柔道整復の日
「し、神父様ぁっ!!」
「ホース、そんなに慌ててどうしましたか?」
孤児院にお邪魔をしている時に、突然ホースくんがサーシャちゃんの手を引いて慌てて食堂まで連れてきた。
「い〝ーだーーい〝ーーっ」
わたしはびゃぁびゃぁと泣くサーシャちゃんの目の前に慌てて座れば、泣きながら抱きついてくるけどその片手が上がっていない。
「あぁサーシャ、肘が痛いのですね…、早く治療院へ行かないと…ユリエル様、大変申し訳ないのですが、留守番をお願い出来ますか?」
「神父さま、ちょっと待って下さいませ。…あのね、サーシャちゃん、なんで痛くなっちゃったの?」
背中を撫でながら、ゆっくりとした声で聞いてみる。
「あっ遊んでだら…おにいちゃんひっぱったら、いたいーーーっっ」
「なるほどぉ。お手て、上に挙げられる?」
「こっちのおででいだいぃ〜〜」
「うん、そっかぁ〜痛いねぇ〜…」
そっと膝から下ろしてその手を握ると、サーシャちゃんが可愛いお目目を大きく開いて怖がっているので笑顔を返す。
「ゆ、ユリエル様、申し訳ありませんが、前にもありまして…子どもには稀にこの様な痛みで治療院にかかりますので…」
オロオロと多分早く病院に連れて行こうとする神父様を無視して、その痛がる腕を両手で優しく掴み、
「サーシャちゃん、ちょっとだけ痛いけど、すぐ良くなるからねぇ〜」
ニッコリと笑って、その肘を軽く抑えてから肘先をコツを思い出しながら回す。
「イッッッッ」
「ユリエル様!!サーシャが痛がってる!!」
サーシャちゃんが涙目で声を上げれば、ホースくんが慌ててわたしの手を止める。
「ん・守ってあげて偉いわホースくん。でも、サーシャちゃん、どう?」
「痛く…ない??」
パチパチと瞬きをして可愛いお手てを上にあげると、ホースくんも神父様も目をパチクリとさせている。
前世の知識で…息子もこのくらいの頃に肘が何度か抜けた事があった。
何回かは病院で処置してもらったけど、途中わたしが試しにやってみたら嵌められる様になったのを思い出し、その時に齧った知識で骨の向きや何がどうなっているのを学習したのが、うっすらと残っていて試しにやってみたが上手く行ったようだ。
「ユリエリママ、まほう?!」
「ふふっ、どうかしら?でも痛くなくなったなら良かったわ。ね、神父様…」
振り向けば涙を零して手を合わせられている。
「ま、魔法では御座いませんわ!子どもはまだ関節が柔らかいからこんなこともありますわ!それを手で治しただけで…」
「わかりました、私などでは理解できない神の領域…アマテル様…」
「だから、違いますわぁ〜〜」
神父様もベレト先生も、本当些細な事で大層な扱いするから、扱いにくいっっ!!!
医療より魔法による治療が主であるこの世界だったと、心で涙を流して、ご機嫌に歌を歌うサーシャちゃんと手を繋いで、とほほ〜っとお庭に向かって歩きだした。
4月14日は柔道整復の日です。
骨折・脱臼・打撲・捻挫・肉離れなどの処置を手術をしない手技で施術・治療する日本独自の治療技術だそうです。
お話は小さな出来事の積み重ねで、信頼関係は培われていくものですね!っていうこぼれ話。
今回ホントにささやかなこぼれ話ですねww
ちなみに一緒に行ったシルクは席を外してました⭐︎
次はなんの日〜♪( ´▽`)