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壺から始まるテンプレート  作者: 古澤深尋
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3

引き続き汚物テロ。

回避推奨。


 元おっさん、シン(佐藤秀夫)。

 自分の家の畑の隅に豆科の種を植えていく。

 畝を利用して根粒菌を有効活用したい。

 

(穀物が少ない…米や麦はないのか)


 手元の袋には粟や稗のような粒の細かい穀物はあったが、現代日本にあったような粒の大きい穀物は見当たらなかった。


(そういえば、古代の穀物は品種改良前で現代のものとは全然違うとか何かで読んだ覚えが)


《穀物を検索…ガロールドに米及び麦はありません》 


 いつもの声が残酷な事実を告げる。


(パンやおにぎりは、夢なのか…!)


《検索…パンやおにぎりのような食感及び栄養素を含有するものはあります》


 「は?」


 思わず声が出てしまった。

 パンの実、ラスの実という木の実らしい。


(物知りだね…というか、あなた誰?記憶が戻った時にはもう聞こえてたよね?)


《私は神界ナビゲーションシステムのガイダンス機能です》


(つまり?)


《ある程度の自律機能を有した人工知能とお考え下さい》


(なる程。名前はあるの?)


《いいえ、ありません》


(じゃあ、これからミミと呼んでいいかな)


《由来を教えて下さい》


(色々知っているようだし、知恵の泉の守護者ミミルにあやかって、ミミ。どうかな?)


《了承します。これより私はミミです。名付けにより私の機能が拡充されました。今後末永くよろしくお願いします、シン様》


 いきなり感情が感じられる受け答えになった。

 シンはちょっと面食らったが、パンの実とラスの実に意識を向ける。

 パン、ラスともに熟した実を火であぶり、充分火が通った果肉を食べるものらしい。

 焼いた果肉が、パンの実は正しく焼きたてのパンで、ラスの実が炊きたてのご飯だとか。

 で、中心にある種は普通に芽が出て木に成長する。

 食べ方が伝わっていないようで、雑木扱いだ。

 焼かないと、中の果肉は青臭く苦いらしい。

 いつものだんごの材料ではないようだが、きちんと焼いて食べようと決意する。


(村の魔境側の柵のところに生えてたな)


 一年中結実するから、簡単に拾える。

 大きさは硬球程だろうか。

 

(何で食用になってないんだろう)


 こっそり魔境の奥で焼いて食べようとした。

 火にくべると、煙がもうもうと噴き出す。

 

「くっさ!」


 排便穴とどぶの合わさったような匂いが充満する。

 慌てて空気を遮断し、自分の周りの空気を清浄する。

 周囲の魔物達が逃げ出し、たちまち静かになった。


 食用に供されていない最大の理由。

 それを身を以て理解した、厳しい一日だった。


 

 


 

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