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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

裄瀬家シリーズ。

ようやく、届いた貴女の言葉

作者: 十叶 夕海

多分、正史(私達の時間枠に近い歴史)な歴史の『天正伊賀の乱』の後、織田信雄が殺害されていたら、のIf。

史実だと、江戸時代まで生き延びるが、ソイツは影武者設定で。




伊賀の中興の祖・女頭領菊乃は、樹菖の嫁で(伊賀ほぼ壊滅の)二百年ほど前の人。。

多分、上忍三家のうちの一つの娘。



+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++


 許せなかったんですよ。


 私は 死ぬことができません。


 いえ 流石に首を飛ばせば死ねるかもしれませんが。


 菊乃が 遺したモノを見届けるぐらいは生きてみましょうか。


 そう思えたんですけど、……ね。




 奪ったのでしたら、奪われても文句は言ってはいけませんよ?

















 その夜、織田信雄は死んだ。

 その夜、彼の城は燃え上がった。


 殺されたのだ。


 銀髪に墨染の羽織姿の青年に。

 彼は、抹茶色の着流しと愛刀・氷鳴丸を血に染めて。

 信雄の遺骸と燃える城を背景に立っているこの青年に殺されたのだった。


 そこへ、黒い異国ドレス姿の少女が表れて、咎めるように一言。


「貴方・・・っ」


「おや、《泉ノ乙女》殿ですか。」


「織田信雄を殺したの?」


「ええ、それの父親の命運は尽きてますから、代わりに。」


 淡々とそれこそ、昨日の夕飯をそらんじる程度に、言う青年。

 燃え盛る炎に照らされているその頬の血痕も、炎で赤く見えているだけで、本当は泣いているように見える


 《泉ノ乙女》殿と呼ばれた少女も、或る程度の理由を知っているからだろうか。

 それ以上は何も言えずに無表情な顔を微かに歪めるだけだ。


「これとその父親の蛮行を見逃した貴女がそんな顔しないでください。

 ……殺したくなってしまうでは無いですか。」


「《歌乙女》の意志?」


「私の意思であり、彼女の意志でもあります。

 まぁ、私は彼女のイレギュラーではありますが。」


「……菊乃の遺産が壊れたから?」


「言わずもがな。

 見ていただけのアナタが何を言います?」


「…………」


 青年は、笑みを深くして、ただ、返答を待つ。

 しばらくの沈黙。

 促すように、彼は沈黙を守る。


「憎いからって殺したら……そいつらと一緒よ?」


「貴女は、《御伽噺》を『理不尽な死』を憎んだことは無いのですか?」


 つまりは、「貴女も、私と同じでしょう?」と言外に言う。


 《泉ノ乙女》も、今生で失った子の死は、理不尽だとは思うのだ。

 代わりに自分が死ねばよかったと思うぐらいには。



「…………それでも、よ。」


「なら……」


 言葉を断ち切るかのように樹菖は、《泉ノ乙女》に斬りかかる。


 咄嗟に彼女は、虚空から読んだ剣を抜き、それで受け止める。


 数合斬り結ぶ。

 マトモに、否、力の限り打ち合えば、刀とて鉄の棒。

 ひん曲がるはずだが其処は達人同士。さらに言うなら、彼女のと彼の刀は、ただの鉄の塊ではない。


 長く在った物が、低位であれ神と成るならば、その二振りは神だろう。


 片や、氷鳴。氷と水を付加属性とした文字通り主人の刃となるべく作られた言葉無き式神刀。

 片や、無銘。ただ、記憶がある頃から今の《泉ノ乙女》と共にある剣。


 そして、生まれて幾星霜。


 氷鳴の方が、歳浅いが、主人の青年は少女よりも、巨大な力の存在を内包している。


 無論、少女の方も外見ほど幼いわけではない。

 そして、一際大きな音がする。

 一瞬、炎の爆ぜる音が止んだと勘違いするほどに。


 そして、あり得ないことに、膠着状態……刀を交錯させた状態で固まる二人。


「……っ、なら、殺してくださいよ。 首を落としても死ねない、んです。

 そんな私を受け入れた、菊乃の最期の言葉を聞けませんでした。

 菊、乃の遺したモノを守りたいと願うのは、残したモノを奪われたのなら、潰したいと願うのを奪うのは、死んでないだけです。」


 血を吐くような。

 或いは、慟哭のような。

 泣き方を知らない子供のような言葉。


「…………」


 少女は息を一つつく。

 そして、一言、呟くように青年に告げる。


「本当は、《世界樹の翁》に怒られそうだけどね。

   『・・・・、・・・・・・・・。・・・・・・・、・・・・。・・・、・・・・・・。・・・・、・・・・・』」


 肝心なところは、ちょうど、炎が噴きあげ、柱が折れる音にまぎれ、二人以外聞こえない。

 ただ、それを聞いた青年の顔が、緩んだことからして、十二分に、菊乃らしい言葉だったのだろう。






 そして、数分後。

 田丸城が見える崖の上。

 そこに青年はいた。


「……ならば、傍観者として、天鼠として生きましょう。

 いつか、貴女に再会できた時にするお話の為に外に内に立ちまわりましょう?」




++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++



小話です。



某刀擬人化ゲーム二次の影響で改稿版。

一応、樹菖のほうは、人間ですよ?死ねないだけの。

んで、もう片方は、吸血鬼です。

だからか、少し仲が悪い。



因みに、菊乃さんの最期の言葉。

「貴方は、自由になっても良い。此処は貴方には、狭すぎる。大好き、愛してたよ。向こうで、会いましょ。」

演出上、作中で聞こえないほうがいいと思ったので、ああいう表記。

ばっさり、あっさりしてた。

某スタイリッシュ戦国アクションキャラだと、まつさんや濃姫ってよりは、多分、ねねさんに近いかな。

もちろん、原作では彼女は出演してないし、公式資料でも触れられてないけど。

友垣三人、秀吉、慶次、半兵衛と仲良くやれて、秀吉と慶次、真逆に近い二人が惚れた相手。

まぁ、多少おしとやかと言うか、おっとりな面はあっただろうけど、女性的な意味でしたたかだったのかな、とか。



話巻き戻して。

メインキャラの白愁樹菖。

男の『歌乙女』も含めて、イレギュラーな≪歌乙女≫の中でも、ハイエンドにイレギュラ-な奴。

二次の方でやっと出たけど、平安時代生まれです。

化成ぐらいでやっと死ねる人生を累計一万年近く生きてる子ですね。

んで、この話が、裄瀬家次女に生まれ変わる道筋な時間軸。

この後に、幕末エドワーティン大正世界大戦、もう一人挟んで裄瀬家次女です。


同じ会話を一回目ではないけど、やっと、考えを変えたのが上の話になるのなぁ、と推測。

嫌いだけど、認めてないわけじゃないんですよ?



とりあえず、次の物語にて。

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