表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/25

第十話 誇りの旗

黄海海戦....

帝国海軍と北洋水師...

二つの国と国のぶつかった争いの下,艦魂達の過去の記憶の章に一段落です




外に作ったBBSにてイベントを告知中

みなさま色々と使う事で,親睦を深めましょう〜〜〜

お待ちしてます!!

4月17日

大清帝国,大日本帝国と講和,日清講和条約.(下関条約)が結ばれるこれにより大韓帝国樹立を確定し,これより先に続く事になる争いの日は終わり

一時の戦勝向かえることになった



大陸からの冷たい風が力を失い始めた頃

大陸を絶対権力で統治し朝鮮王朝を隷属の身として縛っていた軛は断ち切られ「大清帝国」は歴史の上に置いて自身の統治を持ち崩す敗北に膝を屈した


大清帝国敗戦が伝えられた日

鎮遠は補修を終えて旅順港に浮かんでいた

曳航された日から外にでる事はなかったが

日本兵の歓喜の声が港に響き渡っていた事で,自分たちの国が本当に敗北を喫し自分達が二度と再び清に戻ることが出来なくなった事だけを理解した






敗戦からしばらくの日

真夏の海を鎮遠は走っていた

旅順にて修理を終え日本軍の操員の手による回航にて佐世保に,そして戦勝の見せ物として横須賀に向かうために


戦勝に白い歯を見せて故郷に帰る喜びも露わな水兵達の顔


熱気に準ずる乾いた甲板の匂いの下

暗く塩の香り漂う部屋でベッドに座ったままでいた鎮遠は思い出していた


ココまでの数ヶ月


帝国海軍の艦魂は一度も正式に自分に会いに来る事はなかった

軍事の任務が戦争の終結と共に進んでいる時期にあったのだから,そんな時間が得られなかったというのもわからなくもないが....

あまりに不自然な隔絶を感じていた


とはいえ

正確には変な少女が自分に「挨拶」にこいと命令をしていたりもしていたが....


それ以外で姿を見た事なく,唯一自室の舷窓から見つけた背中は威海衛から自分の曳航した「西京丸」という軍属ではない船魂の姿だけだった


波を切る音の中....自分を立場を奈落に落とした戦争の結果に顔色は変わらなかった

皇帝直属の旗艦から,ただの戦利品になった自分


戦争には多大な犠牲がつき,人的被害も大きかった大日本帝国は庶民の感情を紛らわす為にも,戦勝の品である「鎮遠」を早く横須賀に運びたかったらしく

最低限の修理だけを受けた姿で一次寄港地である佐世保に向かっていた


鉄の船の甲板は夏の日差しを吸収し夜の深い時間になっても焼けるよな熱さを容赦なく残す中

回航の作業を続ける水兵達はみな惜しむことなく汗をながし

朝にはつくであろう祖国の地への努力をしている


小さな息を吹く

ため息ではなく...心の決意をより内に秘めるために


船の魂である鎮遠は,動き出し振動を自室に伝えた窓に

一度だけ自分の甲板を見る小窓から外に体を近づけた


離れて行く主の国.....

覇を争った黄海

たった半年ですべてが変わり,首輪をかけられた証である艦尾に揺れる帝国海軍軍艦旗


積もる思いに今一度息を飲み,頭を下げると祈るように跪いて

手元に輝く皇帝拝領の宝剣を取り出した

短刀に豪華な装飾を施した黄金の拵えは嫌みなぐらいに煌々と輝く月の光を浴びて鈍く輝く

宝玉と朱に塗り染められた柄

誉れの言葉を文様として編み込んだ刃渡りの前に移された彼女の目は虚ろに揺れ



刃の返りに映し出された狂気は美しく鋭利な刃を具現するように鋭く大きくなりつづけていた


「2人は1つ....」



暗闇の海と青天の月の間を泳ぐ回航の中

微かな照明にたかる虫達の羽音は濁音を奏でて

鎮遠は自分の胸に手を当てると,祈りの言葉を繰り返した


「体は私,魂は貴女.....」


宝剣の刃に移る瞳の色

静かな思いの先にあるものは


少しずつ開けて行く水平線の闇の上

紫の輝きを纏って水面を走る光の中,鎮遠は開いていた宝剣を静かに閉じた



「私は「定遠」」






佐世保には大きな戦いを終え少しの休息に入った帝国海軍の艦艇,艦魂達が揃っていた

「人」も同じく

短くも長かった国難の戦いを終えた朗らかな姿が港に溢れている


緑の美しさが目にしみる夏の日差しの中

波は高く,海から押し寄せる強い風の中に鋼鉄の船は姿をあらわした


短い命を謳歌する蝉の鳴き声の下

夏服に着替えた帝国海軍艦魂達は入港してくる鎮遠を見て.....

