いい風呂の日
当たり前だけど赤ちゃんの頃、お母様や侍女の人がお風呂に入れてくれた。
幼い頃もそのままお風呂にいけば侍女の人が居て至れり尽くせりだった。
8つの頃「自分で出来る」って言ったけど「貴族の美しさを守るのも私どもの仕事です」と言われたら断れなかった。
10の頃、シルクは一人で入ってると知った。
その頃はもう侍女の人のゴッドハンドで頭皮マッサージとかされながらお風呂に入る天国を知ってしまってた訳ですよ。
10歳同士だし姉と弟。まだセーフじゃない?と思って、
「シルクーーーーー!!!頭洗ってあげるーーー!!」
って執事さん達をすり抜けて風呂突入した時の、めちゃ慌てて溺れそうになったシルクと、その後に中身いい歳してお父様に怒られた。…嗜みでちゃんとシャツとかは着ていったのに。
まず貴族は兄弟でも一緒に風呂は入らないし、大衆浴場も無いし、一般的に風呂自体が普及してないし、あるとするなら騎士達の合宿所とかそういったところくらいでしか大きな風呂で入ることはないらしい。ショックだった。
「お…お父様、ならわたくしはどこでシルクを愛でたら…」
「いや、ユーリは充分に普段可愛がってるだろう?」
「あのヘッドマッサージの幸せをシルクにもしてあげたいだけなのにっ」
「……うん。じゃぁ僕の方から誰かに頼んでやってもらう様にするよ」
「わ…わたくしのここ半年、日々技術を盗んで枕相手に練習を重ねた意味は…」
「そんな事してたのかい?…じゃぁ…」
その日の夜お母様にする事でとりあえず妥協したけど、長いし毛量多いし圧倒的コレジャナイ感。
でも風呂突入から一週間、シルクにさりげなく目を逸らされて、さりげなく逃げられる日々と、風呂入る時部屋の鍵は掛けられるし、なんなら執事長のダラスまで見張りに立ってる徹底っぷりされて…
「ユーリちゃん?諦めなさい?」
と、お母様に地味に怒ってる時の「ちゃん付け」して言われて、わたしのゴッドハンドをシルクに使うことなく終わったのでした。
わきわき…
ユリエルはいまだに「美容院にあるシャンプー台があれば…!!」とか思ってる。
時折更新します。