第15話 初めてのクリスマス。
「クリスマス、おめでとう!サミュエル」
そう言って当主がこげ茶色のセーターとマフラーを僕にプレゼントしてくれた。
僕からは、エリクに教えてもらって彫った、ウサギの置物。
外は朝から雪が降り積もっている。
暖炉は暖かく燃えている。
窓が曇って、何もかもぼやけて見える。
アンナさんに教えてもらって、鶏のハーブ詰を焼いた。そこに温野菜のサラダとバケットとチーズ。当主が用意してくれた赤ワイン。
お誕生日の時みたいに乾杯して、鶏肉を切り分ける。
アンナさんが作ってくれたブッシュドノエルもある。
来年は自分で焼いてみたい。
たくさん食べて、飲んで…今日は二人で台所でお片づけをする。
並ぶと当主は僕の肩先ぐらい。今日はクリスマスだからか、余所行きのワンピースを着て、前に僕が贈ったイヤリングを付けてくれていた。
こげ茶の髪に似合うだろうな、と思ったんだけど、オレンジ色がよく似合う。
クリっとした瞳もこげ茶色。今日頂いたセーターと同じ色だ…。なんだかうれしい。
当主の洗ったお皿を、僕が拭いてしまっていく。
そんなにまじまじと見たことがなかったけど、当主の胸は本当に大きいな。エリクはいつ見たのかしら?そんなことを考えながら、つい、じっと見てしまった。
「はい、サミュエルちゃん、これでお終いよ?」
最後のお皿を手渡される。綺麗に拭いて、食器棚にしまう。
「はい、じゃあ少しかがんで。」
「?」
「お休み、よい夢をね。」
僕のおでこに届かなかったからか、お休みのキスは今日は頬だった。
「おやすみなさい。」
僕からも当主の頬にお休みのキスをする。
驚いた顔をした当主が、にっこりと笑った。
僕はその夜、当主に頂いたセーターとマフラーを抱きしめて眠った。
とても素敵なクリスマスだった。