感情の糸を怒りと困惑に奮わせていた


そして

それは先に捕まり帝国に編入された元北洋水師の面子達も同じだった


太源の海を割り入港する鎮遠の船首には「大清帝国北洋水師,皇帝旗」を掲げた鎮遠の姿

本来なら艦尾に掲げられた帝国海軍軍艦旗に準じて服さえ代わるハズの中で

鎮遠は代わることなく絢爛たる皇后の衣装と皇帝拝領の誉れ「黄馬掛ホァンマコ」を纏ったまま風を涼しげに受け,高い視線で港を見つめていた


「定遠......」


降伏した相手とは思えぬ威風堂々とした姿の前

艦魂福竜は驚きに声を挙げていた

彼女は威海衛水雷戦で先に降伏した北洋水師の艦,早くから日本についていたが

かつて自分たちを率いた旗艦の姿を忘れたことはなかった


帝国海軍から少し離れたバースに隠れるように並ぶ彼女達は口々に驚きを零した


「なんで....定遠は死んだんじゃなかったの?」


定遠と鎮遠の違いは目の色だけ

定遠はスカイブルー,鎮遠は紫

帝国海軍の面子にもその事は伝えられていたから向かえるバースに並んだ帝国の艦魂も同じように驚いていた


「死んだのは鎮遠?」


誰もが疑問の中

鎮遠は平然としていた

この身に宿した妹,定遠想いが目の色を変えるなど容易な事で

そのための最後の決意を胸に忍ばせていた


福竜は優雅に揺れる皇帝旗とは別に,凍った眼差しのまま旗を持つ者の姿を追い続けた


「鎮遠......どうするつもりなの?」


妹の瞳に色を変えた狂気を福竜は気がついていた




港の端に係留されて小一時間が回ったが定遠(鎮遠)は佐世保のメインバースに並ぶ帝国海軍の元に飛ぶ気配はなかった

夏の暑い日差しと海の照り返しの光の前揺れる甲板を走る風の下で大旗を掲げ続ける姿に痺れをキラした浪速が帝国海軍の面子を伴って光りの中から姿を現すと定遠を囲むように立った


「向かえご苦労,定遠である」


次々に自艦に光の粒を散らして舞い降りた帝国海軍の艦魂に,待ち疲れたという口ぶりは不遜な笑みを浮かべ片口を笑わす

「なんで....制服着ないの?負けたのに?」

浪速の後ろに隠れるように従った吉野は長身の定遠を恐れながら聞いた


「海で負けた覚えはないわ」


冷徹な氷りを思わす冷たい瞳が自分より小粒な身の丈の艦魂達を見下すように目線を走らせ

自分から一番遠い位置にたった大将の階級章を付けたプラチナブロンドに微笑んだ


「ところで帝国海軍の旗艦は誰,私に挨拶をしろ」


真正面,松島を見る目はすぐに他の艦魂に顔を写す

松島と同じ葦毛の混じった白銀の長髪を揺らす定遠はまるで媚びるところがない

まるで新しく赴任した「旗艦」であるかのように横暴な態度は留まることなく

威圧的


敗北した国の捕虜とは言い難い態度に

帝国海軍の艦魂達の大半が驚き以上に......恐れを持っていた


戦争に勝った


勝ったハズなのに自信がない

自分達の艦砲は終始この女に効かなかった事を覚えていた


黄海の戦いの時どれほどに,この女に弾をぶつけたか

気の遠くなる単縦陣の実行の中で,働き続ける蟻のように撃ち続けた弾に彼女は最後まで沈むことはなかった

それどころか彼女が捕まってから数えられた着弾の数に恐怖心の波は高くなっていた


姉妹揃って300の弾を受け続けたのに

おそらく目の前に立つ長身の艦魂「定遠」は200発は自分たちの弾をくらったのに

まるで煌びやかな着物に宝石の瞬きを与えた程度の効き目....傷など何処にもなかく


結局清国軍上層部の認識不足からきた手落ちにより,港に閉じこもった彼女達を仕留めたのは「魚形水雷」と陸軍の大砲による戦果で,自分たちの砲が無力で....やっと足を止める程度にしか役に立たなかったという結果をありありと残していた


