発明の日
「ユリエルさまぁ〜!これ見て、これ見てぇ〜」
生徒会室でみんながまだ揃わない中、先立ってお茶を準備していると、ロットさんとの用事があると来ていたカフィが、ニコニコと可愛らしい笑顔で少し薄手のドレスを両手を広げて見せてくれる。
「まぁ素敵なドレスね。カフィが作ったの?」
「作ったのはロットせんぱいだよ〜」
「めちゃくちゃ縫いにくい生地やったわ…」
ニッコリと可愛らしく微笑むカフィに疲れた様子で出したばかりのお茶を飲むロットさん。
「ぼくが作ったのは生地の方!人に頼まれて発明したんだよ」
「生地を発明って凄いわね…あら本当に珍しい生地だわ…麻…でもないし…」
「ホントだわ、ユリエルも見た事ないの?」
ドレスと聞いてミラさんが横から顔を出して覗き込む。
「ロットさんは知ってますの?」
「いやオレも知らん」
ロットさんも知らない生地なのだと、その薄手でなんとも珍しいその服を手に取らせて貰えば、
「いやぁ〜ん♡カフィトルちゃん出来たのねぇ?」
なんだかセクシーな声を上げ、扉を開けてリランさんが入ってくる。
「あ、ごめんなさい。リランさんの御依頼でしたか。お先に見せて頂いて申し訳ないですわ」
なんとなく身体に沿わせていたその服を慌てて渡そうと思えば、
「あ、いいのよ!ユーリちゃんが着てくれるならその方がいいのよぉ〜」
うふふと笑ってわたしの身体に合わせてくれる。
「珍しい生地ですのね、なんか感触は少しゴワゴワしてますけど…あの…申し訳ないのですが、着て動いたり踊るには少し…」
「やぁねぇ!これは着て動かないのよ」
コロコロと笑うリランさんに首を傾げれば、
「ユリエルせんぱい。それ、水に溶けるドレスだよ!」
「「は??」」
ミラさんと2人声をハモらせれば、
「カフィトルちゃん!言っちゃったら面白くないじゃない〜」なんて身体をくねらせてリランさんが言った。
「「は?」」
「いや!オレは無実やで!!頼まれて縫っただけや!!!」
思わずミラさんと2人でロットさんを見ると慌てて弁解をされる。
「ん・もう、知らなかったら知ればいいのよ!これこそ男の子の夢!大儲けできるわよ?ね!ロット」
「ウチの店のコンセプトはこんなんや無い!!」
「貴族に売り出したら良い値が付くわよ?」
「成る程、確かに…」
商売っ気が出たのかロットさんが顎に手を当てた所で、わたしとミラさんが壁際まで去り召喚した人型のクロモリの後ろから様子を眺めている事に気が付いた。
「いやいや!オレは巻き込まれただけで…」
「あら、買い手市場が現れたわよ?」
オロオロとロットさんが言い訳をしたところで、珍しくもロイさんにシルク、そしてレイさんとアベイルさんが扉を開けて入って来た。
「すまない遅くなったな…ん、カフィトル、それはドレスか」
「ロイさまぁ、これユリエルさまへプレゼントするぅ?」
「なんだ?ユーリが欲しいのか?なら買うか?」
微笑みこちらを見るロイさんにクロモリの後ろから半目で「いりませんわ」と告げる。
「何故そんな顔をされたんだ?」
眉間に皺を寄せて告げられるが致し方ない。
「あー…でもロイさまじゃなぁ〜…オススメはシルクさまか…やっぱり一番はアベイルさまかなぁ〜」
「えっと、ボク…ですか?」
「うん!是非試してもらいたいなぁ!」
「は、はい。頑張ります」
「「うわぁ〜…」」
思わず2人で漏れたその声に、アベイルさんがオロオロとする。
「ではわたくしとミラさんは今日はこちらの皆様と別行動とさせて頂きますわ。皆様ご機嫌よう。貴族の方々にそのような趣味があることを、女性であるわたくし共は存じ上げませんでしたわ。どうかわたくし共を巻き込まず、殿方同士でお話くださいませ」
「姉さん、それはどう言う意味?」
シルクの問いにはニッコリと微笑み答えず、スカートを摘みお辞儀をしてからミラさんを連れて部屋を出て…2人は呆れた顔をして無言で食堂へと向かった。
その後、生徒会室でドレスの機能と用途を知り、頭を抱えた男性達の心理はわたし達の知る所ではないのです。
4月18日は発明の日。
発明といえばカフィトルです。
凄いことからしょうもないことまで、興味のある事は色々積極的に参加の天才。
国も手放せないレベルの人。でも隣国の人の依頼に面白そうなので二つ返事をしちゃう子です。
色んな意味でロイ様も頭を抱える事案な事をお察し下さいww
ちなみにロイは水属性に適性がないので(光・火・風)、オススメは水の魔力を持つアベイル(水)とシルク(氷・水・風)の名前が挙げられました。
勿論リランも(花・水・光)。
レイは(風)なので、内心ではきっとしょんぼりです。