ロット編
「ロットさん、これどこに置きますか?」
「あ〜、目立つとこに頼むわ!姫さんやったらえぇとこ置くやろ」
「……はい。かしこまりました」
今日は2人でバタバタと夕方に開店する出店の飾り付けや新商品にプレゼント用の包装やリボン。
クリスマス前の店はどこもかしもこも忙しくてオレも姫さんも休む暇も無く駆け回る。
「あっ、姫さん!それはえぇ値段のやつやから会計の近くに置いといてな。盗まれても壊されてもたまったもんやないんよ」
「……は〜い」
パタパタと互いに駆け回りながらもクリスマス限定の飾り付けは着々と進み、見れるようになったとそろそろ周りを囲った布を取ろうと思うが……、
「いやぁ〜クリスマスいうんも定着して、売り上げ期待出来るなぁ」
「……そうですわね」
「………あの、姫さん? ところでさっきからなんで不機嫌なん?」
朝会った時は普通だったはずなのに、なんだか時間経過につれ声が沈んでいくようすに横に並んで笑みを浮かべて聞いてみるが「なんでもありませんわ」と笑顔を返され……、
「いや、営業スマイルとしてならえぇけど、オレに対していうなら下手すぎるわ。言いたいことあったら言わなわからんよ……」
カツラで隠した髪はいつのも黒髪ではないのがなんとなく寂しくて、指先で遊びながら聞くとその瞳は少し逸らされたが……そのまま見つめて言葉を待てば、観念したかのように瞳を閉じてその唇が開く。
「あの……『姫さん』、は、もう卒業、したのでは……などと……子供っぽいことを思いまして」
その恥ずかしそうな言い方に思わず手から髪が滑り落ちる。
「あの、すみません。ここからはお仕事としてもちゃんとしますので」
両手で顔を押さえて座り込むオレを見て怒ったとでも思ったのか、慌てた様子で告げる彼女の腕を引き寄せれば、そこはカーテンと荷物の隙間で……きっと誰にも見られてないとその唇を奪って抱きしめて、
「ごめんな、エルって呼ぶと歯止め……まだ効かんようになる気ぃしてな」
耳元で告げれば、そのまま慌てたように首を振り「ああああのっ、いえ、大丈夫です!?」そんな相変わらずの色恋沙汰に弱く可愛い姿が見えて、もう一度見られてないことを確認して……そのまま唇を重ねた。