幕が、開ける
存在理由──レゾンデートル。
人間というものは遍くそれに従って生きている。
もしくはそれに頼って、凭れかかるように生きていると表してみてもいいかもしれない。
人間とは弱いもので、自分の人生に意味を与えることなくしては生きていけないのだ。
例えば──私利私欲のため。
例えば──自己満足のため。
例えば──愛する人のため。
例えば──見も知らぬ他人のため。
例えば──殺すため。
例えば──喰らうため。
例えば──生かすため。
例えば──幸福のため。
例えば──例えば───
こうして挙げればキリがない。際限がない。
だからこの物語は他でもない、人間の物語。
言葉にしてしまえばとりわけ陳腐で、どこまでも醜悪で、気持ち悪くなるほど疎ましく、それでいて愛おしい。そんな、物語。
様々な存在理由を胸に秘めた人間たちはやがて出会い──烏合の衆となって──そして物語はいずれ収束を迎えるだろう。物語は永遠足りえず、朽ちて消えゆくのかもしれない。
ただ、その足跡は世界から永久に消えることなく、地球は回る。
これはそういう、物語。
大言壮語に更に誇張を加えたように胡散臭く、それでいて掛け値のない、そんなちっぽけで壮大な話。