第10話 初めてのお友達。
サミュエルちゃんからイヤリングを貰った。オレンジ色の小さなお花が付いている。
アンナはピン止めを貰った。スカーフがずれて嫌だと前に言ったことがあるらしかった。青い石がはめ込んである綺麗なデザイン。
どちらもダイニングの連絡ボードに張ってあった。
これからもよろしくお願いします、というメモ付きで。
私とアンナは顔を見合わせて、いやいや、男の人にプレゼントをもらうのなんか何年振り?と笑った。
何が転機になるかなんて、神様だってご存じないだろう。
サミュエルちゃんはお友達ができて、休みの日はたまに遊びに出かけるようになった。と、いってもアンナの家の孫の三兄弟、上から12.10.8歳のちびっ子たちだが。
「サミュエル!あそぼう!」
と、屋敷にわざわざ迎えに来てくれる。
なににしろ、お友達が出来たのは良いことだ。そう言われれば、12歳と17歳もそうかわらないか?
麦わら帽子をかぶって、子供たちに手を引かれて連れ去られていくサミュエルちゃんを見送る。段々と暑くなってきて、木々の落とす影が濃くなってきた。夏だなあ。
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川遊び、野イチゴ摘み…今日はみんなで摘んだ野イチゴのジャムの作り方をアンナさんに教わってきた。
ことことと、ジャムを煮る。
川に素足を入れたのも初めてだった。みんなはパンツ一枚になれと言っていたけど、さすがにそれは難しかったので、シャツとスラックスをまくって、靴も靴下も脱いで、そろりと川の水の中に入った。
考えていたより冷たい!足の裏で川の砂がもぞりと動く。
一番上のエリクが、見てろよ?と言って、少し色の濃くなっている淵にもぐっていった。おろおろして見ていると、大きな魚を捕まえて戻ってきた。すごいね!
赤い野イチゴ、って言うのも初めて見た。いきなりみんなで食べだしたので驚く。
お前も食って見ろ!と言われて、えい。と口に入れてみた。プチプチして甘酸っぱかった。家の人へのお土産にするんだと着ていたシャツを広げてみんなでとり始めたので、僕も麦藁帽子に摘んだ。たくさん採れた。
「この場所は俺たちの秘密の場所だから、誰にも言うなよ?」
とみんなに口止めされたので、こくこくっと頷く。
夏って、すごく楽しい。
ことこと煮ていた鍋から、甘いにおいがする。
野イチゴのジャム。当主も大好きだとアンナさんに聞いたから、今日はパンケーキにしようかな。




