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笑顔の日




「笑ったらそれだけで幸せがやってくるじゃない?」



そう楽しそうに笑う彼女に手を引かれては花壇の中を進む。



「相手に舐められてしまっては意味がないだろう?」



まだ8つになったばかりの身だが、王としての教育は威厳を持てと習ってきたが、微笑めや笑えなんて習っていない。



「王様になるって大変ですねぇ〜」

「ユーリも大変なのではないか?」



自分で巻き込んだとはいえ、この可愛らしくて少し年上ぶる彼女に、王妃教育をさせてしまっていることに罪悪感がないわけではない。



「ん〜…大変ですけど、せっかくの機会なので。それにロイ様もお忙しい中遊びにきてくれて嬉しいですわ」



口とは違いニコニコと大変らしさを感じさせない彼女に驚かされる。



「それに笑ってたって、締めるときは締めたらいいんですわ!笑わない王様よりわたしは好きです。それに勤めるなら上司は優しい雰囲気の人の方がいいなぁ〜」

「上司?」

「あ、いやえっと、例えの話で!えっと、勿論威厳も必要でしょうし、ヘラヘラとは笑ってられないけど、やっぱりたまには微笑んでくれた方が、親しみ持てて、『あーこの人の為に頑張ろ〜』ってなりません?」



クスクスと笑って語る彼女に、首を傾げる。



「頑張るのは当たり前だろう?」

「頑張るのは当たり前ではないですわ。頑張る為にはエネルギーが要るし、頑張る理由も必要だわ。自分の為でも…あとは家族のため…とかね。」

「家族の…?」


「そうですね!なにより家族が笑ってくれる為なら沢山頑張れますわ!わたくし今ならお父様やお母様や、あと義弟のシルクが笑ってくれる為ならなんだって頑張っちゃいますもの!!ね、ロイ様も弟君や妹君の為に頑張れませんか?」



そう言われて、君に言われて改めて会いに行くようになった、あの小さな手を思い出す。



「あぁそうか…頑張れる気もするな…。でも弟は王位継承権もあるしな、あまり構うと色々と周りに言われることもあるから…」

「くわっっ!!大人の事情をこんな子に!!」

「くわ??」

「……言葉のあやですわ」


謎の声に驚けば、こほんと咳払いをして微笑む彼女。


「わたくしに分からないくらい色々あるのでしょうけど、家族ですもの。いがみ合うより微笑み合いましょ?わたくしだってホントならロイ様と話すならもっとこう…お淑やかに、優雅に歩けと習ってますわ」

「そうか…」

「あ、そうした方がいいですか?」


ちょっと眉を下げて言う彼女に、首を振れば可愛らしく微笑んでくれる。


「ね、ロイ様、お互いまだ子供ですもの。わたくしには辛ければ辛い、嫌なら嫌、泣きたければ泣いたって構いませんわ。ぜーーったい黙ってますから!」


胸に手を当てうんうんと首を振る彼女に、


「それは…嫌だな」

言えば、困った様に笑われた。


「でも、ユーリの隣なら…笑える気がする」


そう微笑めば、嬉しそうにギュッと手を握ってくれる。



「それだけでもいいですわ。笑顔は幸せを運んでくれますから。大きくなってもロイ様が幸せに微笑める日々を…願ってますわ」


そう言って少し背の高い彼女は額に唇を落として笑った。




「…はっ!!つい癖で!!失礼致しましたわ!!」


何故か慌てて、オデコを拭こうとする彼女の手を止める。


「癖…?」

「あ、いや、ほら、義弟が可愛すぎてつい…同じ感じで…すみません」



なんだか胸に浮かぶ靄のようなその名前を知らない。



「姉さん!ロイ様を余り歩かせ過ぎては申し訳ないよ。ロイ様、東屋にお茶が入りましたので、もし宜しければ、御休憩されてはいかがですか?」



タイミング悪く入ってきて、そう微笑む義弟がなんとなく気に入らないが、ユーリの手前「いただこう」と言えば、ユーリは改めて手を繋ぎ、そしてもう一方の空いた手で当たり前の様にシルクとも繋ぐ。



「姉さんっ、今はちょっと…」

「今は…?」


その言葉にピクリとして問えば、ユーリはなんの衒いもなく、

「大切な義弟ですもの!」

なんて笑うが、当の弟とやらは恥ずかしそうにして居る姿が何故だか気に入らなくて、胃がムカムカとする。



「シルクはお父様の後を継ぎますから、ロイ様とも長い付き合いになるかと思いますし、どうか仲良くして下さいませね!」


ニッコリと笑う彼女に、

「…考えておく」と返事をするのが精一杯。


「二人が仲良くしてくれたら嬉しいわぁ〜」


そう楽しそうに言う彼女の後ろで、ソイツと目が合うと、はにかむように眉を下げて笑った後に一瞬なんだか気に食わない目をされた気がした。



「お前…っ」

「ロイ様、シルクですわ〜」

「…シルク」

「なんですか?ロイ様」


柔和に笑うその顔に、少し引き攣る笑顔を返す。


何故だか生まれて初めて、素直に認められない相手が出来た気がした。



「あらやだ…バチバチって、静電気かしら?二人とも大丈夫?」


「大丈夫だよ姉さん」

「気にするな」



互いに微笑めば安心したような笑顔を返され、しかし心ではこいつにだけは負けたくないと、何故だかそう心に誓った。









2月5日は笑顔の日


でも笑顔なのに初のバチバチのスタート話です。



1日遅れてしまった…!!

沢山の方に読んで頂けて嬉しいです。ありがとうございます!


少しでも楽しんで頂けるよう、これからも頑張ります!


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― 新着の感想 ―
[一言] 満面の笑顔、が一番印象に残るらしいぞ まあ乙女ゲーのヒーローのような顔面がイケメン暴力な連中には関係無いだろうけど
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