その苦みが

勝ったのに,心に恐れを深く刻み込み込んでいた


定遠の持つ15センチ砲は「比叡」の体を貫通する怪我を負わせ,同じく30.5センチの凶弾は背中から足はを吹き飛ばし瀕死に至らしめ,松島もまた自分の体の中で多くの水兵の命を炎上させて胸部を破砕していた


囲みの艦魂達は黙ってしまっていた


曰く

「海では負けなかった」それが事実


目を合わせる事さえ恐れているのは定遠にも手に取るようにわかるらしく,余裕の笑みは一同を見回し


「誰が帝国海軍の旗艦なの?客に挨拶もできないの?」


傲慢を示す

真正面....まだ手も届かない位置に離れ眉をしかめ目を反らす松島を責めるように定遠は

皇帝旗を甲板に突き立てて足を進めたが,松島の前を守るように浪速が横にでた


嘲りの目はそれに止まると

目を反らし続ける松島にだけ語るように


「私の目は怖い?こんな臆病者が旗艦であるハズがないわね」


軽蔑を軽口で吐き,揺れる波風の中で笑った

そのふりに堪忍袋の緒が切れたのは浪速だった

定遠の横に立つとそのまま足を蹴飛ばした


「オマエは捕虜なんだ!!負けた国の船が偉そうな口を聞くな!!」


勢いのよい横蹴りに定遠は,その場につんのめるように倒れた

浪速の収まらぬ怒りは倒れた定遠の手を音高く踏みつけながら


「松島司令!!こいつは拿捕され帝国海軍に命を助けられて編入された敗北者だ!!そのくせに平然と軍規を犯しているこいつに厳罰を与えよう!!」


四つんばいに近い状態甲板に着いた定遠の左手を軍靴でねじ切るように踏み続ける

だが

定遠は落ちた顔のままで声を挙げて笑った

笑いながら残った右手で胸元に隠した宝剣を確認し


「まさか...私を蹴った無礼者を制止も出来ない女が?こんな威厳かけらもない女が司令?」


浪速は定遠の髪をひっぱり顔を上げさせた

「だまれ!!!」

それでも怯まぬ目は跪かされた自分をやっと見ることが出来た松島にドスのきいた声を響かせた


「思い出したわ,あんた甲板で泣いてた女ね....あんたが司令なの?帝国流の冗談はおもしろいわ,きつくて腹がよじれるわ」


浪速に髪を引っ張られあげられた顔に,やっと目を合わせた松島もまた,あの時の事を思い出していた

破壊の砲塔を動かし撃ち合った相手

松島の目の光りは消えたまま小さな声でこぼした


「貴女達に....殺されそうになった」


叩き合った大砲の弾は松島の脆弱な意志を反映したか,定遠を砕かず海に消えたが

彼女の妹,鎮遠の弾は自分の体の半分を破壊した


地獄の一歩手前

自分という艦の上で「人」は砕かれた肉塊と化し,夥しく流された血は松島の体にしみこんでいた


苦しみの声もなく

自分の中で死んでいった「人」の魂達の......あの気持ちの悪い感覚にうなされ続けて今日ここにいる


歪む視線,苦しみの記憶に

涙を湛えた松島の目を確認したように定遠は冷静な意見を返した


「殺すのが勤めよ,違うの?あんたはあの戦場に何しにきてたの?私は誇り高き皇帝陛下の軍艦なのよ,任務を全うするためにあんた達を皆殺しにするのが勤め」


一気に駆け上る感情から

もう一息を続ける


「あなたを殺せなくて残念だわ」


罵倒の目に

あの日の痛み

動悸を早める松島の鼓動.....戦いを好めない優しき心が,別の憎しみに心を黒く染め始めて揺れる中


誰よりも先に浪速が軍刀を抜いた

松島以上の怒りは掴み揚げていた定遠の髪を切り落とすと

「オマエはもう姫でも皇帝直属の艦でもない!!」

長く美しく整えられていた定遠の髪は,半分の束が首筋のラインで無惨にも斬られ

浪速はそれを海に向かって投げ散らかした


「もうオマエに髪なんかいらないだろ.....ただの捕虜だ」


浪速は怒りによって自分を奮い立たせていた

比叡を撃った女...未だ完治しない傷の友を思って自分の心を黒く,赤く塗り替えていた

定遠の残った髪を掴みあげて顔を起こすが


この仕打ちに

定遠は冷たい目線を尖らせて

浪速ではなく自分のまだ少し離れた前に立っている松島を罵倒した


「のんきな国ね,戦いを仕事とする意味を理解しない女が司令職だなんて,臆病者の司令は自分の部下も統率できないし自分の手を汚すこともイヤ!!こんな無知な女に従えられる帝国海軍も先がしれるわね!!」


