第五話 清の牙
眠い、しぬるぅ…
なんて疲労の中で書いたから午後になって大改修しました(涙)
早くに読んでくださった方、すいませんでした
誤字脱字の多さに全自分が泣きました〜〜〜
鎮守府の門には遅い時間になっても忙しく人が出入りをしているが
係留された艦艇の魂達の姿はどこにも見られなかった
休日をもらった艦魂達とは別に水兵達は慌ただしい
洋上の係留場所は艦に残った水兵達が少しずつ雨雲を呼ぶそらに嫌みな顔を見せていた
今日が休暇になった者達を羨みながらも、雨がふれば休みのありがたさも半減だろうという笑み
後部甲板に駆けられた綱
晴れを待っての洗濯物を取り込むもの達、夜に入る準備の中
前部甲板で酒を煽っていた三笠のところに厳島はやってきた
チーク材の甲板の上をどこか楽しそうな笑みのままスキップすると
手に持った小鉢を月明かりに照らして見ていた厳島は、自分の後ろについて歩いていたテイに渡す
小さな彼女の小さな歩みは三笠に近づくと「相変わらずね」という目のまま
「一人で飲むのがすきなの?」と
いつもの舌足らずな口調で聞いた
三笠は先ほど味わったばかりの重い気持ちに、けだるそうに手を振って「別に」と返事しながら彼女の後ろにいる「テイ」と呼ばれた初めて見る艦魂の顔を見た
銀の短髪
白い肌にマゼンタの瞳、何より彼女の印象づけるものとして高い背丈
180を越えるであろう長身の魂は、冷めた表情のまま三笠にお辞儀した
横須賀に着いて以来初めて見る顔の艦魂
テイと紹介された艦魂の両手は大小の皿をたくさん持っていた
なんの支度かわからないが、きになる点をじっくりと見つめる三笠は
「よくこれたな、ここまで」
厳島が船酔いの激しい魂で、なかなか他艦にはこない事を引き合いに聞いた
「今日はお休みだし、揺れてないわ」
絡み酒っぽくなった三笠の口調に
厳島はいつもの顎挙げスタイルで答える
確かに今日は穏やかな日だった。雨の続く季節間を縫うように晴れた波のない港
休みを味わっていたのは何も人だけではなく艦魂達も静かな波の中で艦を休めていた
「プリンセスはこんな時間に何してるの?」
何も無くても他の艦魂は夕暮れ時を素切れだ自艦に入り出てくる事がない
それが今の帝国海軍
厳島も習慣的にそうなのか、この時間に外にいたところを見た事はなかったのに
今日はさらに遅い時間に外にいるというのは気になる事
それに二人が会うのはしばらくぶりだった
三笠と厳島は艦体の性能上の問題と、燃料の供給の問題で揃って演習にでた事は二度しかない
ほぼすれ違いの日を過ごしていたので久しぶりに顔を合わせたことになるが
たがいに妙な時間に顔を合わせたものと苦笑いを交わすと
厳島は
さらに顎をツンと上げた顔で三笠を指差した
「今日は妾に貢ぎ物が来る日なのよ」
「貢ぎ物?」
厳島の会話はどこか飛んだところがある
いきなり「貢ぎ物」とか、顔をしかめて三笠は思い出した
ココに詰める艦魂は「プリンセス」とあだ名した彼女の事を一言で表すのならという質問に口を揃えて
「変わり者」と返していた
変わり者の彼女だが、横須賀に詰める帝国海軍の艦艇の中では唯一演習で艦首前に立ち、魂としての仕事をまっとうしているという点で三笠は好感を持っていた
だが艦艇めぐりで彼女を訪ねた事はなかった
前序のごとく唯一勤めを果たしている彼女に話しを聞くのは最後でもよいかという安堵感があったこともそうだが
彼女は船酔いの激しいため他所に出かける事が出来ない
これだれけでも変わり者とも言えたが、とにかくそういう経緯から呼び立てるのも悪いし
演習から帰ってきたら
体が小さい事も関係あるのかもしれないが、疲れ切ってダウンするという事を松島司令や他の魂から聞き及んでいたので夜に尋ねるのは遠慮していた
ところが今日は思いのほか元気そうだ
貢ぎ物に困惑の顔を浮かべている三笠を笑いながら、休日を心から楽しむ笑顔の厳島は飛び跳ねるように続けた
「今日は妾のための宴が催されるのよ!!」
そういうと
雨のベールを持った霞みの月を指差して
