ロイ編
「ロイさん、お疲れです?」
「……ん?……あぁ、すまん。気が抜けてたな」
執務室で休憩にとお茶を持って来てくれたユーリの肩に、いつの間にかもたれていたことに驚き目を覚ませば優しくこちらを見る眼差しと合った。
「遠慮なく寝てくださいな」
ポンポンとその腿を叩くのは膝枕への誘いなのだろうが、俺は残念だと首を振る。
「午後までにどうしても仕上げてしまいたいことがあってな……。少し寝かせて貰えた今ので充分だ。ありがとうユーリ」
そう言って額へとキスを落とせばユーリは照れたのを誤魔化すように大袈裟に手を上げると、
「でしたら、そのパワーを差し上げますわ!」
そう言って空だったカップにお茶を足すのを見て、疲れを取るためだと砂糖でも入れるのだろうと様子を伺えば、指先を合わせてハートとかいう形を作ると、
「ユリエルパワー注入ですわ。もえもえキュンキュン♡おいしくなぁれ〜……じゃなくって、元気になぁれ☆」
「ハハハッ…! なんだそれは?!」
思わず笑ってしまうとユーリは嬉しそうに微笑みこちらをみる。
「元気出ました?」
「たしかに出たな」
崩れる口元を抑えて言えば、ユーリは温かな紅茶を渡してくれてそっと手に持たせてくれてカップ以上に暖かな手を俺の頬へと当てて、
「無理なさらないで下さいね。疲れたらいつでも帰って来てください。ロイさんが国民の皆様を一番に思う分、わたくしはロイさんの身体を一番に思っていますわ」
「…………いいや。俺の一番はユーリ、お前だ」
そう言って一口飲んだ紅茶はテーブルに置いて、その綺麗な瞳に近付き鼻が当たりそうな距離になった時……、
「ロイ様、午後の会談についてのお話しが……」
ノックの音と聞こえた声に、ユーリが慌てて俺の胸を押すのをそっと掴み少し強めの口調で口を開く。
「一刻休ませろと皆に伝えろ。そのくらいなんとかなるだろう」
「ハッ、畏まりました」
去っていく気配と共に、ドアから視線を戻せばユーリは驚いた顔を向け、
「大丈夫ですの?」
そう聞いてくるのを唇で止めながら、指を鳴らして風魔法で鍵を掛け…………そのまま何よりも休めるそのあたたかな胸の中へと心を埋めた。