ツインテールの日 +α
「失礼します。ミラ・オーギュストです。ユリエル様に呼ばれてきましたが何か御用で…………ユリエル?何してるのよ?」
生徒会室に入ると、ユリエルと生徒会が微笑みこちらを見ていた。
二人で髪を高い位置でふたつに結んで。
「なんなの?もしかして馬鹿にしてる?」
呆れて見れば、慌てた様に手を前で振るユリエル。
「誤解よ!!今日はミラさんの日!ツインテールの日よ!!?それならばとツインテール仲間になってみたかったのよ!」
「いや、それアタシの日じゃないし。それより生徒会長まで巻き込まないで!?女生徒憧れの生徒会長になんてことさせてんのよ!!」
「いやぁ、ユリエルくんがぜひ一緒にって結んでくれるものだから」
「断って下さい!生徒会長!!」
「だって一緒に結べそうな長さの人、レイさんかベレト先生しか居なくて、ならレイさんを選ぶでしょ?」
「光栄だね」
「会長!光栄ではございませんわよ!!?」
「そうか…あとはリランさんがいましたわね…でもリランさんにツインテールはイマイチ似合わない気がしない?」
「ユリエル……あんたもあんまり似合わないわね…」
そう言うと、窓の外で雷が光った。
「キャッ!!え!?いきなり!?」
「……気付いておりましたわ!!わたくしやってみたものの自分でも、ちょっと違うなーーとは気が付いておりましたわ!」
「あ、気にしてたの?ごめんね?」
「いえ、素直に言って頂けて良かったわ。一度くらいやってみたかった月のプリンセスに憧れたところで、自分の見た目が火星の子タイプ…なんなら宝石の名前でも付けられて相手側に居る方が似合う事なんて気がついておりましたもの……」
フッと綺麗なその少し切れ上がった目を細めながら、サラリと夜空の様な髪をほどき呟く。
「いや、全く何言ってんのかわかんないんだけど?」
思わず聞くが、ユリエルの耳には届いていない様で、
「はっっっ!!お母様!!お母様こそ似合うのでは!!?天然の色味があれなら……!!何故わたくしにもあの血が遺伝しなかったのかしら!!?」
「ユリエルくん、そろそろこれ外していいかな?」
「まぁ!!そうですわね。レイさんお付き合いありがとうございました。お座りになって?御髪直させて頂きますわ」
生徒会長が肩をポンと叩いて我に帰ったところで、ソファに座らせその髪を解いて直す。
「いや、アタシ何の為に呼ばれたの?」
「ミラさんもこちらに座って?一度その髪触ってみたかったのよ」
生徒会長はソファを離れて「どうぞ」なんて麗しく微笑まれたので「失礼いたします」と座れば後ろに立つユリエルが「髪を解いて良いかしら?」なんて言うものだから、了承すれば丁寧に丁寧に髪を解かれる。
「ミラさんは下ろしてもお綺麗ね。毛先がオレンジなのも可愛いわ」
そう言いながら、髪を弄られる。
「ユリエル慣れてる?」
「慣れてないわ。前にレイさんのお髪で遊ばせて頂いたくらいですわ」
「……生徒会長、今回だけじゃないのね」
「ほら、わたくし女の子のお友達が居なくて…憧れてたのよね。こんなことするの」
前に回って前髪からサイドを溶かす貴女を見上げれば、ちょっと寂しそうな顔が見えたものだから、
「貴族はこんな風に髪を弄って遊んだりしませんわ。こんな事は使用人にしてもらうもの。…だから、ユリエルがやりたいなら、まぁアタシがたまには付き合ってあげてもいいのだけど」
なんて言えば、キラッキラした瞳を向けられたと思った瞬間正面から頭を抱えられる様に抱きしめられた。
「ミラさん優しいわぁ!!なんて優しいのかしら!!?その気持ちが嬉しいわ!!しかもちょっと最近デレが多くなったのも可愛くて可愛くて堪らないわぁぁぁ!!」
ぎゅうぎゅうとされて、その腕を必死で掴むが気が付いて貰えない。
「ユリエルくん、ミラくんが男の夢みたいな死に方をしそうだよ?」
「え?」と間の抜けた声で手を離されれば、その胸が顔から外れてゼェゼェと息を吸う吐くを繰り返す。
「ご、ごめんなさい、ミラさん?」
「ユリエルあんたね!…なんか憎らしいわっっ!!」
「いや、もうこれは遺伝なのか仕様なのか…、自覚なく申し訳無かったですわ…。いや、でもレイさんの言い方もどうですの?」
「確かに…」
思わず女子2人で見つめれば、なんの衒いも無く「いやぁ、私も男だからねぇ」なんて微笑み返された。
「なるほど。ならば仕方ないですわね」
「そこはいいのね!?」
「レイさんも思春期男子ですもの。」
頷くユリエルに驚いて返すが、更に謎の返しとうんうん頷くユリエルに、なんとなく呆れながらも、
「とりあえず早く結び直してくれない?」なんて言えば、またキラキラとした顔をしてなんの歌かも分からない鼻歌を歌いながら、髪の毛を触り始めた。
******
「ミラさん…姉さんに甘い顔しちゃダメだよ?際限無くなるよ?」
暫くしてユリエルを迎えに来たらしいシルク様に言われ、なんだか頭は二つお団子を作られて、ふんわりと仕上げられながらもまだまだ弄られてる状況に「学習いたしましたわ…」と力無く答える。
「違うのよ?ほら!最初月のプリンセス的なイメージだったけど、その娘ちゃんの方が似合う気がして、そしたらお団子の形を変えた方がいいかな〜なんて思ったら最初からやり直して、でもね、ほら可愛いでしょ?」
「うん。よく出来てるとは思うけど、ミラさんが疲れてる事に気が付いてあげて?」
そう言われてやっとこちらを見られたので、ジトっとした目を向ければ我に帰ったらしく、「ご、ごめんなさい!!」とその手を広げて……2回目なので反射的に顔とソレの間に手を入れて呼吸軌道を確保する。
「…何コレ!!重っっ!!!」
掴んでしまったソレに対して思わず出た呟きに「わかりみしかない」とか謎の返事をされたので、更に思わず一度持ち上げる。
「重っ!!」
「こんなに要らないわよねぇ?」
「あんたこれ大変ね!!」
思わず言えば「ごほんッ」とシルク様の咳が聞こえて我にかえる。
「し、失礼いたしましたわ」
「同性ですもの。気になさらずに」
「こちらも眼福だしね」
「んなっ!?レイさん何を言ってるんですか!?」
シレッと挟まれた生徒会長の発言に、シルク様の慌てた声。
「なんか…頭痛くなってきたわ…」
「まぁ!ミラさん!!今日は頭痛の日でもあるそうですわ!!!」
「頭痛の種に言われても……」
「お友達だと互いに頭痛めながら成長していきたいですわね」
なんて笑う物だから、
「そうね」
って、苦笑いに嬉しさ隠して返してみたわ。
2月2日はツインテールの日と、頭痛の日だそうです。
ツインテールと言えばミラさん。
※日付は曖昧にユリエル達が二年生、レイが三年と思って下さい。曖昧などこかの合間の話です。
あとは今日は節分と、夫婦の日でもあるそうです。
その日とするならセルリア夫妻の話もいいですが、イチャコラして終わりそうですね!w
2月1日より本編のタイトルが「悪役令嬢なんてもうちょい若い子に任せたい」に変わりましたので、こちらのこぼれ話と必然的に変更させて頂きました。
本編と違い、不定期掲載ですが、引き続きよろしくお願いしますm(_ _)m