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異世界恋愛短編集

幸せを失くした彼女が幸せを取り戻せるのは彼がいなくなってから

作者: 来留美

今日、私はおじいちゃんから手鏡をもらった。


鏡の周りや手持ちの部分は水晶がついているような、透き通っている石でできていた。


無料(ただ)でくれたものだから水晶じゃないのは分かっている。


でも、とっても綺麗でずっと見ていても飽きないほどだった。


私はこの手鏡を毎日使い、大切に扱った。



そんな毎日を過ごしていたある日、事件は起きた。



眠っている私は夜中に部屋中が明るくなり目が覚めた。


手鏡が光っている。


私は手鏡を覗きこんだ瞬間、手鏡に吸い込まれた。


目を覚ますと穏やかな風が流れ、草原の草花がゆらゆら揺れている、そんな草原の上に立っていた。


自分に何が起きたのか分からず身動きがとれないでいた。



「やっと会えた」



後ろから声がして振り返る。


そこには私に笑顔を向けてイケメンな王子様が立っていた。


しかし、王子様に違和感を覚えた。


服装がスーツみたいで、スーツの生地に輝くものが入っているのかキラキラ光っていて高そうな感じ。


こんな服装をしている人、見たことがないから違和感があるのかもしれない。



「どちら様? ここはどこ?」



私は今のこの状況を理解したくて彼に聞いた。



「ここは君の世界とは違う、鏡の世界。

そして俺はこの世界のプリンスなんだ」


「夢だよね」


「夢じゃないんだ。君は俺に選ばれたんだ」


「あなたに選ばれた?」


「そう、君は今日からこの国のプリンセスになるんだ」


「プリンセス?」


「君がプリンセスとして役目を果たしたら元の世界に戻れるんだ」


「何をすればいいの? ですか?」



言葉遣いがおかしくなるくらい私は驚いていた。



「この世界の民を幸せにしてほしいんだ。」


「この国の人達は幸せじゃないの?」


「この国には光る石があるせいで、民達が取り合いになり争いがよく起こるんだ」


「光る石?」


「君の手鏡についてる石だよ」


「あの綺麗な石ね」


「あの石は人々の心を惑わすんだ」


「その石が、ある場所へ連れてって」



私は彼に石のある場所まで連れて来てもらった。



「やっぱり綺麗」



私は石に触れる。


すると石は透明さを失くし、ただの石になった。



「何でただの石になったんだ?」


「分かんない。私はただ、触れただけ」


「プリンセス、その耳に有るものは何だ? さっきまでなかったはずだが」


「えっ、何でイヤリングが?」



私は耳についていたイヤリングを外す。


キラキラと輝いている雫の形をしたイヤリング。



「それ、さっきの石だよな」


「えっ、そう言えば光かたが同じだね」


「もう1つ石に触れてみてくれ」


「うん」



やっぱり私が触れると、ただの石になった。



「次は指輪になったぞ」


「何で?」



指輪は私の指にはまって、キラキラ輝いている。



「君の役目はこの石で争っている民の為に、この石を民のほしいものに変えてくれ」



そして私は人々の為に石を変えることになった。


毎日、毎日、人々の願いを聞いていろんなものに変えた。


ある人は、ガラスの靴のような靴になったり、


ある人は、輝く石のお花になったり、


ある人は、一本の歯が輝く石でできたり、


ある人は、フライパンが輝く石でできたり、


いろんなものが石でできた。



「プリンセス」



今日の役目は終わり自分の部屋へ戻ろうとしたとき、彼に呼び止められた。



「どうしたの?」


「君に話したいことがあるんだ」


「何?」


「俺の部屋へ来てくれないか?」



私達は彼の部屋へ入る。



「この本を見てくれないか?」



私は彼から渡された絵本を読む。



『幸せを失くした男の子が幸せを取り戻せるのは女の子がいなくなってから』


凄く不思議な題名だった。



本のお話を簡単にまとめると、


【幸せを失って不幸ばかりが男の子の元へやってくる。


男の子はその不幸から逃げることもできず、だだ泣くだけだった。


そんなある日、女の子が現れた。


女の子は幸せしか知らない。


