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源泉かけ流し温泉の日



「温泉に行きたい」


「オンセン?」


馬車の中で思いついた小さな呟きにシルクが反応してくれたので、頷いて続きを話す。


「この辺りにはないらしいけど、リランさん達の故郷のカルヴァルカ国の国境近くなら沸いてるらしいのよね。温泉」


「あぁ、温かいお湯が湧き出てるっていう…」



手にしていた資料から目を離しこちらを見たので「お祖父様も傷を癒しに行ったと、前に話してくれたわ」と語れば、聞いたことあるのか「あぁ…そういえば」と顎に軽く拳を当てて記憶を手繰る様子を見せた。



「つまりは大きなお風呂よね。入りたいな〜。手足伸ばして露天風呂〜」


「随分詳しいね」



途中から前世の記憶も混ざっていたかと、気持ち焦るが気にせず続ける事にする。



「シルクは?一緒に入りたくない?」


「いっしょに!?」


「猿と!!」


「猿と!!?」



あの気持ち良さそうな猿と並んで入るイメージをすれば、なんだかこちらも更に気持ちよくなる気もするわ。



「なんでそんな発想になったのか知らないけど…、それは衛生面とか野生動物と入る危険性とかどうなの?武器も持てないでしょ?」


「たしかに〜…」



たしかにあの温泉は猿山の猿用の温泉だったような気もして、一緒に入っていたのではなかった気もしてきたわ…。



「でもたしかお祖父様が山の中にある田舎の宿泊所で男女別の温泉と、家族風呂とかあったとか…混浴だったかしら?」


「コンヨク?家族風呂?」


「男女一緒に入るのと、家族で貸し切りにするお風呂よ」



言えばゴホゴホッとシルクが咽せたので、


「あ、大丈夫よ?多分その時はお祖父様みたいに宿泊所全て貸切にするだろうし、家族風呂ならお父様とお母様もたまには二人でゆっくり出来るかなぁって。混浴とは言っても、流石にこの歳でシルクと入ろうなんてわたしでも言わないわ!安心して!」


「それは…うん、そうだよね」



咽せたせいもあって、珍しく顔を赤くするシルクに笑って頷く。

しかしまだ10歳くらいの時にお風呂に頭洗い(シャンプー)しに突入したこと引っ張ってるのかしら。自立した子だったし悪いことしたのね。



「冬休みに行けないか、お父様に相談してみようかしら。 ほらダラスもいい歳だし、療養にいいんじゃない?あ、トーマスも呼んだら駄目かしら?最近節々が痛そうなのよね…。 それに久々にアナと一緒にお風呂入れるかな?嫌がるかしら?使用人さん達もこないなぁ〜」



想像してたら少しずつたのしくなってきて、家族旅行からなんだか慰安旅行みたいな妄想になってきて、ウキウキとしてきた!



「それに猿は無理でもクロモリならいけるわね!!」

「全然いけないよ!クロモリは男の子だろう!?」



いいこと思いついたと笑顔で言えば即否定されてしまったわ。



「8歳未満なら女風呂でも問題ないわ」

「大ありだね!そしてそれがどこの情報なのか知らないけど、ならクロモリは混浴か家族風呂だろう!?」

「なるほどその手が!」

「僕の言い方が悪かった!!その時はクロモリは僕が男湯に入れるから姉さんは別に入ってて!!」

「え〜…」

「え〜じゃない!」



ゼーハーと息を切らせて必死のシルクに可笑しくなって、

「楽しみねぇ」と言えば「まだ決まってないよ」と髪をかき上げ疲れたように言われた。



「あ!そうだ!ロイさんとかも来れないかしら」

「は!?」


またも良いこと思いついたとうんうんと頷けば、シルクにジトっとした目を向けられる。



「いや、ほら前にみんなで別荘行ったの楽しかったから、また生徒会のみんなでね!」



シルクは「そういうことか」と小さく呟いて、


「でも生徒会の人達だと殆ど男の人だよ。あの時はお義父様の許可も出たけど、そんなプライベートな…しかもお風呂に入るなんて遠出にはどうかな?」


「たしかに…」



互いに変な噂が流れても困るし、それもそうかとしょんぼりする。今度こそお友達と枕投げしたい。



「ミラと行こうかなぁ〜…」

「家族消えたね」



シルクのツッコミに苦笑いを返し、


「でもお父様もそんな長めの休みなかなか取れないわよね」

「そうだね。お忙しいからね」

「夢だけは膨らむんだけどなぁ〜」

「姉さんの夢は暴走しすぎるから心配だよ」


はぁ…とため息を吐かれながらも、

「でもミラと行くにしても約束してるし、シルクもボディガードでお願いね」


ニコリと笑って言えば「仕方ないな」と笑い返してくれる。



「あ!ボディガードと言えばグラヴァルドさんね!」

「だからプライベートな遠出に男性を連れて行くのはどうなのかなぁ!?」



手をポンと打てば、やはりシルクに注意された。


「友達と旅行もオチオチいけないなんてなかなか貴族ってやっかいねぇ〜」

「僕にとったら姉さんが一番やっかいだよ…」

「そう?」


笑って言えば、困った様に軽く腕を組むシルクに「あなたはやりたい事ないの?」と聞けば、「姉さんのやりたい事に付き合うよ」なんてやっぱり少し困ったように、でも優しく答えてくれる。


「若いのに欲のない子ねぇ」

「姉さんは色々あるんだねぇ」


「若いからね!」


ドヤっと言えば、クスクスと「同じ歳だよ」と笑ってる。


それもそうねと笑って返して、家に帰ったらやりたい事リストを付けようかしら…なんて考える。



「人生悔いなく謳歌した者勝ちよ!」


「…そっか。なら謳歌を一緒にさせて貰おうかな」


とか、やっぱり欲のない答え。



わたしも苦笑いを返して、


「兎に角まずは学園でお友達作りに今日も励みますわ!!」


「出来たら同性でお願いね。もうホント…いや、ホントに」

「あら?シルク、なんか朝から疲れされちゃった?」


首を傾げれば優しく首を振ってくれたところで、今日もいつもの場所で馬車が止まり、シルクのエスコートで華麗に降りて、友達募集の笑顔で降り立ちますわ!!








5月26日は源泉掛け流し温泉の日


旅行とか…行きたいですねぇ〜!


早く現状の騒動が落ち着いて、生徒会の面子のようにワイワイガヤガヤわちゃわちゃと、楽しみたいものです!



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― 新着の感想 ―
[一言] 皆女装して一緒に入ればいいんだよ
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