グラヴァルド編
「雨じゃのぉ……」
「グラヴァルドさんは雨が苦手ですか?」
「そんなことはないがぁ〜、ワシは炎の魔力じゃからかのぉ。まぁあまり好きとは言えんがぁ、無きゃ困るもんだとはぁ理解しとるがぁ……」
「ふふふっ、苦手なんじゃないですか」
お嬢ぉはクスクスと笑いながら外を見ていた窓についとる白いカーテンを閉めると、一人がけのソファで天井を見上げて寛ぐワシへと近付いて綺麗な顔で上から覗き込んでくる。
「お嬢ぉ……」
呼ぶより先にその綺麗によって手がワシの目を塞がれた。
「グラヴァルドさんいつも頑張ってらっしゃるのですから、こんな日はゆっくり休むといいですわ」
「いや……しかしのぉ、そろそろ日課の鍛錬をせにゃぁ……」
なんとなく照れ臭くなってその手をそっと掴んでどければ、ぷくっと頬を膨らましたお嬢ぉの顔が目に入る。
「……お嬢ぉ?」
「今日はわたくしが居るのに?」
いつもと違う子供っぽいその姿にワシの頭はやられて、魔力が巡ったのかと思うほど全身が熱くなる。
「ほ、ほうじゃのぉ!今日は、夕方に、するかぁ!!」
何故か閉じることのできない目のままでそう告げれば、嬉しそうに首を傾げて笑う彼女は移動して、
「それなら、グラヴァルドさんの重しになっちゃいますわ。ふふふっ、グラヴァルドさんもお祖父様と一緒でわたしなんて軽すぎるって言われちゃうかもしれませんが」
そう言ってワシの膝の上に座るとそのまま背もたれにもたれるようにワシへと背中を預けると、そのままこちらへと見上げて、
「寒い日はグラヴァルドさんはあったかくて……安心、しちゃいます」
恥ずかしそうに笑うお嬢ぉの顔を見れば、更に熱が上がった気がした。