再会は、夢うつつに (sideエヴァン)
がくん、と崩れた身体を、慌てて抱え直した。
そっと寝台に華奢な身体を横たえ、毛布を掛けてやる。真っ赤な頬についた涙の跡が痛々しい。そっと指先で目尻に溜まった涙を拭った。
「……謝らないといけないのは、僕のほうだよ」
苦い思いで呟く。彼女のクリストハルトを想う気持ちに気づいていながら、ずっとそれを踏みにじるような真似をしてきた。それでもこうして慕ってくれる彼女が眩しくて、胸が苦しくなる。自分は彼女が思うほど、できた人間ではない。
きっと、彼女は知らない。エヴァンがアイリスに嫉妬していたことも、彼女への愛情と同じくらいの憎しみを抱えていたことも。
『お二人の関係を、わたくしは否定しません。愛することに、理由はありませんもの』
十人いれば十人とも否定する自分達の関係を、そんなふうに認めてくれた彼女に、その時確かに救われたのに。
たとえ家族のようにしか思われていなかったとしても、確かに彼に愛され、その上堂々とクリストハルトの妻として立てる彼女が、羨ましくてたまらなかった。いつかは彼との子を産み、さらに妻としての地位を盤石にしていくであろうことも。妹のように愛している彼女にそんな思いを抱いた自分が嫌で、さらに彼を惨めな気分にさせた。
「……でもね、アイリス。どれだけ憎んでも、僕が君を嫌うなんてありえない」
その言葉は確信のようでもあり、誓いのようでもあった。あるいは覚悟だったかもしれない。
五人きょうだいの末っ子として生まれたエヴァンはもちろん、三人兄弟の長男として生まれたクリストハルトも、アイリスを実の妹のように可愛がった。二人にとって、アイリスは宝物と言っても差し支えない存在だ。
「おやすみ、僕たちの可愛いお姫様。せめて夢の中では、悲しまないでいて」
汗ばんだ額に口づけを落とし、部屋の外に控えていたアイリスの侍女を呼ぶ。一礼して部屋に入っていく侍女を見送って、エヴァンは長い廊下を歩きだした。