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第6話 初めてのお仕事。

「そうそう、あんた、なかなか筋がいいわね。」

「…ありがとうございます。」


外から帰ってきたら、女中のアンナとフリフリのエプロンを付けたサミュエルちゃんが二人で台所でパンをこねていた。


「もっと腰を入れんのよ!ぎゅっと!」

「はい。」


意外なことに、サミュエルちゃんはアンナにはすぐになついた。私とはまだ目を合わせてもくれないというのに。

おばあさま、と暮らしていた、と言っていたから、年配の女性の方が親しみやすいんだろうか?私もいい加減に年上だが?8歳差ぐらいでは年上さ加減が足りないんだろうか?


週に一度、隣町から食材を届けてくれる私の幼馴染のニドにはいまだにビクビクしている。

「いや~べっぴんさんだなあ。」

毎週会っているのに、ニドは毎週同じことを言う。


サミュエルちゃんのサラサラ銀髪は、仕事の邪魔になりそうだったので、私が三つ編みにしている。毎朝のことだが…毎朝かなり緊張しているように見える。


いつ頃この子は私になついてくれるんだろうか?

恋バナ、とまではいかないが、せめてご挨拶以上の…世間話とか?


うちのニャー子は私になつかない。



*****


アンナさんとパンが焼きあがる間、お昼用のシチューを温める。ここにサラダで今日のお昼ご飯の予定。


ご飯はみんなで一緒に食べる。前の家では考えられないことだ。おばあさまが亡くなってから、僕はいつも広いダイニングで、一人でご飯を食べていた。


僕に…これから生きていくために、と、家事をみんな教え込んでくれた侍女のマーサでさえ、決して同席はしなかった。


…不思議だね?


子爵家とはそういうものなのか、この家が特別なのか…比較する情報を持っていないので僕にはわからないが、ともかく、アレット子爵家ではそうだった。


ご飯を食べているときに、当主とアンナさんはよくお話をする。

野菜の話とか

天気の話とか

領地の誰が、どうした、とか


美味しいね、とか


「今日のパンは美味しくできたわね!クルミ入りパンね。冬の間に頑張ってクルミを割っておいてよかったわ。」

「そうでしょ?美味しいなあ。サミュエルちゃんはなかなか筋が良いわ。」

「そうね。こんなに何でもできるとは思わなかったわ!すごいのね、サミュエルちゃん。」

「…ありがとうございます。」



毎朝、二人分の朝ご飯を作って、

屋敷内の掃除をして、

お昼ご飯を作って、

午後はお洗濯をして、干して

晩御飯を作って、食べて…

晩御飯の片づけは時間外労働になるからと、当主がしてくれる。

その間にお風呂に入って、先の領主の蔵書だという本を選んで読んで…就寝。


今日はアンナさんが来る日だったからにぎやかだった。

当主は、挨拶はしてくれるが、僕が話したくないときは話しかけてこないし、

用事がある時はメモを張っておいてくれる。ダイニングの入り口に、連絡ボードを取り付けてくれた。


先日は、つばの大きな麦わら帽子とメモが連絡ボードに括りつけられていた。


【サミュエルちゃん、いつもありがとう。

だんだん暑くなってきたから、庭の草むしりの時は帽子をかぶってね。これはサミュエルにプレゼントよ!】


時々…こんなふうに僕の欲しかったものがボードに括りつけてある。ほしい言葉とか?当主は何でわかるんだろう?不思議だ。







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