「テメエ!!!」


髪を握ったまま浪速は定遠の背中を思い切り蹴飛ばした

勢いで千切れる髪の束

甲板に這い蹲った定遠に松島は,抜かぬままの軍刀を前についに前に歩を進め

ヒステリックな声を上げた


「そんなに誇り高いなら捕まる前になんで死ななかったのよ!!よほど妹の鎮遠の方が潔いわ!!」

手の届く位置に後一歩

誓った復讐に心を尖らせる定遠はそれでも冷静な顔を床から上げて


「妹は最高の武人だったわ,あんたのように甲板で震えてお漏らしなんかしないわ!!」


最大の罵倒を大きな声で吐き出した

その定遠の背中をまたも浪速が蹴飛ばし松島の足もとに頭を擦りつけさせた


「謝れ!!命乞いしろ!!お姫様!!」


松島の抜いた刀の前

鼻先という位置に近づいた軍靴に

定遠は自分の胸を触ると昨日の夜,立てた誓いを心で復唱した


「この身は心である妹,定遠に捧げたもの....全ての恥辱が私,鎮遠のものなり」


わざとらしく弱々しく上体をあげる

隠し持った宝剣に右手は掛かっていた

最後の嘲りで後一歩敵を自分の間合いの中に導く.....


「近寄らないでちょうだい....臆病が伝染したら困るわ」


踏みつけられ青あざとなった手

切られた髪

痛めつけられた背中


定遠の感情はそれらの侮辱に心の怒りを直結させなかった


脳裏にあるのは北洋水師の仲間達の姿,超勇ちょうゆう,揚威ようい,全身を焼き沈んでいった古参の姉妹

懸命の戦いに前に向かって死んだ至遠いえん

離脱戦の犠牲になった経遠けいえん

威海衛の港を守る心のまま死んだ来遠らいえん

死を恐れた子....悲しい末子靖遠さいえん


最後まで旗艦の任を全うした妹,定遠ていえん


背負った者達のために己の体など,とうに炎獄に捧げていた

戦いを恐れ泣いた女に頭を下げるぐらいならば!!全ての怒りを叩きつけると


秘められた青い炎はやっと自分の間合いに進んだ臆病者の喉を掻ききるための刃物に手を添え

松島は軍刀を峰に返し相手を打ち据えようと振りかぶった

後ろに立った浪速からは見えない刃が光る


「死ね!!!」




「そこまで!!!」


殺しの間に入ったのは厳島だった

振りかぶった松島には見えなかったが,厳島の手はまっすぐに松島を狙った宝剣を諸手で握っていた

素手の手の中を真っ赤に染めて

水より濃い赤の雫が滴るのを見て驚いた吉野は


「プリンセス!!」


ココにはこれないと思った相手の存在に声を挙げて腰を抜かした


凶刃を構えた事の成り行きに身動きできずにいた帝国海軍の艦魂達は目を丸くし

浪速は定遠を斬りつけようとしたが


「自刃はゆるさぁーん!!!」

両手で

思う以上にこぼれ落ちる血を流しながら刃渡りを握ったままの厳島は怒鳴った


「オマエ達!なにをしている!!「人」が守った武の礼節を帝国の艦の魂ともあろう我らが汚すとわ!!恥を知れ!!!全うなる貴族である妾に恥を掻かせるな!!」

突然の乱入に松島は足を引いてしまい

浪速は

「プリンセス!!そいつが!!」

愚弄と挑発を続けた定遠に未だ振りかぶった軍刀で詰め寄るが


「戦争が終わった今!!こんな卑劣な争いを始めるとはぁ!!」


幼い顔が頭で浪速の胸を押す

誰よりも小さな少女はプラチナカールの髪を振り乱し,顔を真っ赤にして


「それも寄ってたかって相手の誇りをへし折ろうなど!!帝国の頂点に君臨する艦のするこひょか!!」

「でもこいつは!軍規を違反して!!反省も謝罪も!!」


突き放されたまま浪速は軍刀を離さずわめいた

だが

厳島は一歩も退かなかった


「まつしみゃ(松島).....司令たる者がそんにゃ事を指示したなら軽蔑しゅる」


下がってしまったまま,まだ刀を振り上げた状態になっていた松島に厳島は命令した

「かたにゃ...しまえ...」

威圧する妹の前

身動きのとれない松島に代わって浪速が吠えた


「こいつは!!松島を殺そうとして!!比叡を殺そうとして!!!」

心の真ん中に残った痛みと怒り

