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デパート開業の日



「猫耳?猫の耳がどないしたんや?」


聞けば頭の上に手を当てぴょこぴょこと動かしながら、真面目な顔で姫さんが聞いてくる。


生徒会室には珍しく2人きり。待ってましたと言わんばかりに、話しかけられた。

 


「こーゆー耳のついた帽子ですわ?わたくし自分で言うのもなんですが、世間知らずでして。クロモリの…いや、猫の耳のついた帽子って普及してます?」


「いや、帽子は帽子やな。花やらリボンやらをつけてる帽子は人気あるけど、猫の耳は聞いたことあらへんな…何の意味が?」


「意味は可愛い一択ですわ!!」


「可愛い…姫さんの可愛いがイマイチわからんなぁ〜…耳ついてたら可愛いんか?」


「え!?可愛くないですか?クロモリも耳だけ出したら可愛さ三割り増しになりますでしょ?」


「…ほうか?」


「そうですわ!!!え!?出します?」


「いや、ええわ。可愛いって事は女性向けか?」


「ターゲットはJKですわ!」


姫さん渾身のドヤ顔。なんでや。


「JKってなんや?」と聞けば、

「10代の可愛らしい娘さん達ですわ。ね?想像するだけで可愛いでしょ?」

そう楽しそうに顔の前で手を合わせて笑う。


「…姫さんがそう言うなら作ってみてもええけど、イマイチ想像がつかんのよ?絵でも描いてもらえるか?」


「うふふっ、ロットさんならそう言って頂けると思って…試作品を作ってきたのですわ!と、言うか、絵が描けなくて……でも、編み物も今回は初めてで…しかもわたくしでは似合わないし…でも自分で作ってそれはそれは下手くそなので…ロットさんに被せるのもアレなので……」


もぞもぞとその毛糸の帽子を暫く手に持ち、勇気を出した様子で「エイッ」と被る。


「…ほぉ」


「…ほぉ、ではございませんわ。…あの、こんな感じとイメージだけ掴んで頂けたなら取っても宜しいかしら?」


姫さんが被った帽子には、帽子の概念である鍔もなく、おでこから耳の横、後ろも首近くまである毛糸の帽子。

そして姫さんの言う通り、猫の様な耳がピコンと2つ跳ねている。


「日除けではなく…その、防寒として…冬場の通学とか歩いてる方々は寒いし、雪遊びするのにも…あの、もうとりあえず取っていいかしら?」


「いや、イメージ固めとるから取らんといて」


そう見つめながら言えば、恥ずかしそうに少し目深に被ると、またその猫耳がピョコンと跳ねる様に動いた。


「なるほどな…これはウケるかもしれんわ」


「そ、そうでしょう?あの…取っていいかしら?プロにマジマジと見られるほどのクオリティは無いのです…途中途中糸も飛んでますし…、こーゆーのは若い、可愛らしいタイプの子が似合うと思うので…」


「後ろどないなっとるん?」


「え?あ、はい。後ろは普通ですよ?」


くるりと周れば、少し不恰好な耳がクタリとすると、違和感でも感じたのか、手で猫の耳を立てている。


「ほぉ、おもっしろいデザインやなぁ。確かに冬に暖かそうやし」


そう言うとぱっと目を輝かせて振り向き取ろうとするので「ちょっと待ち、そっち座って、絵を描くわ。すまんけどそのまま待ってて」

ゴソゴソと鞄からノートやペンを出し、イラストにする。


「まぁ!ロットさんお上手ですわ!…あっ、ごめんなさい、ここはヘタレてますけど、ホントはもっとピンとして欲しくて…」


「なるほどなぁ、ほな横向いて?」


「…うぅ…はい。これ、マネキンとかございませんの?」


「そんなん学園にあるわけないやろ?オレが被ったら見えへんし、他のに被らせてアイディア漏れても困るしなぁ。…ん、もうちょいこっち向いてくれるか?」


サラサラと描けば、恥ずかしそうにしながらも、デザインをまた覗き見れば目が輝いて「上手ですわ!毎回ペンニーネ商会が素敵な商品を作られてるのは、こう言ったデッサン力とか、色んなものの積み重ねなのですね」と笑う。


「ありがとな。ほんでその帽子やけど…」


そう言った時、扉が開く音がすると超高速で姫さんが帽子を取り、それを押し付けてくる。



「では、あと詳しい事は宜しくお願いしますわ!わたくしちょいと飲み物飲んでまいります。まぁレイさん、お仕事ですか?後ほど手伝いに参りますね!」


よほど見られたくなかったのか、早口にそう言って

「ロットさん、それ下手くそですけど差し上げます。どうぞあとは鏡でも見てお願いいたしますわ!」


「…貰ってええの?」


「下手くそですから終わりましたら捨てて是非ペンニーネ商会が試作品にしたら一つ頂けると嬉しいですわ。では!!」


一息でそう言うと、バタンと焦った様に部屋から出て行く。


「ロット?ユリエルくんと何してたんだい?」

「商品開発」

「何故あんなに焦って?」

「レイに見られたくなかったんやろ?」


ニカっと笑うが

「なんか…ロット…まぁ、触れないでおくよ」

「…おおきに。レイが来るの遅かったら新しい扉開いてしまいそうやったわ……」

「なんだいそれ?」

「姫さん怖いわ〜…まぁまたこれがウケればうちの売り上げは伸びそうや」

「それはなにより」

「ホンマやね」



デザインを描いたノートと、姫さんに貰った手作りの帽子を鞄に仕舞い、なんとなく…店に渡す試作品は、自分で作り直して渡そうと思った。





12月20日は「デパート開業の日」


先日アップした119話『ゆーきよどんどん降れ降れもっと降っては降ってはテンション上がる〜!フッフ〜ゥ⤴︎』で、雪の日にユリエルが被った『クロモリ帽子』が出来るまでの話でした。…改めて見るとタイトルが酷いw



デパート開業じゃないけど、ペンニーネ商会はデパートみたいなものなので⭐︎


ユリエルはイメージを絵で描いたらあまりに酷い出来で、ホラーかよ!と頭を抱え、なら前世の知識を総動員して!!と作ってみたけどやはり上手くいかず、絵と手編みを見比べた結果手編みにしました。






⭐︎オマケ⭐︎



「ところで姉さん、この前なんか編み物してたけど、あれどうしたの?(ちょっとドキワク)」

「…ロットさんにあげましたわ」

「…え?」

「深く聞かないで頂戴…(下手すぎるものを押し付けてしまったわ…捨ててくれたかしら…?)」



そしてまたロットは地味に理不尽な八つ当たりを受けたとか受けなかったとか…?


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