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少女と妖怪の馴れ初め

「今日は散々だった…」

しょんぼりと頭を垂らす優。

「大丈夫?優ちゃん」

心配そうに優の隣を歩く桜。

「だいじょうぶ〜かもしれない」

説教話には慣れている優でも、

流石にクラス担任と数学担任の二段階攻撃、更に家に着いたら祖父からの止めが待っていると思うと、流石に堪えるようだ。


「はぁ〜憂鬱だ〜家に帰ったら、可愛い猫ちゃんがお出迎えしてくれて、そのままもふもふさせてくれないかな…」

三毛猫、黒猫、トラ猫…

頭の中で大好きな猫と戯れる妄想を繰り広げ現実逃避に覇気の無い眼をする優。

それを見て、更にハラハラ心配が増す桜であった。


---


桜と帰り道の途中で別れた後、

改めて頭を垂れる作業に入る優

「何か良いこと無いかな〜」

1人ぼやく優の後ろを尾ける怪しい男、学校でも優の様子を伺っていた不審者である。


「クァカカカカ!とうとうチャンスが巡ってきたってもんですねぇ」

不気味な笑い声を小声で出している高身長に黒ずくめなこの不審者こそ、

先ほど学校でも優たちを監視していた、妖怪-八咫烏(ヤタガラス)である。


「妖怪の持つ妖力を限界まで高めることができるという『鬼石』アレさえあれば、今の底辺階級から這い出して、あっしが妖の総大将になることだって可能!夢は膨らみますねぇ〜」


怪しげな言葉を吹きながら優の背後を付きまとう八咫烏、

それに気付かぬ鈍感少女な優はあいも変わらず頭を垂れている。


「なんだか随分暗いですねぇ〜ジメジメし過ぎてキノコでも生えちまうんじゃあないですかい〜?」

なんであっしが、知りもしないおなごの心配などせにゃあならんのか、と心の中でボヤいている八咫烏は、ふと歩みを止めた。


(この気配は…いけませんねぇ、あっしの他にも御客人が御座いやしたか!)

八咫烏は何者かの妖力の気配を感じ取ったのだ、姿形はまだ表さないが、間違いなくこの辺りに自分以外の妖怪が鬼石を狙い潜んでいる。


(参りましたね〜こりゃあ早急に仕事を終わらせんと、あっしの理想未来が水の泡だ)

そして、周りに潜む妖怪に気を取られてる八咫烏をよそにトボトボ歩く優


「はぁ〜今日はなんでこんなに嫌な事ばかり…嫌な事なんて早く通り過ぎればいいのにな…」


(それでは小娘よ、儂がその願いを聞き入れてやろうではないか)


「え?だ、だれ?」

辺りを見回しても誰もいない、気のせいだったのかと振り返ると


「この儂を知らん申すか小娘よ、なんとも愚かで哀れよのう」

優の目の前に現れたのは火が灯った車輪を背中に背負い炎を纏った怪物いや、妖怪火車である。


「小娘よ嫌な事ばかりで困っているのだろう?この火車さまがもう困り果てぬよう、貴様の命火をここで消してやろうではないか」

優は声も上げれず、ただひたすらに今の現状を自分に説明しようとしていた。


(私は今日寝坊をして先生に怒られてお昼を桜ちゃんと美味しく食べて帰ってお爺ちゃんに怒られるのかと頭を垂れてたらなんか全身火だるまのおじさんが出てきて私の命火を消すって言ってきてていうことはもしかして私の人生最大にして最後の危機にいま直面しているということでいいのかな?いいんだよね!?)


もはや句読点すら出すことを忘れ結論に至った優は、とにかくこの場から逃げなくては、急いで方向転換回れ右をしようと思いきや。


「いかんなぁ、この火車さまの地獄火から如何にして逃れようか、そんな考え無用の長物だというのに」

そうは問屋が卸さない、回れ右した優の目の前に火柱が上がり完全に八方ふさがり袋小路、そんな優を見ていた八咫烏は、はてさてどうしたものかと鳥頭を抱え悩んでいた。


「誰かと思えば火車だと!?ある程度の下級妖怪なら潰しが効くんですがねぇ〜こりゃあ厄介なモンに眼をつけられましたね〜」


妖怪の力とは、妖怪それぞれが持つ妖力によって決まる。

すなわち、妖怪の上下関係は基本妖力の大小で、階級が振り分けられる。


八咫烏は、中級妖怪の正に真ん中程に位置する。火車は同じく中級妖怪なのだが、八咫烏が真ん中に対し上の方に位置するかなり手強い妖怪である。

八咫烏がのこのこ出て行った所で勝敗は決まっているも同然、これにはほとほと困り果てる八咫烏、このままでは己が野望が潰えてしまう、そんな事を許すわけには参りません。

八咫烏は、焼き鳥にされるかと覚悟を決めて火車の前に立ちはだかった。


「おう、貴様は八咫烏ではないか、この儂に加勢に来たのか?」

「クァカカカカ!寝言は寝て言うもんですが、旦那は目を開け口を開けられて寝られんですかい?」


苦し紛れの煽り文句、八咫烏の足腰はガタガタ、火車の怒りはメラメラ燃えております。

「八咫烏…貴様如きが儂の邪魔をしようなど、へそで京の町をも燃やしつくせそうだわ!」

火車の逆鱗に触れてしまったのか、更に火力を増した火車。


(火車の野郎め、ここまで妖力を持ち合わせていたのか!)

ここまで妖力の差があるとは思いもしなかった八咫烏は、ここいらで辞世の句でも詠んでおこうか。

などと心を死装束に包もうとしていたところ、水を差したのは、この状況に置いてけぼりにされた優であった。


「すいません!あの人は何故身体を炎に包んでおるのでしょうか!あの人は何故車輪を背負っておられるのでしょうか!猫は白猫派でしょうか!貴方は何者でしょうか!何処から来たのですか!なんでいきなり私の前に現れたのですか!」

一息で長文を言い切った優に対し八咫烏は、


「あいつは火車という妖怪でしてね、炎で身体を包んでいるのが好きなんですよ。あと背負ってる車輪は、車輪マニアだから背負っているんですよ。あと、あっしは猫の存在が自体が嫌いです。申し遅れましたが、あっしは貴女を助けに参上した正義の妖怪八咫烏です。以後お見知りおきを。」

負けず劣らず一息で言い切った八咫烏に対し優は、


「ちょっと!猫の存在が嫌いってどういう事!あんな可愛いらしい猫ちゃんに対して、そんな扱いをする人が正義の味方なわけないじゃない!」

「猫なんて、肉は鍋に放り込んで皮は三味線にでもしとけばいいんですよ」

最早なんの話であったのか、原型を留めること放棄した所で。


「貴様ら!訳の分からぬ論争は止めろ!猫ごと燃やし尽くしてやろうか!」

火車の大将がお怒りになる気持ち、お察しいたします。


こうして現実に引き戻された2人は、改めて現状をどうするか、思考を巡らせる。

「ちょいとお嬢さん、この状況を一転させられる博打があるんですが、乗りますかい?」

「博打?」

この状況を変える策があると申した八咫烏だが、はてさてその妙案とは如何なものか、二人の運命どうなるのか。

それはまた、次の幕までお楽しみ。




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