親友,比叡の無惨な姿に怒りが勢いを増しても涙も止められない


「みんな生きてる!!」

「プリンセス!!!」


「うるひゃい!!!許すんだ!!!」


激化した問答の中,厳島は吐いた

言葉をグダグタに歪ませた結末,朝食べたものをそのまま吐き出してしまった


波が高く,風の強いこの日,厳島はこの船に飛んでこられなかったが...

揉め始め,自分の貴族としての誇る想いに反する行いを目の当たりにして居ても立ってもいられなくなって飛んできた


「みんなが戦って傷ついた事を....みんなで許すんだ!!!」


吐いた汚物を口から服に残したまま

厳島は定遠を囲み状況を見ていた者達を睨んだ


「全部,妾ぎゃ許してやるから!!」

そういうと定遠の手を握り一瞬で転移の光とともに消えた



浪速は光の粒が厳島の甲板に飛んだのを確認して走った

「なんでだよ......」

その横を揺れる定遠が持ってきた大きな北洋水師皇帝旗に中断された怒りをぶつけようとしたが

軍刀の前を一瞬の差で福竜が走り

旗を抱えた


「テメエ.....」


上げた拳の行く先の前

事の成り行きを見ていた元北洋水師水雷艦の艦魂達が旗を懸命に守るようにと現れた

「オマエら!!逆らうつもりか!!」

「違う!!!」

懸命に旗を抱く福竜を守るように現れた水雷艦魂達はその場に座り込み

福竜は泣きながら答えた


「私達だって.....誇りを持って戦ったの...私達だって守りたいものがあったのよ.....」


守るべき国のために戦った者達

その心をへし折っていいものか......言い訳がない


ただその想いで「人」に従い戦った者達を貶めるなど....


だから許せと叫んだ厳島の言葉が浪速に松島,帝国海軍の艦魂達の心と

誇りを持ってココに現れた定遠に扮した鎮遠の覚悟に見た元北洋水師水雷艦魂達は気がついた


言葉はなくとも,大きく揺れる風と波の騒然とした昼間の世界

軍刀を足もとに落とした松島の言葉に全てが止まった


「止めて...もう...争いは...イヤなの」







「うぇぇぇぇぇ」


一瞬で自分の甲板から日本艦艇の甲板に転移させられた定遠は目の前,舷窓から向こうの海に吐き続ける厳島に困惑していた

艦魂が船酔いなど見たこともない事態

だがすぐに冷静さを取り戻すと手元を離れてしまった宝剣を取り戻そうと厳島に近寄り

無機質な声をかけた


「どうして止めた」


自分よりはるかに大きな体の艦魂に厳島は口元を黄色く汚した顔で

「オマエは勇敢に戦った,戦争が終わった今死ぬことはない」

そう言うと吐いて汚物で汚してしまった宝剣を自分の服でキレイに拭って返した


「オマエ死ぬつもりだっだろ」


幼い目は宝剣を受け取る定遠の顔をじっと見つめて

心に宿した復讐の果てを見抜いていた

誇り高き者の選ぶ恥辱の果てにあるものは....


松島を殺し......自分も死ぬ事


「そんな事は...あなたの知ったことではないでしょう」

見破られた本心に顔を歪めた定遠を問いつめるように厳島は


「そんな意地はいらん!!誇りを高く持ちつづけ帝国に仕えろ!!」


そういうと汚れた服のまま大きな定遠の前に怯むことなく仁王立ちした


「オマエと撃ち合った妾がオマエを許す!!だからそれでいいの!!!」


定遠は思い出した旅順で最初に自分に会いに来た声の主


貧乏帝国が作り上げた自分達姉妹に対する軍艦

身の程に合わないバカげた大砲,32センチの砲弾を血反吐の中で自分に叩きつけた女

小さな体で大きな帝国海軍軍艦旗を誰よりも高く掲げ続けた女に


「がんばれ!」「戦え」の連呼の中

最後まで良く聞こえた甲高い声の主,血を流しながらも倒れる事なく戦った敵の瞳は今も本気で話ししている


「ふざけるなオマエが納得すれば先に逝った者の意志はどうでもいいのか!!」

「松島を殺しても帝国海軍は滅びないわ!」


そのとおりだ

意気地のないままの今の帝国海軍なら戦いの海に精神をおかしくして自滅の道を歩む可能性だってあった...