「う〜〜ん月もキレイだわ〜〜ん」
うっとりした表情を見せる
三笠は酒瓶を横に、この「宴」というものをどうしたものかと考え込んだ
基本、基地に駐留する艦艇である。それが示すものに本来休日は無い
艦艇はいつ何時でも出撃ができるだけの支度はされていて、宴などという興じなどあっていいものかと悩むもので、それ故にあまりに脳天気な厳島をしかった方がいいのか困っていた
(ちなみに酒は帝国海軍の時代には勤務後なら許されている)
「いらっしゃいよ、招待したげるわ」
酒瓶の首をもったまま、思案にくれる三笠にお構いなしの厳島
熱い酒の息を吐く姿に別の声がかかる
「ご一緒なさって下さいませ。三笠司令」
一人浮かれた足取りの厳島の後に付いてきていたテイが腰を低くしながら声をかけた
精錬された顔つきに、美麗な銀色の眉しかし今まで見たことのない艦魂がいる事は気になる
腰を上げた三笠に厳島は
「参加させてあげるわ、妾の艦に来なさい!」
偉そうに小さな仁王立ちの前
三笠は反抗の声は入れなかった
松島の問題発言で少し煮詰まってしまっていた事も手伝っていた
あの言葉は心に刺さっていた
「戦いたくない、死にたくないから」
司令艦であった彼女の発言の元にあるのは前の海戦の事
三笠は厳島は変わり者だが、それでもかつての戦いを松島と共にでた経験者である事を思い出した
知らないままではいたくない前の戦い、彼女なら素直にその事を話してくれるのではと思もあったし、さらに厳島が係留されているバースにいる海防艦達とあえるなら、自分で彼女達の部屋の戸を叩く手間が省けるというもの
「宴」と言う以上は、酒の席という事もあり
予想外の話題を拾う事もできると考えたし、何より明日もまだ港に居られる日だから
早寝を義務として断る理由はなかった
「宴、参戦させてもらう」
頭を掻いて酒瓶を抱えると
テイを後ろに歩かせた厳島の後ろに従って彼女の艦に飛んだ
巡洋艦厳島はこの日、鎮守府の一番端に係留されていた
鎮守府の正面に作られた係留所には横須賀演習における第一軍とされたイギリス産艦艇が並ぶようになり
厳島達は少し離れた場所に、今月から配置を変えられていた
唯一、松島だけが三笠達のいる係留場の近くにいたが二等艦のあつかいになった他の艦艇はこちらに寄せられている形だった
横須賀の鎮守府は未だ建造を続けている帝国の重要拠点だった
かつては閑散とした田舎の漁師村だったココをはじめ帝国海軍は長く間延びしている国土の防衛のために何カ所かの鎮守府の造営を行っていた
横須賀は二年前にバラバラに作られていた造兵廠纏め合わせたうえで拡張の工事は未だ続いていた
ココに水雷関係の学校を作るため丘を切り崩す作業などが行われ、港は細かく区分けされているのが現状
「人」は戦争に向かっていく今の流れの中でやり残しのないようにと寝る間も惜しんで国の守りに力を入れている証ともいえた
そんな中
厳島と橋立は二艦をくくりつけるように係留されていた
場所は鎮守府の一番端であり
外洋にでる事なく艦上訓練だけはほぼ毎日繰り返されていた
静まった洋上に鎮座して自艦の上に舞い降りた厳島はご機嫌だった
「待たせたな!!皆の衆!!」
後に従って光りの輪から飛び出した三笠は眼の前にあった景色に驚いた
厳島の甲板には二十人近い人影どれも軍属とはかけ離れた着物姿の女達
ボロに近い着物で容姿もあか抜けないし小柄で皆140センチ台の身の丈
黒髪の
日本の漁船の魂達
「御ひー様!!」(お姫様が鈍った呼び方)
顔をススで黒くしたままの娘が感激の声を挙げると一同急にひれ伏した
二十人近い小粒な魂達は恭しく頭を甲板に擦りつけるように礼する中
遅れてきた主役、そう言わんばかりの厳島は手を挙げ
「良い良い、皆面を上げよ」
浮かれた声で顔を上げた船魂達を見回した
「うん、皆元気そうでなによりだ!!」
最初に声を挙げた愛嬌の良い丸い顔の船魂は
「新しい船酒が出来たんですぅ。お納めいたします」
もう一度擦りつけるように礼をしながら手の中に土器の空焼きで出来た器を前に差し出した
