よい子の日
「レイさん、知ってますか?」
「ん、なんのことだい?」
「クロモリってすっっごい良い子なんですよ」
「そうなんだね。どんな風に良い子なのかな?」
資料を机に置き聞けば、ユリエル君はキラキラとしたら目を向けて「話して良いのですか?」そう頬を染めて近付いてきて、生徒会室の私の座っていた斜め向かいの1人がけのソファに座って、それはそれは嬉しそうに手を合わせたので頷けば、
「もう本当良い子なんですよ。最近はちゃんとオヤツも我慢できるようになったし、お散歩も嫌な顔せず着いてきてくれるし、荷物も持ってくれるし、疲れたら背中に乗せてくれるし、運動神経は抜群だし、最近はお掃除だって手伝ってくれるんですよ!」
息継ぎも何処でしているのかと思うほど、矢継ぎ早に如何に可愛いのかを語ってくれる。
「そうかい。それは良い子だね。」
微笑み言えばうんうんと頷いている。
「ところで、私に何故そんな話を?いや、ユリエルくんが話してくれるなら私は幾らでも聞くよ」
ソファ肘掛けを使い頬にこぶしを当てて微笑めば、君は少し恥ずかしそうに頬に手を当て、
「もうクロモリの可愛さを語りたいのに、最近はシルクは『そうだね、知ってるよ』としか返してくれないし、ロイさんは『うんそうか、わかった。クロモリ以外の話はないのか?』とか言うしっ!わたくしはうちの可愛いクロモリが語りたいのです」
「うん、なら隣どうぞ」
「隣?」
不思議そうに首を傾げられたので、
「熱い想いを語りたいときは側の方が伝わるじゃないか。さぁ、どうぞ。いくらでも聞くよ」
場所を開け微笑み告げれば「成る程っ」なんて疑う事もなく隣に来て、ニッコリと笑う。
「それでですね!クロモリは猫ちゃんサイズにもなれるようになった努力家の良い子なんですけど、もうその姿がもう更に可愛くて!それはもうキャロットちゃんにも負けず劣らず、しかも魔力だから可愛いリボンもその場でつけ放題で、でもなかなかイメージが伝わらないと思いますでしょ?でもね、わたくしと魔力が繋がってる部分があるせいか、その場合はかなりイメージに近いリボンとか付けてくれるんです!めんどくさい時とか、眠いときは無視されちゃいますが、一応クロモリも猫ちゃんなんで、猫科はそんなものと全然構わないのですけど、構ってくれたときはまた可愛くて!!」
「うん、それで?」
先を促せば嬉しそうにズイッと近付き「もっと語っても良いのですか?」そう言って可愛く頬を染めてくれる。
「今は時間もあるしね。ユリエルくんが満足するまでいくらでも付き合うよ」
「レイさんこそ、なんっっていい子なんですの?」
指を組みキラキラとその大きな星の煌めく瞳が至近距離で向けられる。
この至近距離でも欲情や痴情もないその美しい瞳になんとか手を伸ばすのを止める。
「あとですね、クロモリは〜…」
相槌を打てば嬉しそうに楽しそうに、召喚獣への愛情を語り続ける。
珍しくも生徒会室に誰も来ることが無い時間がユリエルくんの語りで流れていく。
「羨ましいねぇ」
「レイさんは風ですよね。なら召喚は出来ませんものね…」
「あぁ、違うよ。クロモリくんがね」
キョトンと首を傾げられ、
「君の愛をそんな一身に受けられてだよ」
言えばクスクスと笑って、
「レイさんは流石にお口がうまいですわね」
君への傾慕なんて一つも届かず楽しそうに笑うその顔へ、やはり何事もないように「もういいのかい?」と聞けば「ありがとうございます、かなり満足しましたわ」と笑ってくれる。
「ならまた話したければいつでも聞くよ。」
「あ、もしかして今までの役員のお手伝いの御礼ですか?」
口に手を当てて申し訳なさそうに言う君の頬に手を当てて、
「ユリエルくんの声を聞きたいだけさ」
そう君に響けと微笑めば、頬を染めて笑って、
「お世辞でも嬉しいですわ」
なんて、やはりあまり届いてくれないらしい。
残念だと頬を指でひと撫でして離れれば、その可愛らしい身体がビクリと震えて…さり気無く距離を取り、顔を背けて頬を染めている姿が目に入る。
「ユリエルくんも、いい子だね」
言えば早くも心を整えたのか、ニコリと笑って「ありがとうございます」と微笑み返される。
「では沢山聞いていただいて嬉しかったです。今お茶を入れて参りますね」
「ありがとう。ユリエルくんこそ喉が乾いただろうしね」
立ち上がりいつもと変わらない様子で生徒会室と繋がった給湯室に行けば、奥からガシャンと何か落として慌てた声がする。
その声に君の心に少し程度は動揺させること出来たのかとクスクスと笑えば、少しだけ空いた扉から賑やかな声が聞こえて来る。
君との2人の時間はもう終わりだと、準備していた資料を手に取り「少し遅かったようだけど、どうかしたのかい?」と、みんなに向かって声を掛けた。
4月15日は 『よいこの日』だそうです
ユリエルにとってのよい子はクロモリなので、愛を語ってもらいました。
最初はロイに語らせようとしましたが、レイに話した様な反応しかしないので、メインヒーローの出番滑落(笑)
そしてレイにお鉢が回ってきました♪( ´▽`)
とりあえず頬を撫でる指使いが無駄にエロい事をここに報告しておきます。
レイ目線なのであの程度の表記ですが、ユリエル目線ならば、
『レイさんが頬に当てた手は、親指が頬を優しく擦ると、手を引かれるときに他の指が顎から首筋のラインをするりと撫でて離れていった。』
です。
よい子は真似しないでね!!