でも目の前に立つ厳島の姿にその思いは断ち切られた,こんなに強い女がいる事を思い知った....松島を失なっても彼女がこの国の艦達を率いる力となる事を...でもだから

拳が震える....それでも...死んだもの達の無念を諦める事など出来ない


宝剣を強く握り祈る,誓いを果たすために


「妹よ.....力を」

「バカぁぁぁぁぁ!!!」

怨念に目を尖らせた定遠(鎮遠)を厳島は血まみれの手で殴った


「オマエの心に生きる妹を汚すなぁぁぁ!!」


夏の風

揺れる船の上,厳島は叱った

それはとても幼く癇癪に似た叱咤だっが

それ故に純粋な思いだった

厳島は自分の手に残る痛みと船酔いの苦しみに涙ながらに叫んだ


「オマエの妹はオマエが死ぬ事を願ったのか!!」




「生きて!姉さん!」




自分に生きてくれといった定遠は......


「鎮遠!!!」


厳島の叱咤に思い出の妹を見つけ呆然としていた鎮遠を旗を抱えた元北洋水師達が折り重なるように手を握った

刃物を持つ手を懸命にみんなが押さえて


「死なないで!!私達を置いて死んだりしないで!!」


生き残った仲間達

駆けつけた福竜の腕に抱かれた「皇帝旗」に厳島は


「誇りの旗を掲げ,気高く戦ったオマエ達を尊敬する....これからは帝国海軍にその力を貸してくれ!!」


自分に生きろと言い死んだ定遠

最後の言葉は


「次も同じ世界で.....1つの命で生きよう」


「テイ.....テイ.....」


心に生きる妹の願いに定遠を演じ続けた鎮遠は泣いた

生きることが辛くても

そして鎮遠が生きることで心に生き続ける事が願いだった


自分達の誇りを認めた厳島の心の強さに敗北を認めた


鎮遠は

自分を慕う仲間達と共に泣いた


カセイウラバナダイアル〜〜私の大和〜〜



ちゃ〜〜〜す

突然の事なのですが

こんなイベントを企画してます


近く

戦艦大和がお亡くなりになった日がやってきます

共に命を失われた方もたくさんいます

大和は大日本帝国海軍の終焉の悲しみの船ですが

今も日本人の心に生き続ける偉大な船でもありますよね...


そこで...

あんまり流行っていないwwwこの板の兄弟板「交流海域」に艦魂を小説を書く先生方,または戦記,帝国海軍を愛する有志によって


「私の大和」とお題目で短編などを書いて見るのはどうでしょうか?

参加は自由

題目はあれで


「私の大和,ヒボシ編」みたいに副題は自由

内容についても

ご本人の大和との出会いであったり

艦魂をからめ手の出会いであったりでも自由に

戦艦大和にはせる思い出などを書き綴ってみてはどうでしょうか?



短編企画はこのBBSの姉妹板の方で展開しようと考えていますが

利用の仕方がわからない方はメッセください携帯でも記入はできますからアドレス送ります


文字数オーバーなどは自分のホンスレにレスで足してゆくなどと庶民的な方法でもかまわないと考えていますし

まとめた物をヒボシ宛に送ってくださってもけっこうですよ

参加者がふえてくださればヒボシが編纂して「なろう」に「戦艦大和を偲ぶ短編作品の集合作」としてページをつくり

艦魂作家合同で書いた短編集という作品の形式を守ったものとして掲載してみたいなぁぐらいには思ってます


ですが

「なろう」では問題がおこったばかりなのでどういう方法なら皆様に受け入れていただけるかを模索中である事もご理解ください


自分の作品ばかりを書いていると原点を忘れて脱線してしまう時や

迷ってしまう事もあるとおもうので....たまにはこういう事もやってみたら..かな的な企画ですが

多くの作家さんが参加してくださることを期待してますぅぅぅ

掲載に至る良い方法があるなら教えてくださる方も募集してますよぉぉぉ



それではまたウラバナダイアルでお会いしましょ〜〜〜



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