それを合図にしたように後ろに並んでいた船魂達が我も我もと包みに持った物を厳島の前に広げた
「ニシンの乾物が出来ましたんで納めます」
「イサキの生きの良いもってきますたぁ。お納めすます」(方言入ってます)
差し出される食べ物と酒
テイは運んできた皿を並べ船魂達が納める貢ぎ物をキレイに乗せていった
「なんだコレ?」
当たり前のように貢ぎ物を差し出す船魂達の姿を見ながら
目の前の出来事にただ呆然としている三笠は彼女達の前自艦前甲板の先っぽに一段高くした箱を置いて座っている厳島に聞いた
「プリンセス、これは何のマネだ?」
満面の笑みが答える
「妾に対する感謝を示しているのよ」
「感謝?」
状況を読み切れない三笠の顔に
「妾はこの国を護るという職務を持つ艦なのよ,「帝国」にとって一番大事な仕事をしているのんだから!感謝されるのは当然だわ」
顎をあげそのまま反り返ってひっくりかえってしまうのでは?というぐらい斜に構えた厳島の前
最初に酒を贈呈して船魂の顔が曇った
「御ひー様ぁ…ほっきゃーど(北海道)は、こわぁですのよぉ、最近」
今度は彼女の言葉を皮切りに継ぎつ次々と船魂達は顔に悲しみを浮かべて話し出した
「北の海に行くとにゃあ、異人の船がやってきて「火」を投げるですんよ」
ニシンを捧げた彼女は自分の右手を見せた
乱雑に巻かれた木綿の布の下、火傷に爛れた肌が見える。痛々しい傷の手を胸に抱きながら,彼女は涙を浮かべた顔で
「一緒にいーた(行った)子が焼け死んで…」
三笠は驚きの目で彼女に怪我の理由を問いつめようとしたがテイがそれを止めた
「ご存じ無いようですから、私がご説明しましょう」
手を引き厳島と船魂達が話し合う間を切らぬように距離をとると
漁師の舟の魂達の直面している現状を話した
この頃
浦塩に艦隊を集め、旅順に海の砦を築いていたロシアの横暴は艦艇の小競り合いばかりではなく、海に出る船魂達にも猛威を振るい始めていた
北の海に、にじり寄る「征服欲」は罪なき漁船を火で焼くという暴挙を繰り返していた
不凍港を得るというロシアの目的は豊かな海の幸を奪うという事にも直結し
沿岸程度で漁場を取る日本の漁船に対して無言で攻撃、収穫の魚を奪いさるという行為は日常的になり始めていた
「ロシア撃つべし」の民意は内地における言論で、見えない敵への罵倒が大半を占めていたが
海においてはロシアからの暴威を受け、大型漁船の沈没事件が悪天候を理由に行われる事もあったのだ
「こわぁてこわぁて…でも主様(漁師)は、おまんま食わんにゃ生きられませんて…娘っ子、里に置いて漁にでますぅや」
涙にくれる船魂達
その上で最早国家としての統治機能を失い始めていた清や、まだ十分に統治機構を動かせていない大韓帝国の流民達により近海の漁場の治安は酷く乱れていた
国内でいくら漁業権の制定を繰り返しても違法を侵してまでも漁にでなくてはならない理由は色々な所にあった
三笠の初めて知る事実
十分に勉強はしてきた。避けられない戦争だと思われている相手ロシアの事は学んだが、市井の船達の事はすっかり頭から抜けていた
漁師と共に命を落としてゆく船魂がいる事をココで初めて知った
「心配するな!!妾がギャフンと言わせてやる!!」
厳島は自分を囲んで苦境を訴える船達の中に立ち上がると
「清との戦の時のように!!必ず勝って、もっとたくさんの魚を捕らせてやる!!」
「御ひー様だけが頼りですぅ」
怪我の手を抱えたまま縋る船魂の頭を撫でる
「オマエ達をこんな目に遭わせるヤツを妾は決して許さんから!!」
大手を振って心配な顔を浮かべる船魂達の前、まだふくらみのない平らな胸をドンと叩く
「そんな顔するな!!妾の新しくきた妹も戦うから心配いらん!!」
そういうと三笠を指差した
船魂たちの頼みの目が一斉に自分に向いてたじろぐ三笠の前厳島は声も大に
「よろこべ!妾と共に国を護る任についた妹だ!!」と
「妹。。。(直接の妹じゃないのに)」
その声に船魂達の目が三笠を見つめる
