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神シ業うつらうつら  作者: 逢葵 秋琉
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第三和「疑心。(自称)神様は、中二病を患った化け狐?」

 確かに人じゃない、少しだけ周りの空気が()んだ気もしなくはない。だからってそれだけで信じられるほど純粋ではない和久は、握手を求めている手を見つめたまま(しか)めっ(つら)をしてから陽光を見る。


「君からしないなら、私からしようか。それとも、人じゃない何か......まあ、私は神様だけれど怖いかい?」


 人の良さそうな笑みを浮かべて、和久を見返すと何も云わないのを見かねてか気遣うように云うも陽光の性格なのかは分からないがまるで試すような口調で聞く。


「っば、んなんじゃねえ! 握手すりゃ良いんだろ!」


 していとやる。と試すような挑発染みた言動にくわり。と売られた喧嘩は買う性分。否、喧嘩とは違うが神経を逆なでしてくる陽光に声を荒上げて一度陽光の手の甲をぱしんっと叩いた後に、反対の手で掴み握手をする。嗚呼、くそムカつく。と苛立ちを隠すこともなく顔に出す。


「うん、そうそう出来るじゃないか。って(いた)っ!? 和久君、ちょっと痛いから!」


 力一杯握り締めてくる和久に、満足そうな顔から一変して焦りと痛みで狼狽(うろた)える陽光は、痛みで顔を歪ませて握手している手を無理にとろうとしているのか。ばたばたと上下に振り「give」とやたら発音が良いギブアップのギブを繰り返して和久を見る。


 そんな自称神様、陽光の表情と様子に自分の中の苛立ちが消えていったのを感じて手を(はな)す。


「手前がおちょくったからだろうが」


 自暴自得だ。と云いたげな表情で陽光を見下ろす。


 まだ、階段のど真ん中に座っている陽光にいい加減端寄れよ。と内心では思うが、そう言っても無駄だとも感じて思って置くだけに(とど)めて思いのままに言葉を紡ぎ始める。


「確かに手前は、人じゃねえっぽい気配がしたけど......俺には手前が神様だと思えねえ、見えないつーのもあるが狐狸(こり)()けたってんならまだ信じられる」


 百歩譲って。と幽霊にしては触れるし、神様にしては人っぽいつか、胡散臭い。だから、狐狸が化けたと云うならまだ分かる、信じられると云っている。


 陽光が人じゃない何かだとは、周りの空気が澄んだ気がする程度だったり気配が人とは違うものに変わったことで分かっただけで神様だと判断しようもない。というか、こんな大正のような落語家のようにも見えなくはない服装をし半身出ている状態で寝ていた人が神様だ。なんて信じられる訳がない。どう見ても神信仰している宗教団体の人だ。と和久は思う。


 思いはするものの、その全てを云うのは幾ら相手が人じゃないとしても云うのは少し躊躇ってしまう。幾ら俺の神経を逆なですると云ってもだ。


 云いたいことは山ほどある。と心に(とど)められる量ではなかった。云い足りないくらい、陽光の存在は異質そのものだった。それを察してか。最初こそ、キョトンとしていた陽光だったが、次第に嗚呼、それもそうか。と云うような納得した顔で


「狐と狸。どっちかと云えば狐には(えん)がある方だけど、私は狐ではないよ。狸寝入りは得意中の得」

「話をすり替えんな、頭かち()ん」

「ふふっ。出会って早々神殺しをしようとするなんて中々(なかなか)の強者(つわもの)じゃないか。嬉しいなあ」


 よくもまあ口が回る回る。嗚呼云えばこう云うではないが、コイツと会話していると段々精神的な疲労が蓄積されている気がする。


 正直疲れてきた和久は、自称神様・陽光の隣にやや座ることに対して罪悪感が少しあるも、精神的に来る疲労感に()えきれずに少し間を空けてどっかりと座る。


 神殺しだの。宗教団体じゃなくてただの中二病。嗚呼、そうか。


「中二病を(わずら)ってる化け狐ってことか。嗚呼、成る程......」


 となると、和久が陽光の中二病に付き合わないと永遠に終わらない。要するに神様設定をしたいのだ。この人に化けた人じゃない何かは。とりあえず狐に縁があるようだし化け狐で良いか。と自己解釈した和久は、何処と無く遠い目になっている。


 しかし、この見た目で中二病を患ってるとなれば痛いを通り越して同情してしまう、可哀想と。アニメか漫画の見すぎじゃないか。俺が何故こんな茶番に付き合わないといけねえんだ。と頭を抱えたくなってくる。


「ふむ。宗教団体の者の次は、中二病で化け狐が神様設定ねえ。和久君はどーしても私が神様だって認めないようだ。実に困った」


 その設定は、面白いけれど。と陽光は、飽きないなあ。と云うような心底楽しそうに笑いながらも、困ったなんて一ミリも本気で思ってない飄々とした様子でいつの間に持っていたのか扇子を片手で仰いで和久を見る。


