猫の日
「あらぁ〜ユーリちゃんのネコちゃんねぇ〜」
「あぁ、クロモリ。今日は一人でお散歩かい?お菓子でも食べて行くかな?」
エリューの家のお庭は広くて、その中なら散歩していいと言われてるから、歩いてたら、エリューのおとーさまとおかーさまが東屋でお茶してた。
「あぁ、来てくれたね。いつもユーリを守ってくれてありがとう」
そう言って手の上にふわふわした焼いたお菓子をくれたので、パクッと食べる。
「ユーリの言った通りだ。本当に食べるんだね。流石うちの天使の召喚獣は特別だね」
「あらぁ〜ホントねぇ〜、クロモリちゃん、お母様のも食べてちょうだい?」
またそのふわふわしたお菓子を、こんどはエリューのおかーさまが出してきたから、そっちに回ってまた食べた。
「まぁまぁ〜!なんて可愛いのかしら。良い子ねクロモリちゃん。ユーリを宜しくねぇ〜」
優しく撫でるその手は、なんだかエリューとよく似てて、それに匂いもなんだかよく似てて、思わずその膝に顎を置く。
「ロズ、それはクロモリがユーリによくしてるポーズだね…クロモリは本当に僕たちを信じてくれてるね。一人で散歩して、物を食べ、こうして家族に信頼した様子で接してくれている。本当にクロモリも、それにユーリが僕らを信じてくれてる証なんだと思うよ」
おかーさまは背中を、おとーさまは頭を撫でてくれて、気持ちよくてグルグルと喉が鳴ってしまう。
「本当だわ。なんだかこうしてると小さな子みたいねぇ」
「ユーリは自分の子みたいに言ってるしね。ならこの子は僕らの孫かな?」
「そうね…でもユーリもシルクも、あまり甘えてくる子じゃなかったから、こんな風に2人で撫でてあげるなんてなかったわねぇ〜…」
少しさびしそうなその声に目を開いたら、おとーさまの手がクロモリの目を隠して、チュッてした。
「そうだね…でも、ユーリがシルクを見て、二人が仲良くしてくれてたからこそ、僕は休みの時に君を独占出来る時間が多かったのは幸せだったし、いまだに幸せだよ」
「ふふふ…ヴォルさんたらっ」
なんとなく不思議な空気を感じて、クロモリもエリューに会いたくなって、おかーさまの膝から抜け出して、屋敷に戻ったらエリューとシルクがソファに座ってお茶してたから、エリューの膝に顎を乗せれば「おかえり」って頭を撫でてくれた。
「クロモリ、お茶飲む?」
やさしく笑ってきくエリューに、その膝の上のままで人型になれば、シルクが新しくお茶を入れてくれて、それを飲んでまだ顎を乗せると「美味しかった?」てまた撫でてくれる。
そんなクロモリ達を見ながらお茶を飲むシルクに、ふと気になって聞いてみる。
「エリューとシルクはチューしないの?」
「ゴホッ」
目をまん丸にするエリューと、シルクは紅茶を吹き出しそうになってカップを置いてあわててハンカチで押さえてる。
「え〜っと?クロモリは…屋敷の外には出てないわよね?」
「でてない。クロモリやくそく護る」
「そ、そうよね…うん。偉いわクロモリ」
なんかエリューの目が右や左に困った様に動いて「どう説明したらいいのかしら?」とつぶやいた。
「クロモリ エリューにチューしていい?」
「駄目だよ!」
「なんで?」
エリューに聞いたら、シルクが慌てた様にいう。
「まぁわたくしはクロモリなら別に…」
「姉さんは親子みたいなつもりだろうけど、駄目ったら駄目だよ!?は、歯止めが効かなくなったらどうするの?」
「歯止め?」
「あ、いやなんでも…うん、ほらクロモリ、頬にとかならいいけど、姉さんとお父様だってそーゆーことしてないだろ?親子でも召喚士と召喚獣でも…その、あまりそーゆー事はしないんだよ」
そう言いながら、なんかいつもより硬い動きで頭を撫でられた。
「でもおとーさまとおかーさまはしてた」
言ったらなぜか二人が固まって、
「ねぇシルク、あなたお父様にクロモリ喋れる事言った?」
「姉さんこそ言ってないの!?」
「だ、だってシルクかアナが言ったかと思って!」
なんだかそんな言い争いをしてる。
「おとーさま エリューとシルクがずっとなかよしで、おかーさまひとりじめ しあわせっていってちゅーした。 シルクもしあわせだからチューする?」
傾げて聞けば、エリューもシルクもへんな方向見ながらなんとも言えない顔をしてる。
「…クロモリちがう?」
「えっとね、クロモリ?ち、違くは無いのだけど…、なんと言うのかしら、親のそーゆーのは聞いていいものなのかなんとゆーか…ねぇシルク?」
「僕に振らないで貰えないかなぁ?」
なんとなく気まずそうな二人に「エリューはしあわせじゃない?」と聞けば「幸せだわ!」と直ぐに返された。
「ならチューする?」
「うぅ…情操教育上、ここはどうするべきなのかしら…!」
なんだかエリューが悩んでいれば、シルクがエリューの頬にチュッとして、
「はい、クロモリ僕らは幸せだよ?これでいい?」
「おとーさまとおかーさまはくちとくちでしてた」
「よしクロモリ!それ以上はプライベートだからね、他で言わないでおこうか!!いやこれ以上誰かに言わないでおこうね。あと姉さん、僕は今、頑張ったから、姉さんはお父様へクロモリが喋れること伝えておいてね。」
「ずっ、ずるいわ!絶対そっちの方がハードル高いもの!!」
「じゃ、宿題の確認も出来たし僕は部屋に帰るね」
そそくさと机の荷物をまとめてシルクは部屋を出て行った。
「く…っ!爆弾置いて逃げたわねシルク!」
「ばくだん?」
「あぁ、ごめんなさいね、例えであってなんでもないのよ?」
なんとなく少し引きひきつった笑みで頭を撫でてくれるエリューの手が気持ちよくて、やっぱりいつもの格好に戻って膝に顎を乗せれば、やっぱり喉がグルグルなって、手とお日様の光が気持ち良くって、そのまま少しお昼寝した。
その後の夜のご飯の時に、なんとなく変な空気をみんながまとってたのを、魔力に戻ってたクロモリはあんまり知らない。
ユリエルさん、執事のダラスにを見つけて、
「あのね!人型のクロモリって喋れるの!凄いでしょ?今日じゃなくて今度でいいからダラスからお父様に伝えてくれる?!今度でいいから」
そうやって丸投げて、できる執事のダラスさんは当然当日に伝えて下さいました。
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2月22日は最近クリスマスレベルで有名なのではないかと思うほど有名な「猫の日」です。
猫科のクロモリの日常でした。
黒豹姿で一人で屋敷の敷地から出たら、魔獣扱いされてしまいそうなクロモリさん。いつもちゃんとお約束守って敷地内でお散歩です。