ボロの着物、帯も町人が締めているような太い艶やかな物とは違う。荒縄なのか細帯なのかというぐらい貧しい身なりの船魂たち
それでも日本国民の飯を得るために脅威待ちかまえる海に出て行く魂たちは、無期を変え深く土下座をしながら口々にお願いした
「ほんにぃ、お願いしますだ。わたしらの主様を護ったってくだんせ」
共に海に出る漁師を護って貰える事が彼女たちの願い
「まかせろ。私達が必ず安全な海を取り返す…」
願いに潤んだ瞳の彼女たちに三笠はそう返すのが精一杯だった
「それで貢ぎ物なのか?」
会話が一段落ついたところで厳島のとなりに座った三笠は船魂からの酒を杯に頂きながら聞いた
月は高くに上がり
曇っていた空を一枚の綺麗な藍色の闇と変えていた
「当然でしょ!妾は皆を護るんだから!傅かれて貢ぎ物を受けるのは「義務」だわ!!」
「義務…?」
今ひとつその原理がワカラナイ三笠だったが注がれる酒には満足していた
癖のある味わいだったが、最初の飲み会で飲んだものよりキツイ口当たりがイギリス産まれである三笠にはほどよかったからだ
「わたしっちの酒ぇ気に入っていただけましたぁ?」
三笠の杯に酒を注ぐ船魂
煤けた顔は汚れを落とせばさぞ可憐だろう顔を赤らめて笑った
「異国の船の方ァキレイな方が多くてぇ、照れてしまうわぁ」
まだ原動力を手と帆に頼る彼女達は純血の日本の船魂で、皆黒い髪を和髪に結い上げ三笠からすると凹凸の少ないペランとした顔なのだがアクのない可愛い顔である事は全員に共通している
その顔がイギリス人である三笠の顔を興味深げに見つめる
「御ひー様もキレイなお人形様みたいやったんけど、三笠様もキレイやねぇ」
何人もの船魂達は自分たちとは経路の違う存在に興味津々になりながらも、人なつっこく語りかける
「おー!!宴もたけなわ!」
これもこれもと色々な貢ぎ物を差し出されて少し困惑していた三笠の目に金色の光の輪が現れ星を散らせて浪速が顔を出した
ちゃっかり自分のギアマンのグラスを手に
「プリンセス〜〜おこぼれに預かりに来ました〜〜〜」
船魂と魚を食していた厳島は、ほろ酔いなのか真っ赤になった顔のままで手をヒラヒラと振った
「苦しゅうなぁ〜い」
言葉の端が解れ始めている
上機嫌の彼女を横に、三笠の隣に座った浪速は
「ご相伴にあずかってるねぇ」
駆けつけの酒を煽った
イギリス艦艇で攻勢された第一軍の中では陽気でおしゃべりな浪速
自分に付けられた名前の地方の人種の意志が働いてるからやね〜〜ん
なんておもしろおかしい事も良く言う彼女は,演習には熱心ではないが三笠の良き話し友達にはなっていた
「こういうのずっとやっているのか?」
目の前に置かれたイサキの刺身を賞味しながら三笠は浪速に聞いた
「七年ぐらい前からやってんね」
七年前、黄海海鮮が終わって1年目ぐらい
「勝った戦の後始末で味会わされた憂さ晴らしで始めたのか?」
清国に海戦で勝った時の日本は一度浮かれ
三国干渉を受けて気持ちをどん底に突き落とされた
かさんだ戦費の回収は難しく、国民には増税が課されていた
勝ったのに辛い
これは心がしぼむ
艦魂もそうだったに違いないと考えた三笠はそれでも一時的にシナ寄りの海が安全になった事で厳島がこの宴を開いたと考えた
「ああ〜〜船魂が集まってきたのはプリンセスのケンカ両成敗を受けて「この人なら」って頼み事を自分たちで持ってきたのが始まりだよ」
宴の起源を勘ぐった三笠の目に
浪速は疑り深い視線を小馬鹿にすると
「勝っても痛い重いするのはお互い様でしょ、しかもどっかにしわ寄せってくるってわけだし。日本海に安全がもどってこれば国の施行する漁業の権利で揉めるしさぁ、そういうケンカをプリンセスが仲裁してやったのがはじまりなんだって」
演習所から近場で右だ左だと争っていた船魂を呼び出して(自分で他の船に行くと酔ってしまうから)
仲良くしろと仲裁した厳島の言葉に船魂達は感激したのだ
艦艇という巨大な船に自分たちのような小汚い魂が招かれるなどと思ってもいなかったからだ
「妾のところで食事会をして仲良くしなさい!!」