 口に出ていたか?否、出てねえ筈......。と独りでに陽光の正体を中二病を患った化け狐にすることで腑に落ちたというのに、まるで心を読んだかのように口にしてないことまで言い当てる陽光に、目を向ける。


「手前、まさか......心読んだのか?」

「そのまさかだよ。私は正真正銘の神だから君の思ったことを読むくらい朝めし前さ」


 和久と同じように目を向けていた陽光は、目が合った瞬間にしたり顔をしてから首肯(しゅこう)する。


 首肯して口にする陽光は、威張(いば)ると云うことはせずさらりとそう当たり前だ。と云うような口振りだった。したり顔をしていた以外は威張るとか偉そうすることはなく読まれたのにも拘らず意外と不快ではない。


 不快ではない。だが、しかし筒抜けつーか、思ったことを口にしなくても読めてしまう相手。厄介極まりない。


「はあ、そうかよ。つまり、遠慮もオブラートに包むなんてしなくても手前にはまる聞こえつーうやつか」


 一回ぶん殴ろうか?つか、一回殴らせろ。と自分の心境を知っていてわざと合わせていた陽光に対して、少しでも気遣おうとした自分が馬鹿馬鹿しく感じてくる。


 だからだろうか。内心で聞こえることを良いことに和久は、怒っているのかまるで黒いオーラを(まと)っているかのように不穏な空気を出してゆらりと立ち上がる(かん)にも一回殴る。と何度も呟きつつ、静かにそれでいてはっきり普段より低ボイスで告げる。


 念仏を唱えるかの如く内心で一回殴る。一回殴る。と呟かれ、ゆらりと立ち上がる様に比喩(ひゆ)ではなくぞっとした自称神様・陽光は、和久が立ち上がると同時に一度開いてまた扇子を閉じぱんと自分の手のひらを閉じた扇子で一回叩く。


 すると、目に見えない結界が陽光を守るようにして囲う。扇子を半分。否、四分の一開いてから閉じた扇子を一回手のひらで叩く動作は結界を張るために必要な動作。神。否、陰陽師なら或いは出来たかもしれないがこれら全ては最早人ならざる者のみが出来るものだろう。


 神が力を与えたり、道具を用いてやれば出来るかもしれないが。と結界を張る際に一瞬哀愁が漂う眼差しをした陽光だが、和久はその眼差しに気付くことはなかった。


 そして、結界を張られた後に降り下ろされた拳は、結界に(はば)まれてその衝撃により鈍い痛みが自分に返ってきて、拳を反対の手で痛みを堪えるかのように(おさ)えたまま


「っ()。手前っ、何したんだ!」


 さっきまで殴れていたからか。まさか殴れないなんて予想してなかったからか、思わずそう()える和久。


 何かに阻まれて陽光まで届かなかった拳。確かにぶつかった感触はあった。堅い何か。壁を思いっきり殴った時に骨が軋むような鈍い痛みだけが残り、抑え吠えた後にパリンッ。と硝子が割れるような音が(わず)かに陽光の方から聞こえた。


 じんじんする痛み。嫌いな痛みが殴った手にまだ残る。これが陽光の腹部を殴っていれば痛みはそれほどなかっただろう。


 しかし、それは陽光が張った結界によって阻まれ拳が当たった衝撃に耐え切れなかったのか少し時間が経過してからひび割れ消えてしまった。


「いやあ、だって......殴ってくると分かって何も対策しない私ではないよ。それに痛いじゃあないか、痛いのを分かって受けるなんてそんなマゾ気質。生憎、私は持ち合わせてないからね」


 単純にさっきの和久君は怖かったから結界を咄嗟に張ってしまったのが本音だが、痛いのも嫌いだからどちらにせよ。避けるなり白羽取りみたいに拳を止めていたと、陽光は思う。


 思いつつも和久には、食えない爺ではないがそんな感じであくまでも飄々として平然とした姿と

にやりと再びしたり顔を向けた。


 そんな陽光に和久は、舌打ちをして陽光から目を逸らしまたどっかりと陽光の隣に座る。


 座ったのを確認するかのように目配りをした陽光は、したり顔を()めて徐に口を開いて


「......読心(どくしん)と結界が出来る神様だけれど、和久君にとってはまだ中二病を患った化け狐なのかい?」

 暫く和久君と(自称)神様の会話が続くかも知れませんがお付きあい頂ければ幸いです。

 

 此処まで読んで頂き本当に、ありがとうございます!


 少しでも良かったら、評価を付けて頂ければすっごく嬉しいです。まったり更新ですが皆様、宜しくお願い致します。

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