚か!!と言いたくなる様子。


「シルクは?」

「間違いなくわたくしの可愛い弟ですわ」


さも当然と胸を張るユーリに、笑っていた声が地味に小さくなり、ロットがポンと肩を叩いた。お前にもダメージを与えておこう。



「ふぅ、まぁ気も済んだしこの話はいいか。さて仕事を始めるか」


「その前に…姫さん、一言だけええか?」



妙に真剣な顔をして、ロットがユーリの前に立つ。

一つ目を閉じて、



「姫さんが、姉か妹か言うたら、シルっくんより妹っぽい事も多い」

「え!?そんなバナナ!」

「バナ…!?いや、それはええわ。妹か姉かより、姫さんむしろ時折バァちゃんポイ」


「オホホホホホホホホホホホ!ロットさんてば、こんな美女を捕まえて何を仰ってるのかしら!?わたくしピチピチギャルですわよ!」


「なんや言い回しが古臭いんよね」

「ハイカラでしょう!?」

「ハイカラってなんやねん」

「………シルク?」

「僕もわからないよね」

「シルっくんもそう思わへん?」

「…………さぁどうでしょう?」

「めちゃくちゃ間ぁあったなぁ。ロイはんは?どない思うん?」


突然振られた話題に一つ悩んでから、



「…ユーリの言葉は古臭いのか?いや、わからん言葉を使うことも昔から稀にあったが、よく読書をしてるからその辺の影響なのかと気にしなかったな」



思っていた事を告げれば、ユーリはパッと華の咲いた様な笑顔になって、


「うふふ!そうですわ!わたくし本の虫ですもの。それだわ!そうなの!そうですの!」


と、何故か物凄い同意をされたが、その笑顔が溢れんばかりに可愛いのでよしとする。



「なんや、そうなんか?…なんとなくはぐらかされた様な気もするけど、ロイはんがそう言うならそういうことにしとこか」


ロットの苦笑いにもユーリはうんうんと頷き、



「じゃ、今日は花金…いや花召ですもの!アフター5を楽しむためにも、ちょっ早で終わらせましょう!!」


「せやな!慌てて訳分からんくなっとる姫さんにツッコんどったら負けやな!終わらへん!ほっとくわ!」


なんだかよくわからないが、俺も下町の言葉をもう少し知った方が良いのかもしれないと、目の前の仕事に取り掛かった。

 






6月6日は「兄の日」



そして「あに」と打とうとしたら何度も「アナ」と打っていたので、アナの誕生日にキマリ☆


ちなみにメインキャラ達の誕生日も決めてるのですが、アベイルしか発表してないですね…誕生日の頃の更新に載せるつもりだったのに…5月3日はロイの誕生日。6月18日はリランの誕生日です。




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― 新着の感想 ―
[一言] まあ一番兄っぽいのはシルクだよねぇ 妹に振り回される兄の図
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