会食は仲直りや親睦を深めるのにとってもいい会だ!!そう怒鳴って
そこから貢ぎ物が始まった
食事会は元々は持ち寄りで始まったものだったが、そのたびに船魂達は悩み事や世間話を持ってきた
厳島の容姿が幼かった事も彼女たちを安心させる一つの要因でもあったが
国の仕事の頂点で働く艦が
自分たちの事を考えてくれていると知った事が一番うれしかったという事らしい
主様達の争いはあっても船魂達の争いはない
お互いが気心がしれるから船舶の事故が格段に減ったというオマケもついて
厳島は船魂達から「御ひー様」と呼ばれるねほど親しまれるようになったという話しだった
「プリンセスは本当に他の人の心を良くわかってくださる方です」
話し合う2人の前に
三笠の好物である「なめろう」を置いたテイは船魂達にかこまれて楽しく過ごす厳島を優しい眼差しで見つめながら初めて自分の意見をしゃべった
「テイ…元気?相変わらずプリンセスに、こき使われてるの?」
長身の短髪
恐らく現在の帝国海軍の名かで一番大きな女であろう彼女は浪速の言葉に首を振った
「元気です。プリンセスに仕えるのが私の生きる道ですから」と少し影のある笑みを返した
「今まで会ったことがなかったな、テイという名前の艦艇は知らないのだが「本名」はなんと言うんだ?」
小鉢を置いて自分の前から去ろうとしてテイに三笠は声をかけて止めた
三笠の頭の中には帝国海軍の艦艇の全ての名前がインプットされている
どこの港に行っても恥ずかしく無いよう司令の任にあるものとして当たり前の準備をしていたのに、ココに名前も知らない艦魂がいるのは気味の良いものではなかったから
近づいた今、しっかりと聞き覚えておこうとした
「三笠ちゃん、あのなテイは」
浪速はまだ酔いはじめの出鼻を挫かれたように小さな声で手を引いたが
「ココにいたのなら私は挨拶に行かなければならなかったが、誰からの紹介もなかった。今日来たのか?」
三笠の質問に立ち止まったテイは船魂達と楽しげに会話をする厳島を見ていた視線を戻した
顔を戻す際
一度目をつむり自分に対して覚悟を決めたように眼を開けると
「ずっと港にはおりました。帝国海軍の皆様が集まる時には顔を出してはイケナイと言われていますので、ご無礼致しました」
深くお辞儀をすると顔を上げ敬礼をした
「私は、元.北洋水師準旗艦「鎮遠」と申します。現在は帝国海軍に籍を置かせて頂いております」
杯を持った三笠の手が止まった
「フルカンの巨像…清の牙、鎮遠」
1886年、海洋国家でありながらも未だ確かな海防の力を持たなかった日本帝国海軍を大いに恐れさせた艦。
その艦魂は今、三笠の前に静かに立っていた
カセイウラバナダイアル〜〜復元船〜〜
先にごめんなさい
今日の朝方までフラフラしていた状態で書いた本編は誤字脱字のオンパレードだったため
23日15時現在改訂作業をしました
早くに読んでくださった方々にごめんなさい。無理しても早くに掲載したいと焦った心が起こした失敗と許してやってくださいませ〜〜〜
出ました鎮遠
ちなみに定遠は復元されたレプリカが中国に展示してあるそうですが
写真を見る限り本物とはほど遠い出来でした
色々な資料でみる定遠はまさに鉄の塊というガタガタの鉄板ビス止めの船体なのに
レプリカの定遠はツルンとしたキレイな船体をもっていて
歴史的な価値は必要とされないレプリカなのか?
なんでも「愛国教育の教材」としてつくったというプロパガンタがキャッチフレーズに入ってましたが
フルカン造船所が作った鐵鋼艦である彼女はあの時代を代表する艦だったのだから
もっと純粋な心で復元してほしかったと個人的には思っております
そういう事はさておきこの頃の戦艦って
なんかコワイですねぇ
ゴツゴツしてて
機能美を追求するゲルマンの血が作ったとは思えないほどの鉄の船,定遠と鎮遠
次回は彼女の視点も絡めた黄海海戦が語られます
ついに戦闘シーン、かな?いやだぁぁぁぁ
極力流血は書きたくないヘタレヒボシでした
それではまたウラバナダイヤルでお会いしましょう〜〜〜