シルク編
「おはよう」
「おはよう……」
挨拶をすると朝の寝ぼけた顔の彼女が目を開けるのを覗き込んでいれば、嬉しそうな笑顔に変わる。
「お父様が今日はクリスマスパーティーを開くって」
「ホントに!?ふふふっ、お父様いつも忙しいのに家族に時間を割いてくれて……大好きだわ」
クスクスと口元と共に布団に隠した笑顔をそっと撫でて、
「支度したら早く起きなよ。今日はドレスコードありの家族パーティーだから、アナに着飾って貰うんだよ」
うんうんと寝起きの強くないからかすぐに起き上がらないその様子に満足して僕が部屋を出て行くと、入れ違いに侍女が部屋に入り彼女に声を掛けたので、きっと動き出すだろうと扉を閉めた。
*****
「お父様〜お母様〜!沢山の準備をありがとう!!みんなも素敵な飾り付けだわ!!ふふふっ……これだけでもう充分なプレゼントね!」
嬉しそうに満面の笑みを浮かべる姿に屋敷の人間にも笑顔が伝染していく。
「ユーリ、これはお父様からのプレゼント」
「これはお母様からよぉ〜」
両手に渡されたそれを嬉しそうに抱きしめて笑うその姿に両親は幸せそうに頷くと、
「ん? シルクからはまだ貰ってないのかい?」
「んっ・もうヴォルさんたら、2人の頃合いっていうのもあるでしょう?ねぇユーリ、シルク」
両親の言葉を聞いて、期待を込めた瞳で僕を見られてしまえば、渡さざるを得ないと眉尻を下げて笑えばプレゼントをアナに預けて駆け寄ってくる。
「何をくれるの?」
「なんだろう」
「そうよね。プレゼントだもの内緒よね」
「そうだね」
「なら当ててみようかしら」
顎に人差し指を親指だけ伸ばした手で推理をしているその姿に笑みが溢れながら、ポケットからそっとプレゼントを出してみれば、
「ダメだわ、降参よ!!ねぇ教えて!?シルクお兄様!!」
「………ん?」
その言葉に思わず手が止まり固まれば、見上げてくる黒く大きな双眼は不思議そうに瞬く。
「どうしたの?お兄様」
「お兄……様?……なんだか違和感がね」
「えぇ?今更??」
「…………あのさ、名前で呼んでくれる?」
何故かわからないけど照れ臭くてそう言うと、彼女は頷き「シルク」と笑う。
「……でもソレ、なんだかプロポーズみたいよお兄様」
そう言って恥ずかしそうに赤くなって行く姿に僕も自分の言葉を改めて考えて、
「あ、いや、その、お兄様で……、いまはまだ……」
そんな余計な一言を言えば、周りのみんなが口の端を上げるのを必死で堪えている様子に、僕の顔も真っ赤になっていく。
「ふふふっ、お兄様、わたくしからもプレゼントよ♡」
綺麗な両手を重ねたその中にあるものを覗き込もうと近付けば、開くと同時に大きく溢れ出てくるのは彼女の召喚獣のジュリ。
あっという間に僕の身体に巻き付いて顔の側で嬉しそうに舌をだして嬉しそうに踊っていれば、家族や使用人一同も僕をおいて楽しそうに踊り出す。
「待って姉さん。何コレ」
「わたくし義妹ですわよ」
「そうだっけ!?」
「そうよ。決まってるじゃない」
笑うその姿に疑問を持ちながらも、彼女が嬉しそうで楽しそうならまぁいいかと……、なんだか寝苦しい夜を過ごした。
クリスマスに魘されるシルク。
多分ジュリが勝手に巻き付いてると思われ……