女の子は男の子に不幸を自分にも分けてほしいと言った。


男の子はそんな女の子に全ての不幸を与えた。


女の子は不幸など知らない。


知らないけれど女の子に笑顔はなくなった。


そして大きな不幸が女の子の命を奪った。


男の子は女の子がいなくなっても泣かなかった。


男の子には不幸はいない。


幸せしかいないのだから泣くこともない。


幸せを失くした男の子が幸せを取り戻せるのは女の子がいなくなってから、ずっと幸せは続いた】



「考えさせられる話だね」


「この話は昔から言い伝えられているこの世界の話なんだ」


「昔から?」


「この話はもしかしたら俺達じゃないかって」


「私達?」


「これを見てくれ」


「私の手鏡?」


「これは俺のなんだ。

この中を覗いてみて」


「私の部屋?」


「俺はこの手鏡から君を毎日見てた。

君に会いたくて、話したくて。

すると君がこの世界に来てくれた」


「私の手鏡と繋がってるの?」


「そうだと思う。

君は俺の命でもある、この世界の人々を幸せにしてくれている。

俺も君が隣にいてくれるだけで嬉しい」


「それだと私は死ぬってこと?」


「それだけは避けたい。」


「でも、どうすれば?」


「分からない」



「ちょっと待って。

私は不幸になんてなってないよ?」



そうよ。


よく考えれば私は不幸になんてなってない。


ただの絵本なんだから。


大丈夫。



「俺は君が心配なんだ。

もし、君がいなくなったら俺はどうすればいいのか分からない」



「大丈夫。私はいなくならないよ」


「その言葉はどう受け取ればいい?」


「私もあなたと離れたくないなと思ってる。

でも、自分の世界に帰れるなら帰りたい」


「そうだよな。家族が待ってるだろ?」


「うん」



私も彼とは離れたくないよ。


でも、家へ帰りたい気持ちもある。


一生、会えなくて寂しいのは家族?彼?


私にはまだ決められない。


どうすればいいんだろう。




私がこの世界に来て、どのくらいたったんだろう。


私はほとんどの人々を幸せにした。


そして最後の1人の元へ向かう。



「あなたの願いは?」



私は彼の部屋へ入り、彼に言う。



「俺の願いは君がこの世界でずっと俺の隣にいてくれること」


「それは石では叶えられないよ」


「それなら君の願いは?」


「私は…………」


「どうして泣くんだ?」


「私の願いはあなたとは逆だから」


「帰りたい?」


「うん」



私は頷きながら言った。



「そうだよな。

俺だって君の立場だったらそう思うよ」


「ごめんね」


「謝らないでくれ。

俺が悪いことしてるみたいだ」


「私が自分の世界に戻ったらまた会えるように願ってよ」


「うん。

最後に抱き締めてもいい?」


「うん」


私は彼に抱き締められた。


彼の腕の中は暖かい。



「俺の願いは君が元の世界へ戻って幸せに暮らすこと」



彼はそう言って石を私の手に持たせた。


石は今までで一番と言えるくらい美しく輝き私は目を閉じた。



「俺は男の子じゃなくて女の子のほうだったかも」


私の唇に彼の唇が触れた感触がした後、

彼の声が遠くから聞こえた気がした。






私はいつものようにベッドから起きた。



「何で私、泣いてるの?」



自分の目から涙が流れているのに気づいた。


何故か長い夢を見ていたような感覚がある。


私は涙を拭いてベッドから出る。


いつものように手鏡に挨拶。



「おはよう。可愛い鏡さん」



鏡は私の挨拶で輝いた気がした。



私はいつものように準備をする。


大事な


大事な


鏡を鞄に入れて。

読んで頂きありがとうございます。

ハッピーエンドなのかバッドエンドなのか分からないような作品になりました。

家族か、彼かを選ぶのは凄く難しいことで私も悩みました。

皆さんはどちらを選びますか?

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― 新着の感想 ―
[一言] 異世界恋愛の作品も素敵です。 楽しませて頂きました。
2020/10/14 10:31 退会済み
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